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第一章 愛の重さ

5話 家出します

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俺は家に帰って楽しみにしていたプリンを食べようと冷蔵庫を見た。しかし、冷蔵庫にはプリンが見当たらない。

燈真だろ。絶対そうだ。昨日また新しい女を家に連れて来てたし。




「燈真!なんで俺のプリン食べたの!?」


「彼女が食べたいって言ったから。プリンも琳冬より彼女に食べて貰った方が嬉しいだろ」



ソファで本を読んでいた燈真は目線だけ俺に向け、鬱陶しそうに受け答えする。



「あれは数量限定だったの!朝から5時間待ってやっと買えたんだよ!?燈真の分も買ったんだから2つとも食べなくても良かったじゃん!!」


「彼女が一緒に食べたいって言ったから。そんなに怒るなよ、また5時間待って買えばいいじゃん」



呆れたように言い放つ燈真に、流石の俺もムカついた。



「……ッあの2つが最後だったの!なんで食べちゃうの!?俺だって…!!」


「煩いよ」


「は、?何それ…大体、燈真が女を家にあげたのが悪いんだろ!!……ッ!?」


ぱしんッと乾いた音が響くと共に、左頬に痛みが走る。

俺、もしかしてビンタされた…?



「彼女を家にあげて何が悪いの?そもそもここの家賃はオレが払ってる。オレが誰を家にあげようが勝手だろ。そんなに嫌なら出て行け」


「ッ……わかったよ、出てく」


「…は?ちょっと、琳冬?」



俺は燈真の言葉を無視して財布と携帯だけ持って外に出る。

思ったより外は寒く、上着を持ってくれば良かった。だが、家出してすぐ家に帰ることなど俺は到底できない。


意地でもどこか泊まれる所を探そう。




「あ、ねぇ…君。今、そこの家から出てきたけど、燈真くんの弟さん?」



家を出てすぐにとても綺麗な女の人に話しかけられた。



「えっと……?」


「急にごめんね。私、燈真くんと付き合ってるんだけど…君が燈真くんの家から出てきたから」


「……燈真の、彼女?」



女の人は笑顔で頷く。こうやって燈真の浮気相手の人と話す機会は少なくない。

女の人と話すと、大体は本気で燈真のことが好きで付き合ってる。俺は邪魔なんじゃないかとそう思ってしまう。


本当は、燈真とは別れた方がいいのは彼女じゃなくて、俺の方なんじゃないか。





「じゃあ、さようなら。燈真と…お幸せに」


「ふふ、ありがとう」




零れそうな涙を必死に留め、精一杯笑顔を作る。心臓が痛い。


俺は無我夢中で走る。できるだけ早く、できるだけ遠くの所へ。



ふと、足を止める。気がつけば全く知らない場所に立っていた。どこから来たのか、はたまたどこへ行けばいいのかわからない。



「……こわい、、」


燈真に会いたい。でも、俺に会う権利はない。これからどうしようか。



「オニーサン、今1人?俺らとイイコトしようよ」


「ッ!?や、はなして、、!」



2、3人の不良グループに絡まれ、腕を掴まれる。



「大丈夫大丈夫!痛いことはしないからさ?ほら、抵抗すんなよ」


「ひっ…!?やだ、やだ、、!」


無理矢理路地裏に連れ込まれ、乱暴に服を脱がされる。ベタベタと身体中を触られ、俺は恐怖に目を瞑ることしかできない。



「ひぐっ…やだ、やだ、、燈真、とぉま……」


「人の恋人に手出さないでくれるかな」


聞きなれた声が耳に入ってくる。俺を触っていた手はどこかへ行った。



「な、なんだよお前!チッ…行こうぜ」



数人の足音が遠のく中、俺は恐る恐る目を開ける。



「ぁ…燈真、、」


「琳冬、間に合って良かった…さっきはごめんね、頬っぺ痛くない?大丈夫?」


「んぅ、ぐすっ……」



腰を抱かれ、左頬を撫でられる。安心したことで俺の涙腺は緩み、涙が次から次へと流れてくる。




「よしよし、大丈夫だからね。帰ろっか」


「……うんッ、」
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