上司がお姫様の霊に憑かれたら

第二話 廃神社

撮影班は某県某所にある心霊スポット、とある廃神社へと向かった。

ここには、一人のお姫様にまつわる伝説が残されている。

その昔、高貴なお姫様が家臣の男と恋に落ち、それを知った父親は激怒。家臣の男を打ち首にしてしまった。嘆き悲しんだ姫は後を追って自害した。この神社はそんな二人が人目を忍んで逢瀬をしていた場所なのだという。

「しかし管理人がいなくなって、いつしか廃神社になってしまいました。それからというもの、ここで真夜中になると、着物を着たお姫様の幽霊が目撃されるようになったそうです」

神社の鳥居の前で、スタッフの説明から撮影がスタートした。

「なんというか…悲しい伝説ですね」

北田がそう言って隣の瀬名を見ると、彼は青白い顔をしてじっと奥を睨んでいた。

「どうしても行かなきゃダメか？」

不安そうに聞いてくるので北田は大丈夫っすよ！と明るく声をかけた。

「じゃあ、早速奥へと行ってみましょうか」

皆で鳥居の中へと足を踏み入れた。

荒れ果てた神社はお社やしろが半分崩れかけている。

「うわー、これはひどい状態ですね」

北田はお社をライトで照らしながら呟く。そういえば、瀬名は鳥居をくぐってからというもの一言もしゃべっていない。

「やけに口数が少ないですね。大丈夫ですか？」

ふと見ると、瀬名は両目から大粒の涙を零していた。

「ちょっ、えっ、瀬名さん！？」

北田は仰天して、慌てて彼に駆け寄った。

「俺、なんか、変だ…」

瀬名は北田の顔を見上げながら、ポロポロと涙を溢れさせている。

「ちょっと撮影ストップ！瀬名さんの様子がおかしい！」

北田は大声で怒鳴ると、瀬名の両肩を抱いた。

「しっかりしてくださいよ、どうしちゃったんですか！？」

スタッフたちが慌てて集まってくる。突然の異常事態に騒然としている。

「わからない、けど俺、お前の顔を見ていると、涙が止まらなくなるんだ…」

瀬名はそう言って気を失い、北田の腕の中に倒れこんだ。