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7] 怪我人を拾いました。
しおりを挟む魔獣にされてからどのくらいの日が過ぎたのかしら?
ここでの暮らしにもようやく慣れて来ました。
朝起きて、小川で水を浴びて、浄化の魔法で身柄を整えます。
寝床の周りに異常が無いかパトロールをしながら森の恵みで小腹を満たして、お昼と夕食は川に行き、雷撃で魚を獲って、火魔法で焼いて食べます。
毎日 毎日で少し飽きてきたけれど、時々カニやエビも獲れるので、それなりに満足しています。
相変わらずお肉は食べる事が出来ません…
やっぱり血が怖いし、獣にそのままかぶりつくなんて出来そうにありません。
『はぁ…お肉が食べたい…ミディアムレアに焼いたステーキにオレンジソースをたっぷりかけて食べたいわ…料理長のお料理が懐かしいです…』
はぁ………
夜は岩屋根に潜り込んで、丸くなって結界を張って眠ります。
どうすれば人間に戻れるのか…
どうすれば家に帰れるのか…
それはまだ解りません。
お父様やお母様は私が魔獣に襲われたと思っているでしょう。
ナディアはどうしているのかしら?
悲しむふりをして両親を騙しているのかと思うと怒りが湧いてきます。
でも、今の私にはどうする事も出来ません。
その日も私は森のパトロールをしていました。
何だか森がざわついているような気がします。
『何かあったのかしら?』
私はざわめいている方に向かい、いつもより遠くまでパトロールの範囲を広げました。
すると、風に乗って血の匂いがしてきました。
『魔獣が争っているのかしら?』
ソロソロと警戒しながら、血の匂いがする方に向かいます。すると………
『人間?!こんな森の奥に?!』
怪我をした脇腹を押さえて、たくさんの魔獣に向かって剣を振るう若い男性がいたのです。
このままでは、彼は死んでしまいます。
『雷撃!』
私はすぐに血に群がる魔獣に雷魔法を放ちました。
いつもの魚を捕る時より、強めの魔法を打ちました。
彼に群がっていた魔獣は全て身体を痺れさせてその場に次々と倒れていきました。
私はゆっくりと男に向き合い、じっと様子を見ます。
見た所、脇腹の怪我以外は小さな傷ばかりのようですが、もう随分血を流したのでしょう、顔色が真っ青を通り越して、まっ白になっています。
早く手当てしないと本当に死んでしまいます。
最後の気力を振り絞って私を睨みつけて来るこの人は、とても美しい顔をしていました。
明るい金色の長い髪を無造作に縛り、透き通るようなエメラルドの瞳が私を睨みつけています。
『あれ?何処かで会ってる?』
なんとなく見覚えがあります。
それよりも身体が心配です。
『安眠』
私は魔法で彼を眠らせました。
カラン……と剣を取り落とし、その場に崩折れた彼に近寄り、ゆっくりと呼吸を確かめ、治癒の魔法を彼にかけました。
脇腹の傷がふさがり、浅かった呼吸が落ち着きます。
小さな傷、すり傷なども全てなくなりました。
血の匂いが酷かったので、浄化の魔法を使って血の汚れをキレイにしました。
風魔法を使って、彼の身体を少し浮かせて、彼の身体の下に頭を突っ込んで、何とか彼を背中に乗せ、身体強化魔法を使って何とか自分の寝床に彼を運び込みました。
血を失って冷たくなった身体を温める為、彼の隣に彼を抱き抱えるように横たわり、丸く結界を張って、風魔法で結界の中を温めました。
『早く良くなりますように…』
少しでも早く彼が目覚める事を祈り、眠りにつきました。
浅い眠りにまどろんでいる時、不意に彼の事を思い出しました。
『あぁ…思い出したわ。彼はケンウッド皇国の皇太子に似ているんだわ…』
うつらうつらと そんな事を考えながら、久しぶりの人の体温と気配に、懐かしさと安らぎを感じながら、その日私は、次の日寝坊するくらいゆっくりと眠ったのです。
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