私のかわいい婚約者【完結】

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10 モルガン商会の報復 

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「旦那様!大変です!モルガン商会が今迄の借入金の全額返済を要求してきました!」

突然 執務室に飛び込んできた 執事の言葉に耳を疑う。

「何?どういう事だ?支払いは毎月決まった金額を 滞り無く支払っているはずだ!何故 急に全額返済などと言ってくるのだ?モルガン商会は 我が家との取り引きを停止するつもりなのか?!」

スカーリン侯爵は突然の 借入金全額返済の要求に理由が解らないとツバを飛ばす勢いで、憤っている。

「何故だ?すぐにモルガン商会を呼び出せ!どういう事か 問い詰めてやる!」

「かしこまりました」

執事が部屋を出ようとした所に 外から戻って来たらしい妻が、興奮した様子で執務室にやって来た。

「旦那様!どういう事ですか?!」

「アニカ、悪いが今、取込み中なのだ。話は後にしなさい。」

「後になんて出来ませんわ!今日!私がどんな目に会ったと思いますの?!」

「今は 君の話を聞く時間が無いんだ。急いで話を付けなければ、我が家はお終いだ!」

悲壮感を漂わせながら 侯爵が叫ぶ。だが、夫人も負けずに言い返す。

「私の話だって重要ですわ!今日、宝飾店やドレスショップから入店禁止を言い渡されましたのよ!今後一切 取り引きを断ると、そう言われて 店から追い出されましたのよ!こんな屈辱ありませんわ!」

思い出して、又、怒りが湧いてくるのか 唇がわなわなと振るえている。

「何?それはもしかしてモルガン商会系の店なのか?」

「えぇ、そうですわ。一体どういう事ですの?」

どういう事だ?借入金の返済に店の出入り禁止だなんて、急すぎる!
一体 何が起きているんだ!

「モルガン会長に会わなくては… すぐに出る。馬車の用意を!!」

会長を呼び出すつもりだったが、のんびり待っていられない。
私は急いで馬車を用意させ、モルガン会長に会いに行く事を決めた。

「アニカ、取り敢えずお前は屋敷で待っていなさい。私が会長と話をつけてくる。」

未だ怒りの収まらないアニカを宥め、私は商会に先触れを出し、急ぎ モルガン商会へ向かった。


✢✢✢


「これは、これはスカーリン侯爵様、わざわざお越しいただき申し訳ありません。どうぞ、お座り下さい。」

応接室に通され、席を進められて、モルガン会長と向かい合うように座る。
ニコニコしているが、目が全く笑っていない。
一体 何を考えている?

「モルガン会長、この手紙は一体どういう事だ?」

私は机の上に 今日届いた手紙を叩きつけた。

「しかも、妻が 今日、モルガン系列の店から追い出されたと言うではないか!一体何のつもりだ?しっかりと説明を聞くまでは帰らんぞ!事と次第によっては貴様の店がどうなるか解っているだろうな!!」

私はありったけの怒気を込めてモルガン会長を睨みつける。
会長の表情が感情を失ったようにスッと真顔になる。

「お心当たりは無いと仰るのですか?」

「当たり前だ!このような一方的な話、私は断じて受け入れる事は無い!つまらん理由なら私にも考えが有る!それ相応の対処をさせてもらう!覚悟するがいい!」

「理由はペトラお嬢様にお尋ね下さい。」

「はっ? ペトラ?」

どうして、ここで ペトラの名前が出てくるのだ?
あの娘が一体何をしたのだ?

「私の方からは 何もお答えする気はありません。お引き取りを。ヘンリー お客様がお帰りだ!」

外から屈強な男が2人、ヘンリーに促され、私の両脇から腕を掴んだ。

「は…離せ!無礼者!」

私はそのまま、2人の男に両脇を抱えられるようにして、店の外につまみ出された。

「こんな屈辱 許さん!許さんぞ!モルガン!」

私は 馬車に乗り込み屋敷へ急いだ。
ペトラがどうしたと言うのだ?
全く理由が解らない。

屋敷に戻ると、門の前に騎士が数人いて、門番と揉めていた。
あの制服は王国騎士団の物では無いのか?

「何の騒ぎだ?!」

馬車の中から 騎士に声をかける。
私を見た門番が慌てて私の元へやって来る。

「旦那様!それが、こちらの騎士の方々がペトラお嬢様に会いたいと…」

「ペトラに?」

ここでも ペトラ!
一体 何なのだ?

「騎士団がペトラに何の用だ?」

すると、馬車の扉の前に一步踏み出して来たのは 私でも顔を知っている 王国騎士団 第二騎士団のワイマール団長だった。

「ワイマール団長、あなたがわざわざお越しになるとは、ペトラに一体何の用なのだ?」

ワイマール団長はうやうやしく頭を垂れ、信じがたい事を口にした。

「スカーリン侯爵様、本日はカトリーヌ モルガン伯爵令嬢に対する誘拐、暴行、殺人未遂の疑いで、ペトラ スカーリン侯爵令嬢にお話を覗いたく参りました。令嬢は御在宅でしょうか?」

「はっ?誘拐?暴行?殺人未遂?何の冗談だ?」

「冗談ではありません。昨日、王都エイブル地区にあるスカーリン侯爵別邸にて、カトリーヌ モルガン伯爵令嬢、及び 侍女一名を誘拐した罪で 男爵令嬢1人とスカーリン家の私兵10名 ゴロツキ13名を拘束しました。そして、別邸地下牢にて、捉えられていた モルガン伯爵令嬢、及び 侍女ロティ マーベル嬢を救出いたしました。犯人はペトラ スカーリン侯爵令嬢に依頼されたと供述しております。お話を覗いたく、ペトラ嬢にご同行願います。侯爵様も御一緒で構いません。」

私が呆然としている間に ワイマール団長の目配せで屋敷内に騎士が数人入って行った。

私は 頭の中が真っ白になって もう何も考えられない。
ペトラが何をしたって?
誘拐?
暴行?
殺人?
一体何が起きているんだ?
別邸?
エイブルにある今は使っていないあそこか?
確か、老朽化したので近々取り壊す予定になっていたはずだが…

屋敷の二階からけたたましい声がして、ペトラが騎士2人に抱えられて連れ出されてきた。
私とペトラはそのまま 騎士団の馬車に乗せられ、王国騎士団の取調室に連行されたのだった。









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