13 / 18
「父として」(S国王 アレクセイ)
しおりを挟む
アルベルトは小さな頃から聞き分けが良く、自分の立場を良く理解している子供だった。頭も良く、腕も それなりに立った。あの子が10歳の時、王太子として立太子した。そして、同時に後ろ盾として筆頭公爵家の令嬢 ジュリアナ-フェルン(10歳)を婚約者とした。甘やかされ、多少我儘な所もあるようだが、それはこれからの教育でなんとでもなるだろう。学園卒業後 婚姻すると定め、将来は安泰と誰もが皆 そう考えていた。ところが 13歳になって、二人が 学園に入学し、より多くの子息、令嬢と交流するようになると、ジュリアナがアルベルトに近づこうとする令嬢達を 悪辣な手段で、排除するようになったのだ。ジュリアナの変わりように(今迄は猫をかぶっていたのか?)アルベルトや、王妃、公爵家からも態度を改めるように何度も注意した。だが 彼女はますます頑なになり、誰の手にも負えなくなっていった。そうなると、当然、アルベルトとの仲も悪くなる一方で、婚約の白紙撤回も視野に入れ始めた頃には、一年が終わっていた。ジュリアナの性格を矯正する事も出来ず、次の年、アルベルトは 学園に入学してきた一つ下の男爵家の娘を気にかけるようになった。影からの報告で心配していた事が 現実になってゆく。アルベルトに言い寄る男爵令嬢、アリア-ヒルドは偶然を装い何度もアルベルトの前に現れた。アルベルトは、その 作られた偶然を 運命と勘違いし、あっけないほど簡単に恋に落ちた。その頃、ジュリアナの嫉妬はますますひどくなり、物理的に攻撃するようになっていた。そして あの 卒業パーティの日、とうとうジュリアナは、アリア-ヒルドに毒を盛るという 愚かな真似をしたのである。幸い未遂に終わったものの、処罰は免れない。彼女は捕らえられ、北の果ての修道院へ送られる事になった。当然 婚約は破棄され、あろうことか アルベルトはその会場で、アリアを新たな婚約者にすると宣言してしまったのだ。その時、会場から引きずられるように連れ出されるジュリアナは、会場全体に響く大声で
「その女は、他の男とも関係を持っているとんだあばずれよ!!!殿下の他に何人もの殿方と関係しているのよ!!!」と、呪いの言葉を吐き散らして、出ていった。罪人の言う事など信じないと、アルベルトはアリアを庇ったが、後の 王太子妃候補がする身体検査で本当に処女ではなかった事、それどころか、現在 妊娠中である事が発覚し、王族を騙そうとした罪で、腹の子 共々処刑された。男爵家は貴族籍を剥奪。取り潰され、夫妻は強制労働送りとなった。アリアの相手は付き合っている男が多すぎて、結局誰の子かは特定出来なかった。だが、アリアと体の関係を持っていたとされる者は皆それなりの処罰を与えられ、王都から消えていった。アルベルトの落ち込み様はそれは酷く、見ているのも辛かった。なんとか立ち直って欲しいと願い、見守る事しか出来なかった。あれから10年、私は小国メルディスの第3王女ユリアーナ王女に婚約を打診した。年は15歳、膨大な魔力持ちで、以前メルディスを訪れた時 2~3言葉を交わした事があったが、小さいのに、聡明で、しっかりした少女だった。メルディスでは 魔力を持つ者が一人もおらず、王女の属性が闇属性だった為、周りから 腫れ物を扱うような対応をされ、「暗黒王女」「呪いの王女」などと呼ばれ、良くない噂も多々あった。だが王族である家族との仲は良好で、婚約を打診した時も 随分 心配していたようだ。王女は、自分の立場を良く理解し、自ら婚約を了承したと聞いている。これは賭けだ。アルベルトは、王女を受け入れる事が出来るだろうか?すっかり女性不信になってしまったあの子を救う事が出来るだろうか?これからも私は見守る事しか出来ないのだろうか?そう思っていたが、先日、西の森の討伐から戻ってから皆の様子が変わってきた。王宮の雰囲気が何だか 浮かれているような気がする。何よりも アルベルトの視線が柔らかくなった。王女を気遣い、なんと!同衾までしたと報告があった。俄には信じ難いが、アルベルトが少しずつでも 王女を受け入れているのなら これ程ありがたい事はない。どうか、あの子がこれ以上苦しむ事が無いように…私は神に祈る事しか出来ない。アルベルトが幸せになれるよう、これからも私は、あの子の為に力を尽くそう。それが、我が国の為にもなると信じて…
「その女は、他の男とも関係を持っているとんだあばずれよ!!!殿下の他に何人もの殿方と関係しているのよ!!!」と、呪いの言葉を吐き散らして、出ていった。罪人の言う事など信じないと、アルベルトはアリアを庇ったが、後の 王太子妃候補がする身体検査で本当に処女ではなかった事、それどころか、現在 妊娠中である事が発覚し、王族を騙そうとした罪で、腹の子 共々処刑された。男爵家は貴族籍を剥奪。取り潰され、夫妻は強制労働送りとなった。アリアの相手は付き合っている男が多すぎて、結局誰の子かは特定出来なかった。だが、アリアと体の関係を持っていたとされる者は皆それなりの処罰を与えられ、王都から消えていった。アルベルトの落ち込み様はそれは酷く、見ているのも辛かった。なんとか立ち直って欲しいと願い、見守る事しか出来なかった。あれから10年、私は小国メルディスの第3王女ユリアーナ王女に婚約を打診した。年は15歳、膨大な魔力持ちで、以前メルディスを訪れた時 2~3言葉を交わした事があったが、小さいのに、聡明で、しっかりした少女だった。メルディスでは 魔力を持つ者が一人もおらず、王女の属性が闇属性だった為、周りから 腫れ物を扱うような対応をされ、「暗黒王女」「呪いの王女」などと呼ばれ、良くない噂も多々あった。だが王族である家族との仲は良好で、婚約を打診した時も 随分 心配していたようだ。王女は、自分の立場を良く理解し、自ら婚約を了承したと聞いている。これは賭けだ。アルベルトは、王女を受け入れる事が出来るだろうか?すっかり女性不信になってしまったあの子を救う事が出来るだろうか?これからも私は見守る事しか出来ないのだろうか?そう思っていたが、先日、西の森の討伐から戻ってから皆の様子が変わってきた。王宮の雰囲気が何だか 浮かれているような気がする。何よりも アルベルトの視線が柔らかくなった。王女を気遣い、なんと!同衾までしたと報告があった。俄には信じ難いが、アルベルトが少しずつでも 王女を受け入れているのなら これ程ありがたい事はない。どうか、あの子がこれ以上苦しむ事が無いように…私は神に祈る事しか出来ない。アルベルトが幸せになれるよう、これからも私は、あの子の為に力を尽くそう。それが、我が国の為にもなると信じて…
12
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
【完結】いつの間にか全方向から包囲されて、どうしても結婚にまで巻き込まれた気の毒な令嬢の物語
buchi
恋愛
可憐と言うより威圧的な顔の美人フロレンスは伯爵令嬢。学園に入学し婚活に邁進するべきところを本に埋もれて、面倒くさいからと着飾りもせずひたすら地味にモブに徹していたのに、超美形貴公子に見染められ、常軌を逸する手腕と、嘘とホントが交雑する謎の罠にハメられる。溺愛なのか独占欲なのか、彼の城に監禁されて愛を迫られるけど、このままでいいの?王座をめぐる争いも同時展開中。R15は保険どまり。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】銀の龍瑠璃色の姫君を愛でる―31歳童貞社畜の俺が異世界転生して姫になり、王になった育ての息子に溺愛される??
remo
恋愛
31歳童貞社畜の俺が異世界転生して姫になり、王になった育ての息子に溺愛される??
前世の記憶を残しながら、セレバンティウス公・第一皇女ティアラとして異世界で転生した深町輝は、妹よりまつ毛が長いという理由で婚約破棄を言い渡され、更に妹ソフィア姫を冒とくした罪でエイトの森に捨てられる。そこは人を食らうという銀の龍(シルバードラゴン)が生息する死の森であり、数々の魔物が住むという。銀龍に連れ去られたティアラは辺境の地を治める獣人王ローズベルト・ウィリアム・ディ・アンドレ・ジョシュアの花嫁として迎えられる。
【完結】ありがとうございました‼︎ 4/25 御礼番外編追加しました。
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる