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「建国祭」(Sアルベルト)
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執務室で私は 建国祭の式典と夜会の参加者リストに目を通していた。外国からの客人も 多数参加する為、警備や、護衛、式次第、接待など仕事は多岐に渡る。今、私の目の前には、ユリアーナの祖国メルディスからの使者のリストがある。メルディスからは、ユリアーナの兄であるシリウス王太子、外交官サルトス-ウェールス侯爵、そして外交官補佐ロイド-ウェールス侯爵子息。
「ロイド兄様。」あの日、ユリアーナがうなされながら 呟いた名前…一体この男はユリアーナとどんな関係だったのか…私の思考が停止しているのを見ていたロイが声を掛けてくる。
「殿下、どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない。」
「メルディスの参加者リストですか?妃殿下も久しぶりにお兄様に会えて嬉しいでしょうね。ご家族との仲は大変良好だったと伺っておりますから、妃殿下も楽しみにしていらっしゃるでしょう。」
「あぁ…そうだな…」
「殿下?何だか歯切れが悪いですね。何か気になる事でもありましたか?」
「いや、何でも無い。それより準備の方はどうだ?」
「そうですね、お客様もほぼ全て揃われましたし、お茶会などでご婦人方も早々に交流を図っておられるようですし、私達の方の準備はもう ほとんど出来ております。明日にはメルディスの使者も到着すると連絡がありました。」
「わかった。メルディスからの使者が到着したら一番にユリアーナに知らせてやってくれ。」
「かしこまりました。」建国祭まであと一週間 無事に終われば良いが…
いよいよ建国祭当日、今日は朝からとても忙しい。取り敢えず正午から始まる式典の準備に周りも慌ただしい。逆に王太子である私は、後はもう皆に着飾られて王族として恥ずかしくないように どっしりと構えていれば良いだけである。もう一度、来客者リストをチェックして顔と名を頭に叩き込んでゆく、客人に粗相が無いようその背景や、出てきそうな話題なども頭に入れてゆく。
王宮バルコニーの前庭は、大きな式典の度 民にも開放されている。今日は朝から私達王族を一目見ようと民が集まっている為、とても騒々しい。不審な者が入り込まないよう警備も厳重になる。そろそろユリアーナの準備も整った頃だろうか。気になって 先触れを出し、ユリアーナの部屋に向う。
「ユリアーナ 準備はいいかい?」
「アルベルト様!」入室した途端、彼女が私に笑顔で近づいて来る。今日の式典の為に送ったドレスは、私の瞳の色と同じエメラルド色のドレス。彼女の金色の髪が映えてとても美しい。うやうやしく彼女の手を取り、その手の甲にそっと口づけた。
「とても綺麗だ。」見る見るうちに、彼女の顔が赤くなる。
「ありがとうございます。アルベルト様もとてもステキです。」可愛い。もうこのまま部屋に閉じ込めて誰にも見せたくない。邪な想いを頭から追い出して彼女を引き寄せその細い腰を抱いて式典会場にエスコートして行く。
「義兄上にはもう会ったかい?」
「はい、お変わり無くて安心しました。国の両親やお姉様方も元気でいるようです。たくさんお土産をいただきました。」嬉しそうに家族の事を話す彼女が可愛い!式典会場にはすでに皆が揃っていて後は王と王妃を迎えるだけになっていた。従者の声が響き渡り、王と王妃が揃って会場内に入って来る。王座に二人並んで集まった皆を労い挨拶が始まった。国の繁栄と未来を祝い、貴族の昇爵や、平民の叙爵、次々と行事がこなされてゆく。2時間程の式典が終わると、王族は揃ってバルコニーに向かいその姿を民に見せる。民に笑顔で手を振り、民の祝福を受ける。その後は夜会の準備、軽く軽食を取り、湯浴みをして、体中磨かれ、夜会の衣装を身に付け準備する。夜会に向かう為、ユリアーナの部屋に向う。夜会用に送ったドレスは私の髪の色である黄金のシルクをふんだんに使った物で、アクセサリーは私の瞳と同じエメラルド。全身 私の色を纏うユリアーナを思わず抱き締めようとして、侍女に止められてしまった。仕方なく ユリアーナの手を取り。
「とても 綺麗だ。」と囁いて、ユリアーナと二人会場へ向かった。会場に入ると、ユリアーナの兄と、外交官サルトス-ウェールス、そして その息子ロイド-ウェールスの挨拶を受けた。義兄上のシリウスとは年も近く、何度か会った事がある。ユリアーナと違い全く魔力を感じないが、頭が良く、そつのない人物だったと記憶している。そしてその後ろにロイド-ウェールスが控えていた。彼はユリアーナの1つ上で16歳、まだ学園に通っているらしいが、外国に興味があり、早くから父侯爵と外交の仕事をしているらしい。彼を見たとたん私の腕をつかんでいたユリアーナの手がビクリと震えた。やはり 二人の間には何かあるようだ。私は慎重にユリアーナの様子を伺いながら、ロイド-ウェールスの挨拶を受ける。彼の視線もチラチラとユリアーナの方を伺っている。何だか胸の辺りがムカムカして気分が悪い。
「お久しぶりです、王女殿下。」ロイドの言葉にユリアーナが怯えている?ユリアーナの手に力が込もる。
「お久しぶりです、ロイド様。お元気そうで何よりです。」まるで、棒読みのような挨拶をユリアーナが言うと、ロイド-ウェールスがおもむろに頭を下げた。
「王女殿下、今日私が無理にこちらに参加したのは 王女殿下に謝罪する為です。幼かったとはいえ、王女殿下には大変失礼な事を申し上げてしまいました。謝らなければと思いつつ、私が不甲斐ないせいで今日までかかってしまいました。本当に申し訳ありません。」そう言って深く頭を下げた。義兄上のシリウスがロイドの言葉を補足する。
「ユリアーナ、彼はずっとあの時の事を気にして、ずっと謝りたいと言っていたんだ。その機会が来ないうちに君は国を出てしまったから、今日を逃せば 彼はもう君に会うことも声を掛けることも出来ないだろう。ワタシが連れて来たんだ。彼の話しを聞いて上げてくれないかい?」
「お兄様…」
「ユリアーナ、ここでは人目もある、王宮サロンに行こう。もちろん私も側にいるよ。それでも構いませんか?」シリウスに同席する事を了承させ四人で サロンに向かう。
ロイド-ウェールスの語る昔の事は聞いているだけで気分が悪くなるようなものだった。確かに魔獣に襲われ怖かっただろう。たった10歳かそこらの子供にとっては それこそトラウマになる程の恐怖だったろう。だが、助けてくれた小さな女の子に向って「バケモノ」はないだろう。その時ユリアーナはどれ程傷ついただろう。そしてその為に、「暗黒王女」「呪いの王女」と恐れられ、9歳から、私の元にやって来るまでの6年間、ユリアーナはどれ程の悪意にさらされ続けて来たのか…ユリアーナが自分の力を隠したくなる気持ちもわかる。はっきり言って、申し訳ないの一言で許したくない。ロイド-ウェールスには殺意を感じる程腹立たしい。だが、ユリアーナは首を横に振り、「もういい」と、言った。
謝罪を受け取りますと、もう気にするなと。
「本当にそれでいいのかい?」私は思わずユリアーナに聞いてしまった。そうするとユリアーナは 私に大切にされて 今はとても幸せだからと、そう言って、私と繋いでいた手をギュッと力強く握った。
シリウスとロイドが退出して二人きりになったサロンで私は本当にあれで良かったのかもう一度ユリアーナに尋ねた。すると、ユリアーナは穏やかな笑みを私に向け、
「はい、本当にもういいのです。確かに子供の頃はあの事件をきっかけに私の闇魔法が忌み嫌われ 私は腫れ物を触るかのような 扱いを受けるようになってしまいましたが、両親や兄姉達がそれ以上にずっと私を愛して下さいましたから…そしてこの国に来て、皆に大切にされて、アルベルト様にも こうして 心配していただいて、優しくされて、私、今 本当に幸せですから、だからもう 昔の事は良いのです。もう 忘れました。」
「君が良いなら、もう私は何も言わないよ。」おもむろに立ち上がりユリアーナに手を差し出す。
「それでは、夜会に戻ろうか?そして二人で ダンスを踊ろう。幸せな私達を義兄上や ロイド-ウェールスに見せつけてやろうじゃないか。」そう言って私は、イタズラっぽくウィンクを1つした。夜会場では王と王妃のファーストダンスも終わり、たくさんの紳士、淑女達がヒラヒラとドレスの裾をひるがえし、ダンスを楽しんでいた。私達もその中に滑り込み、ピッタリとくっついてダンスを踊る。楽しそうに私を見上げて、私の腕の中でクルクルと回るユリアーナはとても愛らしく、私達はお互いが疲れてクタクタになるまで何曲も踊った。その日 夜会場にいた者達は10年前、やらかしてしまった瑕庇のある王子と、突然やって来た評判の悪い姫の結婚に色々思う事もあったようだが、仲睦まじい様子の私達を見て 暖かい視線を向けてくれているのを感じた。今度こそ 私は幸せになれる。ユリアーナを私の妻にしてくれた父母には感謝しかない。
夜会の夜、いよいよ最後のイベントの為 私達 王族は、王宮の屋上に登ってきた。ここで 魔法を使い、皆で空に絵を描いてゆく。まずは男性陣がファイヤードラゴンや、ファイヤーバードなどを夜空に描いてゆく。そしてそれに花を添えるように女性陣が光の花を夜空に咲かせてゆく。皆 夜空を見上げ、感嘆の声を上げている。ユリアーナは皆の魔力の補助をして、私達の魔力が、尽きないように魔石を提供してくれる。美しく光輝く夜空を皆が嬉しそうに、楽しそうに、見上げている。夢中になって 夜空を見上げるユリアーナに声をかける。
「ユリアーナ、どう?体調は、無理してない?」
「はい、大丈夫です。」そう言いながら もう一度 夜空を見上げ、
「綺麗ですね。」一言 ユリアーナが呟く。
「アルベルト様、私、この国に来れて良かったです。本当に。」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。」ユリアーナを抱き寄せ 頭の上にキスを落とす。
「ユリアーナ、君を大切にするよ。これから 一生。こんな私だけれど ずっと側にいて私を支えて欲しい。」ユリアーナの瞳を見つめて告白する。
「アルベルト様、私 今迄ずっと一人でした。どんなに家族に大切にされても私は一人でした。一生 呪われた王女として 一人で生きていくつもりでした。でも、あなたに出会って、大切にされて、二人で寄り添って生きて行きたいと思いました。私も アルベルト様を大切にします。一生あなたのそばで、あなたと共に、この国で生きて行きたいです。」そうして、二人強くお互いの手を繋いで、もう一度 夜空を見上げた。空には、大輪の花が最後のフィナーレを飾るように大きく花開いていた。
「ロイド兄様。」あの日、ユリアーナがうなされながら 呟いた名前…一体この男はユリアーナとどんな関係だったのか…私の思考が停止しているのを見ていたロイが声を掛けてくる。
「殿下、どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない。」
「メルディスの参加者リストですか?妃殿下も久しぶりにお兄様に会えて嬉しいでしょうね。ご家族との仲は大変良好だったと伺っておりますから、妃殿下も楽しみにしていらっしゃるでしょう。」
「あぁ…そうだな…」
「殿下?何だか歯切れが悪いですね。何か気になる事でもありましたか?」
「いや、何でも無い。それより準備の方はどうだ?」
「そうですね、お客様もほぼ全て揃われましたし、お茶会などでご婦人方も早々に交流を図っておられるようですし、私達の方の準備はもう ほとんど出来ております。明日にはメルディスの使者も到着すると連絡がありました。」
「わかった。メルディスからの使者が到着したら一番にユリアーナに知らせてやってくれ。」
「かしこまりました。」建国祭まであと一週間 無事に終われば良いが…
いよいよ建国祭当日、今日は朝からとても忙しい。取り敢えず正午から始まる式典の準備に周りも慌ただしい。逆に王太子である私は、後はもう皆に着飾られて王族として恥ずかしくないように どっしりと構えていれば良いだけである。もう一度、来客者リストをチェックして顔と名を頭に叩き込んでゆく、客人に粗相が無いようその背景や、出てきそうな話題なども頭に入れてゆく。
王宮バルコニーの前庭は、大きな式典の度 民にも開放されている。今日は朝から私達王族を一目見ようと民が集まっている為、とても騒々しい。不審な者が入り込まないよう警備も厳重になる。そろそろユリアーナの準備も整った頃だろうか。気になって 先触れを出し、ユリアーナの部屋に向う。
「ユリアーナ 準備はいいかい?」
「アルベルト様!」入室した途端、彼女が私に笑顔で近づいて来る。今日の式典の為に送ったドレスは、私の瞳の色と同じエメラルド色のドレス。彼女の金色の髪が映えてとても美しい。うやうやしく彼女の手を取り、その手の甲にそっと口づけた。
「とても綺麗だ。」見る見るうちに、彼女の顔が赤くなる。
「ありがとうございます。アルベルト様もとてもステキです。」可愛い。もうこのまま部屋に閉じ込めて誰にも見せたくない。邪な想いを頭から追い出して彼女を引き寄せその細い腰を抱いて式典会場にエスコートして行く。
「義兄上にはもう会ったかい?」
「はい、お変わり無くて安心しました。国の両親やお姉様方も元気でいるようです。たくさんお土産をいただきました。」嬉しそうに家族の事を話す彼女が可愛い!式典会場にはすでに皆が揃っていて後は王と王妃を迎えるだけになっていた。従者の声が響き渡り、王と王妃が揃って会場内に入って来る。王座に二人並んで集まった皆を労い挨拶が始まった。国の繁栄と未来を祝い、貴族の昇爵や、平民の叙爵、次々と行事がこなされてゆく。2時間程の式典が終わると、王族は揃ってバルコニーに向かいその姿を民に見せる。民に笑顔で手を振り、民の祝福を受ける。その後は夜会の準備、軽く軽食を取り、湯浴みをして、体中磨かれ、夜会の衣装を身に付け準備する。夜会に向かう為、ユリアーナの部屋に向う。夜会用に送ったドレスは私の髪の色である黄金のシルクをふんだんに使った物で、アクセサリーは私の瞳と同じエメラルド。全身 私の色を纏うユリアーナを思わず抱き締めようとして、侍女に止められてしまった。仕方なく ユリアーナの手を取り。
「とても 綺麗だ。」と囁いて、ユリアーナと二人会場へ向かった。会場に入ると、ユリアーナの兄と、外交官サルトス-ウェールス、そして その息子ロイド-ウェールスの挨拶を受けた。義兄上のシリウスとは年も近く、何度か会った事がある。ユリアーナと違い全く魔力を感じないが、頭が良く、そつのない人物だったと記憶している。そしてその後ろにロイド-ウェールスが控えていた。彼はユリアーナの1つ上で16歳、まだ学園に通っているらしいが、外国に興味があり、早くから父侯爵と外交の仕事をしているらしい。彼を見たとたん私の腕をつかんでいたユリアーナの手がビクリと震えた。やはり 二人の間には何かあるようだ。私は慎重にユリアーナの様子を伺いながら、ロイド-ウェールスの挨拶を受ける。彼の視線もチラチラとユリアーナの方を伺っている。何だか胸の辺りがムカムカして気分が悪い。
「お久しぶりです、王女殿下。」ロイドの言葉にユリアーナが怯えている?ユリアーナの手に力が込もる。
「お久しぶりです、ロイド様。お元気そうで何よりです。」まるで、棒読みのような挨拶をユリアーナが言うと、ロイド-ウェールスがおもむろに頭を下げた。
「王女殿下、今日私が無理にこちらに参加したのは 王女殿下に謝罪する為です。幼かったとはいえ、王女殿下には大変失礼な事を申し上げてしまいました。謝らなければと思いつつ、私が不甲斐ないせいで今日までかかってしまいました。本当に申し訳ありません。」そう言って深く頭を下げた。義兄上のシリウスがロイドの言葉を補足する。
「ユリアーナ、彼はずっとあの時の事を気にして、ずっと謝りたいと言っていたんだ。その機会が来ないうちに君は国を出てしまったから、今日を逃せば 彼はもう君に会うことも声を掛けることも出来ないだろう。ワタシが連れて来たんだ。彼の話しを聞いて上げてくれないかい?」
「お兄様…」
「ユリアーナ、ここでは人目もある、王宮サロンに行こう。もちろん私も側にいるよ。それでも構いませんか?」シリウスに同席する事を了承させ四人で サロンに向かう。
ロイド-ウェールスの語る昔の事は聞いているだけで気分が悪くなるようなものだった。確かに魔獣に襲われ怖かっただろう。たった10歳かそこらの子供にとっては それこそトラウマになる程の恐怖だったろう。だが、助けてくれた小さな女の子に向って「バケモノ」はないだろう。その時ユリアーナはどれ程傷ついただろう。そしてその為に、「暗黒王女」「呪いの王女」と恐れられ、9歳から、私の元にやって来るまでの6年間、ユリアーナはどれ程の悪意にさらされ続けて来たのか…ユリアーナが自分の力を隠したくなる気持ちもわかる。はっきり言って、申し訳ないの一言で許したくない。ロイド-ウェールスには殺意を感じる程腹立たしい。だが、ユリアーナは首を横に振り、「もういい」と、言った。
謝罪を受け取りますと、もう気にするなと。
「本当にそれでいいのかい?」私は思わずユリアーナに聞いてしまった。そうするとユリアーナは 私に大切にされて 今はとても幸せだからと、そう言って、私と繋いでいた手をギュッと力強く握った。
シリウスとロイドが退出して二人きりになったサロンで私は本当にあれで良かったのかもう一度ユリアーナに尋ねた。すると、ユリアーナは穏やかな笑みを私に向け、
「はい、本当にもういいのです。確かに子供の頃はあの事件をきっかけに私の闇魔法が忌み嫌われ 私は腫れ物を触るかのような 扱いを受けるようになってしまいましたが、両親や兄姉達がそれ以上にずっと私を愛して下さいましたから…そしてこの国に来て、皆に大切にされて、アルベルト様にも こうして 心配していただいて、優しくされて、私、今 本当に幸せですから、だからもう 昔の事は良いのです。もう 忘れました。」
「君が良いなら、もう私は何も言わないよ。」おもむろに立ち上がりユリアーナに手を差し出す。
「それでは、夜会に戻ろうか?そして二人で ダンスを踊ろう。幸せな私達を義兄上や ロイド-ウェールスに見せつけてやろうじゃないか。」そう言って私は、イタズラっぽくウィンクを1つした。夜会場では王と王妃のファーストダンスも終わり、たくさんの紳士、淑女達がヒラヒラとドレスの裾をひるがえし、ダンスを楽しんでいた。私達もその中に滑り込み、ピッタリとくっついてダンスを踊る。楽しそうに私を見上げて、私の腕の中でクルクルと回るユリアーナはとても愛らしく、私達はお互いが疲れてクタクタになるまで何曲も踊った。その日 夜会場にいた者達は10年前、やらかしてしまった瑕庇のある王子と、突然やって来た評判の悪い姫の結婚に色々思う事もあったようだが、仲睦まじい様子の私達を見て 暖かい視線を向けてくれているのを感じた。今度こそ 私は幸せになれる。ユリアーナを私の妻にしてくれた父母には感謝しかない。
夜会の夜、いよいよ最後のイベントの為 私達 王族は、王宮の屋上に登ってきた。ここで 魔法を使い、皆で空に絵を描いてゆく。まずは男性陣がファイヤードラゴンや、ファイヤーバードなどを夜空に描いてゆく。そしてそれに花を添えるように女性陣が光の花を夜空に咲かせてゆく。皆 夜空を見上げ、感嘆の声を上げている。ユリアーナは皆の魔力の補助をして、私達の魔力が、尽きないように魔石を提供してくれる。美しく光輝く夜空を皆が嬉しそうに、楽しそうに、見上げている。夢中になって 夜空を見上げるユリアーナに声をかける。
「ユリアーナ、どう?体調は、無理してない?」
「はい、大丈夫です。」そう言いながら もう一度 夜空を見上げ、
「綺麗ですね。」一言 ユリアーナが呟く。
「アルベルト様、私、この国に来れて良かったです。本当に。」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。」ユリアーナを抱き寄せ 頭の上にキスを落とす。
「ユリアーナ、君を大切にするよ。これから 一生。こんな私だけれど ずっと側にいて私を支えて欲しい。」ユリアーナの瞳を見つめて告白する。
「アルベルト様、私 今迄ずっと一人でした。どんなに家族に大切にされても私は一人でした。一生 呪われた王女として 一人で生きていくつもりでした。でも、あなたに出会って、大切にされて、二人で寄り添って生きて行きたいと思いました。私も アルベルト様を大切にします。一生あなたのそばで、あなたと共に、この国で生きて行きたいです。」そうして、二人強くお互いの手を繋いで、もう一度 夜空を見上げた。空には、大輪の花が最後のフィナーレを飾るように大きく花開いていた。
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