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「女運の悪い王太子」(Sアルベルト)

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 とことん女運のないリンデールの王太子アルベルト-リンデール(26歳)それが私に対する世間の評判だった。幼い頃からの婚約者、ジュリアナ-フェルン公爵令嬢は、甘やかされて育った為我儘で癇癪持ち、そんな彼女が苦手だった。だが 王家と貴族院が決めた婚約を勝手に解消する事は出来ない。月に一度のお茶会で交流を諮るも、会うたび彼女への嫌悪感が大きくなるばかり、学園に入ってからは、私の周りに集まる令嬢達を排除しようと躍起になり 随分色々と悪辣な事もやっていたようだ。そんな彼女に私は益々不快感を募らせていた。  
 そんな時、あの娘と出会った。学園に入ってすぐ、裏庭に呼び出され 令嬢達に囲まれている彼女を見かけた。大勢で一人を囲むなんて淑女としても良くないことである。私は咄嗟に彼女 アリア-ヒルドを背に庇い守ってやった。そしてその日から私は彼女に落ちた。それはもう見事に落とされてしまった。光に当たるとキラキラと輝くピンクゴールドの髪はハーフアップに緩く纏められ 薄い水色の瞳にじっと見つめられると胸が高鳴り、彼女の願いを何でも叶えてやりたくなった。今思えば魅了の魔法を使っていたのかもしれない…元々父である男爵が平民のメイドに手を付けて産ませた娘で、魔力持ちだった為 娘として引き取り教育しているのだという。 兎に角私は彼女を振り向かせたくて、彼女の願いを何でも叶えた。ドレスに宝石 靴やバック 城下でのデート、彼女の言うことは何でも聞いた。彼女の事しか目に入らなくなっていた。そしてあの運命の日を迎える。バカな私は学園主催の卒業パーティーで婚約者であるジュリアナを断罪し婚約破棄を突き付け 更にアリアと婚約すると会場にいる全ての者に王太子として宣言したのだ。
婚約を破棄するにしてもなぜ穏便に手続きをしなかったのか?きっと魅了の魔力に酔っていい気になっていたのだろう。そしてあの日王太子妃候補が受ける検査で彼女の妊娠が発覚したのである。もちろん私の子ではない。私は目の前が真っ暗になった。「まさか!!嘘だ!!」彼女は私を愛していると 私だけだと言ってくれたのに…王太子でなければ私は彼女を殺して自分も死んでしまいたかった。もう何もかもが嫌だった。それからの私は ただただ抜け殻のように日々の仕事をこなし、倒れるまで体を動かし、毎夜死んだように眠った。余計なことは何も考えたく無かった。当然女性の事も避けていた。お茶会、夜会、小さなパーティーに至るまですべて参加を見送った。父である王も私に無理強いすることは無かった。そうして私は少しずつ、少しずつ元の自分を取り戻していった。
 あれから10年、まさかこんなに突然結婚することになるなんて…
 私は大丈夫なのだろうか?
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