上 下
2 / 18

「政略結婚」(S ユリアーナ)

しおりを挟む
  「結婚?!私がですか?」
あまりの話に声が裏返ってしまった。
執務室に呼び出され、来てみれば
王である父が結婚話を持って来たのです。
お相手は大国リンデールの王太子殿下、アルベルト-リンデール様26歳、確か学園に通っていらした10年前に長年の婚約者でいらした公爵令嬢との婚約を勝手に破棄し、平民上がりの男爵の娘を妃に迎えると宣言した あの曰くつきの王太子ですよね。聞いた話によると 元婚約者の公爵令嬢はその座を守る為学園において 次から次へと現れるライバルの御令嬢達に対してとんでもない悪女っぷりを発揮していらしたようで、王太子殿下との関係は決して良好なものではなかったようです。
 そんな時現れたのが 平民だった侍女との間に生まれた子供、殿下の想い人でした。魔力持ちだった為 正式に引き取られ、男爵令嬢として学園に編入してきた少女は その愛らしい容姿と物怖じしない性格であっと言う間に 王太子殿下の心を掴み、恋人の座を手に入れたのです。そして 学園の最大のイベントである卒業パーティーの場で殿下は 公爵令嬢に婚約破棄を突き付け断罪したそうです。罪状は殿下の最愛である男爵令嬢に対する殺人未遂、多くの令嬢に対する嫌がらせ、誹謗、中傷、数え上げれば切りが無いほどの罪を犯していたようです。ですが、公爵令嬢は最後まで罪を認める事は無かったそうです。婚約はそのまま破棄され 令嬢は北の果ての修道院に送られ 生涯幽閉となりました。そして 同じその場で男爵令嬢との婚約を宣言されたのです。ところがその後行われた王太子候補選定検査で妊娠が発覚!彼女は王太子殿下以外の男性との不儀が露見し 王族を謀った罪で お腹の子諸共処刑されました。父親が誰か調査されましたが、相手が複数いたためその特定が出来ませんでした。当時稀に見るスキャンダルで 王都を震撼させた王太子それが アルベルト-リンデールでした。兎に角女運が悪い事で有名な王太子殿下ですが、3度目の御相手が私?こんな陰気な闇属性で常に魔力過多のせいでフラフラしていて「呪われた王女」「暗黒王女」なんて呼ばれている私がですか?なんだかあまりの女性運の無さに同情してしまいます。「あの…お父様、この縁組断ると言うことは…」「それは難しいな、何と言っても向こうは大国、リンデールを敵に回したく無いと言うのが本当のところだ。もちろん嫌がるユーリを無理に嫁にやったりはしたくない。」そう言ってお父様は俯いてしまわれました。兄様や宰相も黙って私の返事を待っています。どうやら これはもう決定事項のようです。逃げられません。「わかりました。参ります。」執務室の空気がほっと和らいだような気がします。「ユーリ 確かにアルベルト殿下の評判はあまり良くなかった。でも あれ以降悪い噂は全く無い。元々彼はとても立派な方だったから、きっとユーリの事も理解してくれると思うよ。」「兄様…」
兄様は今年25歳、アルベルト殿下とは一つ違いで、何度か交流があったそうです。
「姫様、あちらはここと違って魔力を持つ者も多く 姫様の膨大な魔力もありがたく思えども 嫌われることはないと思います。ほぼ全ての貴族は魔力が有って当たり前という国ですから。」宰相が私の属性を気遣って声を掛けてくれる。小さな頃から良く面倒を見てくれて、私を恐れない貴重な人です。確かにリンデールでは魔力が有るのが当たり前だと聞きます。私のこの闇属性もあちらでなら 嫌われることも無いのかもしれませんね 少し希望が湧きました。
 そして、二ヶ月後 私は王太子妃としてリンデールに向かうことになりました。
そう 婚約期間はありませんでした。あちらに着いてすぐに 婚姻の調印を行うそうです。見たこともない方との結婚…大丈夫でしょうか? 私… どうかアルベルト殿下が恐ろしい方ではありませんように…そう願うしかなかった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

Rohdea
恋愛
伯爵令嬢のフルールは、最近婚約者との仲に悩んでいた。 そんなある日、この国の王女シルヴェーヌの誕生日パーティーが行われることに。 「リシャール! もう、我慢出来ませんわ! あなたとは本日限りで婚約破棄よ!」 突然、主役であるはずの王女殿下が、自分の婚約者に向かって声を張り上げて婚約破棄を突き付けた。 フルールはその光景を人混みの中で他人事のように聞いていたが、 興味本位でよくよく見てみると、 婚約破棄を叫ぶ王女殿下の傍らに寄り添っている男性が まさかの自分の婚約者だと気付く。 (───え? 王女殿下と浮気していたの!?) 一方、王女殿下に“悪役令息”呼ばわりされた公爵子息のリシャールは、 婚約破棄にだけでなく家からも勘当されて捨てられることに。 婚約者の浮気を知ってショックを受けていたフルールは、 パーティーの帰りに偶然、捨てられ行き場をなくしたリシャールと出会う。 また、真実の愛で結ばれるはずの王女殿下とフルールの婚約者は───

種族の壁をのりこえて

慧狼(すいろう)
恋愛
…皆さんは、動物とヒトとの恋、 許せますか…? ここは、“それ”が許されない場所…

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

私が番?何かの間違いですよね?

柚木
恋愛
突然屋敷に現れた獣人に「番」と結婚を迫られる。 でも、私には頷けない訳があらのにも関わらず、彼は私の元へやって来る。 ※なろうにも掲載しています。

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...