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32、エピローグ
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炎乃華をマイティ・フレアにさせたのは、間違いだったんじゃないのか。
死んだ母親に憧れる少女。その夢を叶えてやりたいと、思ったのが始まりだった。地球を代表する、適当な相手がいない、というオレの悩みも解決する。万事がうまくいく見事なアイディアだと、ずっとオレは思っていたんだ。
クラスメイトからも世間からも罵倒され、それでも頭を下げる炎乃華を見て、オレの胸には迷いが生まれた。
闘いの後は苦痛に悶えていると、炎乃華の父親は教えてくれた。もう娘が苦しむのは見たくない、とも。
本当は、ただの独りよがりだったんじゃないか。
誰も本当は、マイティ・フレアなんて望んじゃいなかった。炎乃華を苦しめているのは、本当はオレなんじゃないか。もう炎乃華を……楽にさせてあげるべきじゃないのか。
ようやくオレは、自分の間違いに気付いた。
だからもう、炎乃華との闘いを終わらせ、この星を去ろうと決意した。
「……なんだよ、このケーキは……」
シアンと炎乃華の闘いなんてとても見ていられなくて、オレは炎乃華手作りのケーキを食べようとしていた。
真っ白な生クリームでコーティングされたホールケーキ。それ自体はなんの変哲もない、ケーキ屋さんで見かけるような、見事な出来栄えのものだった。
ただ、その上に乗ったイチゴとチョコで出来た人形が、オレの目を釘付けにする。
「……闘ってるのか、コレ……」
イチゴはマイティ・フレア。
そして黒いチョコレートはゼルネラ星人……つまりはオレをかたどっていた。
白い生地の上で、ふたつの人形は組み合っているのだった。
闘っていた。
お互いに笑顔を浮かべて。
「……楽しかったのかよ」
笑いながら、赤と黒の人形は闘っている。
これまでにマイティ・フレアとしてオレと闘ってきたのが、そんなに楽しかったのか。オレに見せたいほどに。わざわざ手の込んだ人形を、作りたいほどに。
「そんなにも……楽しかったのかよ」
眼の奥がカァっと熱くなって、視界がぼんやりと滲みだした。
ポロポロと溢れる雫を拭うのも忘れて、オレはケーキを貪り喰った。
あと少し。もう少しだけでいい。ちょっとでも、長く。
この少女の喜びを、続けてあげたいと思いながら。
シアンが校庭に出現した時以上に、今度の休校は長かった。
と言っても、オレたちのクラスだけが学級閉鎖になったのだが。なにしろ重傷を負ったのは炎乃華だけじゃないんだ。多くの生徒が視聴覚室で同時に失神する、なんて事件が起きたものだから、調査のために時間が必要となったわけだ。
オレのところまで捜査の手が回るかな、とちょっとヒヤヒヤしたが、結局真相はウヤムヤのうちに終わった。いやあ~。やっぱり持つべきものは、総理大臣の友人だな!
ま、なんにせよ、オレとしてもケガを治す時間は欲しかったから、今回ばかりは助かったよ。
久しぶりの登校となった一時限目。朝のホームルームは、恒例の行事で始まった。
「さあ、みんな! いつも以上に盛大な拍手で迎えましょう! 4体もの悪逆非道な敵に囲まれながら、大逆転勝利を飾ったミラクルヒロイン……津口炎乃華さんの登場よ!」
ヨーコ先生も本来の元気キャラに戻っている。黒縁メガネの奥には、屈託ない笑顔が広がっていた。
照れながら教室に入ってきた炎乃華を、大歓声と鳴りやまない拍手が待ち受ける。
ま、そりゃあそうだわな。今回ばかりは多くの人々が地球の敗北を覚悟しただろう。炎乃華なんて一度死んだんだし。あの逆転勝利を見て、なにも感じない人間はそうそういない。
現金なものだ、あの細眉もめっちゃニコニコしながら拍手してやがる。結局自分の安全が保てればオールオッケーってわけか。
他の連中も負けた時にはボロクソ言っていたくせに、自分の言葉も忘れたように笑顔を浮かべている。なかには「感動したよ!」とかほざきながら、泣いているヤツまでいるじゃねーか。
ていうか、多分本当に忘れているんだろうな。自分たちがしたことなんて。
……地球人。ある意味ゼルネラ星人よりもしたたかかもしれねえな……。
「じゃあ今日のホームルームは特別に、マイティ・フレアの祝勝記念会よ! なにしろ地球の危機を救ったんだもんね! 希望する子は1枚1000円で炎乃華さんとのツーショット写真を撮ってあげるわ! このクラスだけの限定企画だからね!」
……ヨーコ先生、元に戻ったと思ったら、早速商魂たくましいな。
ていうかクラスメイトから金取るなよ! オレたちまだ高校生だぞ。学校の倫理的にアウトじゃねーのか、コレ。
ブツクサ呟きつつ、あっという間にできあがる長蛇の列の後ろにオレは並んだ。
いや、だって改めて写真撮るとかお願いできないだろ! 恥ずかしすぎるじゃん! 炎乃華との記念の一枚が手に入る、絶好のチャンスじゃん!
「あら、珍しいわね。黒岩くんがこういう企画に参加するなんて」
ようやくオレの順番が回ってくると、カメラを構えたヨーコ先生は小首をかしげる。
ツカツカと歩み寄ると、オレの鼻先にまで顔をズイッと近づけた。
「ふーん、そんなに津口さんのことが気になるのねぇ……」
メガネの奥の瞳が、醒めるような青色に輝いている。
ヨーコ先生が、『蒼井妖子』に代わった瞬間であった。
「おまッ……! なにしてるんだよ!」
ゼルネラ星人の聴覚でなければ聞こえない周波数で、オレは地球人の姿を借りている幼馴染に話しかけた。
「まだヨーコ先生に憑依していたのか!?」
「しばらく間借りすることにしたんだよ。なに、彼女との間ではきちんと契約が成立している話さ」
地球に居座るシアンもシアンだが、侵略者との交渉においそれと乗っちまうとは……。ヨーコ先生もなに考えてるんだ、まったく。
いざとなったら生徒の命よりも金を優先させそうで、つくづく怖いぜ。地球人、ホントにヤバイ。
「あんたの方こそ、よく平然と今まで通りに過ごせるもんだ。負けちまったゼルネラ星人は死ななきゃいけないんだろう? あんた自身が定めた鉄の法典じゃないか」
「負けたのはお前もだろうが。ていうか、オレは別に負けてねーから!」
「私だって、こんな小娘に負けてなどいるものか」
「そうさ。オレたちの闘いは、まだこれからが本番だっつーの」
この前オレたちが炎乃華に不覚を取ったのは、あくまで途中経過だ。現にこうしてピンピンしているし、負けを認めてなどいない。
シアンのヤツも借りを返す気満々のようだ。獲物を先取りされないよう、気をつけなくっちゃあな。
「ひとつだけ、聞いていいかい?」
「あん?」
意地悪そうに女教師の姿をした幼馴染は、唇を吊り上げた。
「あんた、炎以外のマナゲージは全部持っているんだよねえ?」
「んなこと、お前だってよく知っていることじゃねーか」
「じゃあ私と同じ、水のマナゲージもあるわけだ。……よく言うよ、なにが炎だけは弱点なんだか」
ギクリとオレが顔を引き攣らせた時には、そっぽを向いてヨーコ先生は遠ざかっていく。
……ちぇ。あの女、余計なこと炎乃華に言わなきゃいいけど。
「どうしたの、亜久人くん?」
怪訝そうな表情を浮かべている美少女の横に、オレは急いだ。
そうそう、写真写真。後ろが待っているんだ、あまりのんびりしてちゃあ悪いもんね。
炎乃華の横に立つと、自然とオレの背筋はピンと伸びる。
はあ。ふたりきりで部屋に招かれるような関係なのに……たかが写真を撮るだけで緊張するなんて。
ていうかその……オレたちはすでに、互いの全てを知った関係になっているはずなのに。
「……ふふ。なんだか緊張しちゃうね」
オレと似たような感想を、炎乃華がそっと、前を向きながら呟いた。
ヨーコ先生……青い眼じゃなくて、本来の姿に戻った『陽子』の方が、満面の笑みでカメラを向けている。今の彼女は教師というより、完全に人気アイドルのマネージャーだ。
「亜久人くんにはその……いつもあれだけ、お世話になっているのにね」
「それは……お互い様だよ」
炎乃華を抱き締めたあの時の感触を、オレは思い出していた。
オレたちは、本当は宿敵同士だ。地球の命運を賭けた。いつかオレは炎乃華を倒し、この星を去らなければならない。
だけど……きっともう、彼女もオレの正体には気付いているだろう。
なにしろ、ゼルネラ星人とマイティ・フレアが闘っているケーキを、ふたりで食べようとしていたんだ。オレと食べるケーキに、そのふたつの人形をデコレートする意味。
全部わかっているんだって、炎乃華はオレにサインを送ったに違いないんだ。
「でも、不思議なのよね」
「なにが?」
「なんでゼルネラ星人……ノワルは、お母さんが1対4で闘ったことを知っていたのかな? 『マイティ・フラッシュ』の映像は、亜久人くんと私しか見たことないはずなのに……」
「……え?」
「ハーイ、撮りまーす!」
思わず横に顔を向けたタイミングで、カメラのシャッター音がパシャリと響いた。
せっかくの炎乃華とのツーショット写真は、こうして見事に、ヒロインひとりが正面を向くものとなった。
でも、いいんだ。
まだオレとマイティ・フレアの闘いは、続くんだ。写真なんて、いくらでも撮るチャンスがあるに違いない。
なによりも炎乃華の、嬉しそうな笑顔とVサインが映っているんだ。
決着をつけるその日まで、もうしばらく『正義のヒロイン』を楽しんでいるといい。
オレが倒す時まで、せいぜい首を洗って待っているんだな、マイティ・フレア。
《了》
死んだ母親に憧れる少女。その夢を叶えてやりたいと、思ったのが始まりだった。地球を代表する、適当な相手がいない、というオレの悩みも解決する。万事がうまくいく見事なアイディアだと、ずっとオレは思っていたんだ。
クラスメイトからも世間からも罵倒され、それでも頭を下げる炎乃華を見て、オレの胸には迷いが生まれた。
闘いの後は苦痛に悶えていると、炎乃華の父親は教えてくれた。もう娘が苦しむのは見たくない、とも。
本当は、ただの独りよがりだったんじゃないか。
誰も本当は、マイティ・フレアなんて望んじゃいなかった。炎乃華を苦しめているのは、本当はオレなんじゃないか。もう炎乃華を……楽にさせてあげるべきじゃないのか。
ようやくオレは、自分の間違いに気付いた。
だからもう、炎乃華との闘いを終わらせ、この星を去ろうと決意した。
「……なんだよ、このケーキは……」
シアンと炎乃華の闘いなんてとても見ていられなくて、オレは炎乃華手作りのケーキを食べようとしていた。
真っ白な生クリームでコーティングされたホールケーキ。それ自体はなんの変哲もない、ケーキ屋さんで見かけるような、見事な出来栄えのものだった。
ただ、その上に乗ったイチゴとチョコで出来た人形が、オレの目を釘付けにする。
「……闘ってるのか、コレ……」
イチゴはマイティ・フレア。
そして黒いチョコレートはゼルネラ星人……つまりはオレをかたどっていた。
白い生地の上で、ふたつの人形は組み合っているのだった。
闘っていた。
お互いに笑顔を浮かべて。
「……楽しかったのかよ」
笑いながら、赤と黒の人形は闘っている。
これまでにマイティ・フレアとしてオレと闘ってきたのが、そんなに楽しかったのか。オレに見せたいほどに。わざわざ手の込んだ人形を、作りたいほどに。
「そんなにも……楽しかったのかよ」
眼の奥がカァっと熱くなって、視界がぼんやりと滲みだした。
ポロポロと溢れる雫を拭うのも忘れて、オレはケーキを貪り喰った。
あと少し。もう少しだけでいい。ちょっとでも、長く。
この少女の喜びを、続けてあげたいと思いながら。
シアンが校庭に出現した時以上に、今度の休校は長かった。
と言っても、オレたちのクラスだけが学級閉鎖になったのだが。なにしろ重傷を負ったのは炎乃華だけじゃないんだ。多くの生徒が視聴覚室で同時に失神する、なんて事件が起きたものだから、調査のために時間が必要となったわけだ。
オレのところまで捜査の手が回るかな、とちょっとヒヤヒヤしたが、結局真相はウヤムヤのうちに終わった。いやあ~。やっぱり持つべきものは、総理大臣の友人だな!
ま、なんにせよ、オレとしてもケガを治す時間は欲しかったから、今回ばかりは助かったよ。
久しぶりの登校となった一時限目。朝のホームルームは、恒例の行事で始まった。
「さあ、みんな! いつも以上に盛大な拍手で迎えましょう! 4体もの悪逆非道な敵に囲まれながら、大逆転勝利を飾ったミラクルヒロイン……津口炎乃華さんの登場よ!」
ヨーコ先生も本来の元気キャラに戻っている。黒縁メガネの奥には、屈託ない笑顔が広がっていた。
照れながら教室に入ってきた炎乃華を、大歓声と鳴りやまない拍手が待ち受ける。
ま、そりゃあそうだわな。今回ばかりは多くの人々が地球の敗北を覚悟しただろう。炎乃華なんて一度死んだんだし。あの逆転勝利を見て、なにも感じない人間はそうそういない。
現金なものだ、あの細眉もめっちゃニコニコしながら拍手してやがる。結局自分の安全が保てればオールオッケーってわけか。
他の連中も負けた時にはボロクソ言っていたくせに、自分の言葉も忘れたように笑顔を浮かべている。なかには「感動したよ!」とかほざきながら、泣いているヤツまでいるじゃねーか。
ていうか、多分本当に忘れているんだろうな。自分たちがしたことなんて。
……地球人。ある意味ゼルネラ星人よりもしたたかかもしれねえな……。
「じゃあ今日のホームルームは特別に、マイティ・フレアの祝勝記念会よ! なにしろ地球の危機を救ったんだもんね! 希望する子は1枚1000円で炎乃華さんとのツーショット写真を撮ってあげるわ! このクラスだけの限定企画だからね!」
……ヨーコ先生、元に戻ったと思ったら、早速商魂たくましいな。
ていうかクラスメイトから金取るなよ! オレたちまだ高校生だぞ。学校の倫理的にアウトじゃねーのか、コレ。
ブツクサ呟きつつ、あっという間にできあがる長蛇の列の後ろにオレは並んだ。
いや、だって改めて写真撮るとかお願いできないだろ! 恥ずかしすぎるじゃん! 炎乃華との記念の一枚が手に入る、絶好のチャンスじゃん!
「あら、珍しいわね。黒岩くんがこういう企画に参加するなんて」
ようやくオレの順番が回ってくると、カメラを構えたヨーコ先生は小首をかしげる。
ツカツカと歩み寄ると、オレの鼻先にまで顔をズイッと近づけた。
「ふーん、そんなに津口さんのことが気になるのねぇ……」
メガネの奥の瞳が、醒めるような青色に輝いている。
ヨーコ先生が、『蒼井妖子』に代わった瞬間であった。
「おまッ……! なにしてるんだよ!」
ゼルネラ星人の聴覚でなければ聞こえない周波数で、オレは地球人の姿を借りている幼馴染に話しかけた。
「まだヨーコ先生に憑依していたのか!?」
「しばらく間借りすることにしたんだよ。なに、彼女との間ではきちんと契約が成立している話さ」
地球に居座るシアンもシアンだが、侵略者との交渉においそれと乗っちまうとは……。ヨーコ先生もなに考えてるんだ、まったく。
いざとなったら生徒の命よりも金を優先させそうで、つくづく怖いぜ。地球人、ホントにヤバイ。
「あんたの方こそ、よく平然と今まで通りに過ごせるもんだ。負けちまったゼルネラ星人は死ななきゃいけないんだろう? あんた自身が定めた鉄の法典じゃないか」
「負けたのはお前もだろうが。ていうか、オレは別に負けてねーから!」
「私だって、こんな小娘に負けてなどいるものか」
「そうさ。オレたちの闘いは、まだこれからが本番だっつーの」
この前オレたちが炎乃華に不覚を取ったのは、あくまで途中経過だ。現にこうしてピンピンしているし、負けを認めてなどいない。
シアンのヤツも借りを返す気満々のようだ。獲物を先取りされないよう、気をつけなくっちゃあな。
「ひとつだけ、聞いていいかい?」
「あん?」
意地悪そうに女教師の姿をした幼馴染は、唇を吊り上げた。
「あんた、炎以外のマナゲージは全部持っているんだよねえ?」
「んなこと、お前だってよく知っていることじゃねーか」
「じゃあ私と同じ、水のマナゲージもあるわけだ。……よく言うよ、なにが炎だけは弱点なんだか」
ギクリとオレが顔を引き攣らせた時には、そっぽを向いてヨーコ先生は遠ざかっていく。
……ちぇ。あの女、余計なこと炎乃華に言わなきゃいいけど。
「どうしたの、亜久人くん?」
怪訝そうな表情を浮かべている美少女の横に、オレは急いだ。
そうそう、写真写真。後ろが待っているんだ、あまりのんびりしてちゃあ悪いもんね。
炎乃華の横に立つと、自然とオレの背筋はピンと伸びる。
はあ。ふたりきりで部屋に招かれるような関係なのに……たかが写真を撮るだけで緊張するなんて。
ていうかその……オレたちはすでに、互いの全てを知った関係になっているはずなのに。
「……ふふ。なんだか緊張しちゃうね」
オレと似たような感想を、炎乃華がそっと、前を向きながら呟いた。
ヨーコ先生……青い眼じゃなくて、本来の姿に戻った『陽子』の方が、満面の笑みでカメラを向けている。今の彼女は教師というより、完全に人気アイドルのマネージャーだ。
「亜久人くんにはその……いつもあれだけ、お世話になっているのにね」
「それは……お互い様だよ」
炎乃華を抱き締めたあの時の感触を、オレは思い出していた。
オレたちは、本当は宿敵同士だ。地球の命運を賭けた。いつかオレは炎乃華を倒し、この星を去らなければならない。
だけど……きっともう、彼女もオレの正体には気付いているだろう。
なにしろ、ゼルネラ星人とマイティ・フレアが闘っているケーキを、ふたりで食べようとしていたんだ。オレと食べるケーキに、そのふたつの人形をデコレートする意味。
全部わかっているんだって、炎乃華はオレにサインを送ったに違いないんだ。
「でも、不思議なのよね」
「なにが?」
「なんでゼルネラ星人……ノワルは、お母さんが1対4で闘ったことを知っていたのかな? 『マイティ・フラッシュ』の映像は、亜久人くんと私しか見たことないはずなのに……」
「……え?」
「ハーイ、撮りまーす!」
思わず横に顔を向けたタイミングで、カメラのシャッター音がパシャリと響いた。
せっかくの炎乃華とのツーショット写真は、こうして見事に、ヒロインひとりが正面を向くものとなった。
でも、いいんだ。
まだオレとマイティ・フレアの闘いは、続くんだ。写真なんて、いくらでも撮るチャンスがあるに違いない。
なによりも炎乃華の、嬉しそうな笑顔とVサインが映っているんだ。
決着をつけるその日まで、もうしばらく『正義のヒロイン』を楽しんでいるといい。
オレが倒す時まで、せいぜい首を洗って待っているんだな、マイティ・フレア。
《了》
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