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「第九話 夕子抹殺 ~復讐の機龍~ 」

19章

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 「ソウハイカン。私ニトッテハ、有栖川邦彦ヲ殺スコトコソガ、目的ナノダカラ」

 白衣の機械人間の単調な声に、わずかに含まれる愉悦の響き。
 ちゆりの存在が大きいため忘れがちだが・・・事実上夕子を葬った桐生の目的は、あくまで父親の邦彦なのだ。いつでも始末できるはずの夕子を生かしているのは、苦しめ跪かせることが狙いの「闇豹」とは異なり、邦彦を誘き寄せるエサにしているため。ちゆりにとってはどうでもいい天才学者の登場は、桐生にとっては待ちに待った好機なのだ。

 恐らく先程のアラームと桐生の台詞から推察するに、この「希望の島」に設置した監視網に邦彦の姿が確認されたのであろう。常時夕子の体調データを三星重工の研究室に送り続けている銀の首輪は、サイボーグ少女が危険な状態にあることを確実に開発者・邦彦のもとに知らせているはずだ。

 だがアリスが高圧電流の帯で串刺しにされた時点で、とっくに高性能な首輪は故障してしまっている。広大な埋立地のどこかで、夕子が窮地に立たされていることはわかっていても、今の邦彦に正確な居場所を把握する方法はないのだ。
 父が娘を探す間に徹底的に「闇豹」は夕子を屈服させ、感動の対面を済ませたあと親子ともども処理するつもりなのだろう。そうすれば、嗜虐の狂女と復讐の暗殺機械の望みは、両方叶えられることになる。

 そこまで瞬時に理解していながら、囚われの少女戦士にはなんらの抵抗もできなかった。拘束から逃れることも、父を危機から救うことも。せめて父を守りたいという想いは虚しく空回りし、かえって誘き出す道具として利用されている事実が、夕子の心を屈辱で塗りつぶす。

 カタカタと白衣の眼鏡男は軽やかな動きでキーボードを操った。新たな激痛を夕子に送るためではない、どうやらスクリーンに映る画像を監視カメラのものに切り換えているようだ。もはや機械人間の庭と化した未来都市の夢の跡地には、何十台に及ぶ隠しカメラが当然のように
配置されていることだろう。

 「フフフ・・・間違イナイ。愚カナ男ダ。危険ト知リツツ自ラヤッテクルトハ」

 パソコンからの反射で青く浮かび上がる痩せた顔が、固い笑いを刻む。カメラのひとつが紛れもない有栖川邦彦の姿を捉えたのであろう。影武者の登場をかすかに期待していた夕子の胸に、追い打ちの絶望が湧き上がる。

 「テッキリ私的軍隊デモ連レテ来ルカト思ッテイタガ、ナントイウ無用心。小娘二人連レテ、イッタイ何ノツモリダ?」

 桐生の台詞に気色ばんだ神崎ちゆりが、さっと駆け寄りパソコン画面を覗き込む。

 「小娘二人だってェ?」

 「白イ制服ノ、ヒ弱ソウナ小娘ダ。マサカ奴ハココデ、死ヌツモリナノカ?」」

 西条ユリとエリ。
 邦彦を護衛し、窮地の聖少女を救いに来た二人の少女の正体を、夕子は瞬時に見破った。里美たち3人が南洋の島に向かった今、ミュータントと互角以上に渡り合える少女は彼女たちしかいない。万が一に備え、相楽魅紀あたりを通じて里美が二人を邦彦に紹介していたのだろう。

 「ふ~ん・・・小鳥ちゃんが出てきたかァ・・・」

 幼ささえ残る可憐な双子を普通の女子高生と思い込んでいる桐生と違い、西条姉妹の実力を知る「闇豹」の眼には鋭さが混じる。
 全身白の制服から覗く手足にはところどころ同じ色の包帯が巻かれているが、それが有利な材料になるとはまるでちゆりには思えなかった。伊豆の海岸で死闘を繰り広げた二人が手負いの状態であることも、他のメンバーがいないためのやむを得ずの登場であることも、奔放に動く女豹が知る由もなかったが、たとえ知っていたとしてもこの状況を決して楽観はしなかったに違いない。

 ファントムガールに変身できるのは妹のユリのみ。しかし、本気になったユリの強さを「闇豹」は以前に経験済みであった。姉のエリも"一般人"としては恐るべき強さだ。つい数時間前にミュータントになったばかりのちゆりと桐生が、再度巨大化するのは決して楽な作業ではない。
 変身しても不利、まして生身のまま西条姉妹と激突すれば・・・データを入力していない桐生がパートナーでは、あまりに危うすぎる。

 無知な桐生の言葉がちゆりには白けて聞こえる。無用心どころではない。有栖川邦彦は、最強の護衛を連れてきたのだ。
 だが・・・それは嗜虐の女王にとっては十二分に予想されたことだった。

 「桐生~~、直接オヤジを殺すのは諦めなァ~~」

 「ナンダト?!」

 眼鏡の奥の目がギラリと光る。

 「こいつらふたり、あんたより強いよォ~。ひとりは『エデン』飼ってるしねェ」

 弱いと断言されることは、死を賭けた闘いに身を置く者にとって、正邪どちら側に立っていようとも屈辱であるはずだが、本来の目的が邦彦の暗殺にある桐生には冷静にちゆりの言葉を聞ける判断力があった。

 「ソウカ。ナラバ、コノ手デ奴ヲ葬ルコトハ諦メルトシヨウ」

 一瞬、安堵する夕子の胸に、引き続き放たれた桐生の言葉は悪夢の予感を突き刺した。

 「モット悲惨デ・・・絶望的ナ死ヲプレゼントスルカ」

 金色のルージュが耳まで裂けそうに吊り上がった「闇豹」の笑顔を、夕子は生涯忘れ得まい。
 ヅカヅカと歩み寄る女豹の一歩ごとに、理由のない戦慄が駆け登る。未来が危機を囁くような。魂が運命を恐れるような。
 しなやかでいて獣性を漂わすちゆりの右手が宙吊り少女の顎を鷲掴む。勢いで揺れる無数のコード。白衣の男がパソコンに向かって新たな指令を入力している。機械の肉体を乗っ取られた被虐のサイボーグ少女。暴虐の虜囚と化した悲運の少女に、渦巻いていた悪寒が今現実の形となって襲い掛かる。

 「んじゃあァァ~~・・・パパとお仲間が来る前にィ、こいつを"破壊"しちゃおうかァァ・・・」

 空いていた魔豹の左手が、大きく広げられた聖少女の股間へと伸びる。
 膝までの長さの麻製のパンツは戦闘時のダメージでビリビリに破れ、白いショーツがほとんど露わになっていた。その中央、下着を破って開いた穴を通って、何本もの黒いコードが女性の洞穴に直接挿入されている。漆黒の触手を生んでいるかのようなおぞましき姿。淡い茂みがうっすら生えた周囲を、なぞるように悦虐の女豹の指が這う。

 「な・・・んの・・・つもり・・・・・・」

 赤い涙の跡が残る瞳で、夕子は鋭く睨みつけた。壮絶な苦痛のあとは、性奴として恥辱しようというのか。だがいくら「闇豹」が艶技に長けていようとも、肌を触れられるたびに憎しみにも似た怒りを燃え上がらせる天才少女は、苦痛の拷問同様、いやそれ以上に屈するつもりは毛頭ない。

 「言っただろォォ~~・・・破壊するってェェ~・・・」

 耳元でかけられる吐息が熱い。蕩けるように転がる魔豹の声は、明らかにこれまでと違って艶やかな甘さを含んでいた。

 「私を・・・辱めても・・・無駄よ・・・貴様には・・・屈しない・・・」

 「そうかなァ~~?・・・フフ、随分薄い毛ねェ~。お子ちゃまみたい・・・」

 サイボーグといえど、密接に機械部分とリンクし人間同様の感覚を持つ夕子は、性の刺激についても普通の人間並みに感じ取ってしまう。産毛をかすめるように這っていく優しい愛撫が、子宮の奥底に昂ぶりを募らせていくのは誰とも変わらない。ただ向こう気の強い反発心と、孤高が育てた気高き闘志が、魔悦の嬲りに奇跡的な抵抗を起こさせている。
 白い肌を這い回った両手の指が、豊かに膨らんだ胸の隆起を包み込む。小柄な身体に合わぬボリュームある夕子のバストを、悪女の両手がもちをこねるように揉み回す。

 「意外とオッパイあるのねェ~・・・人造女でもォ、感じるのかなァ~?」

 青い爪がじっくりとお椀の周囲をなぞり、刺激を掻き集めるようにして頂点に駆け登っていく。
 夜目にも鮮やかに、桃色の突起は屹立していた。コリコリに固まり充血した乳首が、なにもされないでもジクジクと痛む。執拗に双丘に指を這わせる豹柄の色魔を、拘束の少女は黙ったまま睨み続けている。

 「おやおやァ、静かになっちゃったねェ~。生意気なこといってもォ、カラダは正直だから♪」

 ブラウスも白のブラジャーも破れた裂け目からふたつの乳首が突き出している。内なる昂ぶりを一点に集中したような桃色の突起は、ポロリと落ちそうなほど巨大化して尖っていた。美しく可愛らしいさくらんぼのような頂点。集まった刺激が暴れるのか、夜の外気に晒された少女の乳首は、ピクピクとかすかに震えている。
 人差し指と親指で、ちゆりはふたつのバストの先端をそれぞれ優しく摘んだ。

 「はァくッ?!」
 
 思わず快感の叫びが、夕子の口をついて出てしまう。
 クリクリとこね回される敏感な突起。おおよそ男性経験とは無縁な天才少女にとって、かつて体験したことのない快楽の電撃が全身を駆け巡っている。この蕩けるような感覚は・・・? 神経が暴走するかのような刺激は・・・? 魔豹の指先が作り出す快楽の津波に、サイボーグ少女の理性が弾け飛んでいく。
 まわされていた乳首が今度は柔肉に埋まるほどに押し入れられる。己の乳房の弾力が、感度の高い突起を絶妙な圧力で包み込む。刺激に慣れないうちに、今度は尖った爪で摘まれて引っ張られる。乳首への責めは徹底的であり執拗であった。焦らすように優しく摩擦され、壊すように激しく折り曲げられる。そのたびに別種の、しかも激しい刺激が夕子の下腹部に突き刺さる。

 「うくッ!・・・はあッ!・・・ひうッ!・・・ハア・・・ハア・・・くうゥッ・・・!」

 「あはははは♪ だいぶ喘いできたねェ~。快楽には屈しないんじゃなかったっけェ~?」

 悔しさか、それとも別の感情によるものか。垂れがちな瞳をさらに歪ませ、歯を食いしばった夕子の表情は泣きそうにも見て取れた。宿敵にいいように胸を嬲られ、しかも感じてしまっている屈辱。だがそれでも聖少女の瞳には、反抗の炎は燃え盛っている。

 「嬲れ・・・嬲ればいい・・・・・・いくら肉体を汚しても・・・魂までは穢されない・・・」

 「へえェェェ~~、じゃあこれはどうゥ~?」

 パクリと夕子の右胸を魔豹の口が包み込む。

 「ふくッッ?!」

 猫を思わせるざらついた舌が、白い乳房を丁寧に舐めあげていく。充血した先端を包む生温かい刺激。温度と感触、官能を催す絶妙な粘液が、敏感な突起を嵐のように弄ぶ。

 「~~ッッ?!! くうッ・・・うううゥゥ~~~ッッ・・・」

 必死で食い縛る歯の隙間から、微妙なビブラートに揺れる呻きが洩れる。夕子の整った美形が、喜びとも苦しみともとれる複雑な表情に歪む。
 右胸を涎で濡らし尽くした舌がようやく雪肌を離れたとき、虜囚少女の腰は己でも無意識のうちに前後に揺れ始めていた。

 「強がってもこんなに感じちゃってるじゃなァ~い。情けない女ァ~」

 「ハア、ハア、ハア・・・す、好きに・・・言ってろ・・・」

 「さあ~~て・・・そろそろホントの地獄に堕ちてもらおうかァ~~・・・」

 陰惨な笑みを魔豹は浮かべた。
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