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「第七話 七菜江死闘 ~重爆の肉弾~」
15章
しおりを挟む「お前は終わりだよッ、ナナッ! ここからが楽しいショーの始まりさ! やれッ、サリエル、ビキエル!!」
勝負を賭けた一撃に失敗し、反撃の術を失って打ちひしがれる守護天使に、前後から双子の巨岩が殺到する。
“・・・そ・・・ん・・・・・・な・・・・・・”
動けなかった。
逃げようとする意志を裏切り、身体はピクリとも動くことはなかった。
ファントムガール・ナナ、敗北の瞬間。そして、地獄の宴が始まろうとしている。
グワッシャアアアアアアアアアッッッ――ッッッ!!!!
「ギャアアアアアアアアアッッッ~~~~ッッッッ!!!!」
巨大ボーリングが青い戦士の豊満な肉体を圧殺する。
聖少女の何十倍もの質量が、サンドイッチにして天使を挟み潰す。肋骨が砕け、内臓が破裂し、細胞が潰される。ナナは己の肉体が、コナゴナに粉砕されたことを悟った。骨格の悲鳴が体内に響き渡っている。天高く吹き上げられた血反吐が、雨となってバシャバシャと絶望の大地を叩いている。
「アッハッハッハッ! どうナナッ?! ミンチにされる気分は?!」
ガクンと垂れた頭を、青いショートカットを掴んで起こす蜂女。点滅する瞳が、ぼんやりと凶悪な昆虫の顔を映す。
「あがあッッ・・・かふううッッ・・・・ぐうううぅぅッッ~~ッッ・・・」
“ろ・・・肋骨がぁ・・・折れた・・・・・あちこちに・・・ヒビ・・・が・・・”
「ナナ、私の奴隷になりな。そうすれば命だけは助けてやる。もっとも、永久に拷問漬けだけどねぇ」
「あが・・・・・・くあ・・・・・」
「はぁ? なんだって? よく聞こえないよ」
唇を震わせる聖少女に、耳を近づけた途端、赤いツバがクインビーの頬に吐きかけられた。
「ハアッ・・・ハアッ・・・お前に・・・・・は・・・・がはッ・・・ハアッ・・・負けな・・・い・・・・・・」
肉弾の合間から、手足と首だけを覗かせて苦悶する超少女の、必死の抵抗。
複眼をギラつかせた巨大蜂が、逆上して咆哮する。
「潰せええッッ~ッッ、サリエル、ビキエル!! このムカつく女を泣き喚かせてくれるッッ!!」
サンドイッチしたまま、巨岩がギュルギュルと高速で回転する。
ベキッ! ベキベキベキッッ!! ミシミシ! ミチチミチミチ!!
「うああああああッッッ~~~ッッッ!!! ああああッッ―――ッッッ!!!」
「泣けッ! 喚けッナナ!! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
「いやああああッッ~~~ッッッ!!! む、胸があああッッ――ッッ!! 潰れるッッ!! バ、バラバラになっちゃうぅぅッッ――ッッ!!!」
「アーッハッハッハッハッ!! 苦しいだろオ、ナナッッ! 骨ごと砕かれていくのはよオ! グチャグチャになりな!」
ゴボオッッ!! ゴボオッッ!! ゴボオッッ!!
巨大ローラーに挟まれ、芸術的な肉体を擦り潰されていくナナ。丸く膨らんだ胸が押し潰され変形し、脇腹が砕かれていく。鍛えられた筋肉もなんの意味ももたない。圧搾により筋繊維ごと千切り潰され、損傷した内臓をさらに圧迫される。まさしく地獄の苦痛。まとまった血塊が、リズミカルに桜の花びらに似た唇を割って、ゴボゴボとこぼれ落ちていく。
ギュルルルルルルルルル――ッッッ!!!
「うあああああッッッ~~~ッッッ!!!! ひぎゃああああッッッ~~~ッッッ!!!! やめッッ・・・てえええッッッ~~~ッッッ!!! 苦しいッッッ―――ッッッ!!!!」
たまらず懇願するナナ。それは屈服というより、条件反射的に叫んだものだった。
肉弾の回転が止まる。自ら吐いた血の塊を周囲に咲かせ、ぐったりと敗北の天使が肉のローラーに挟まれて脱力する。
「ゴボッッ・・・うああッッ・・・・・くあああッッ・・・・・」
「フフフ、いい気味だ。さあ、ナナ、奴隷になるならいまのうちだ。どうするんだい?」
「が・・・がふッッ・・・ぐぶぶ・・・し、死んでも・・・なるもん・・・か・・・」
「アーッハッハッハッ、バカなヤツだよ! サリエル、ビキエル、本当の地獄を教えてやりな」
今までの圧搾は、まだ序の口とでいうのか。
青ざめるナナに、恐るべき拷問地獄が襲いかかろうとしている。
「ナナ、いいことを教えてやるよ。こいつら双子も実はキメラ・ミュータントなのさ。なんの動物と合体してると思う?」
「・・・・・・ぐぅぅ・・・・・・くうッッ・・・・・・・」
「フフフ・・・正解は・・・ハリネズミさ」
青い肢体を挟み潰す巨大肉弾ふたつ、灰色と茶色の球体が、身の毛もよだつような変態を始めたのは、その時だった。
無数の極細の針が、全身から伸びる。
ウニか、栗を思い起こさせるような禍禍しい姿。岩に似た球体に、血を連想させずにはいられない鋭利な棘が、ビッシリと全体を覆い尽くして生えてくる。
ボロボロの聖少女を挟んだまま。
ブスブスブスブスブスブスブスブス!!!!
「いやああああああああああ~~~~ッッッッ!!!!」
眼を覆わずにはいられない、残酷な処刑ショーが、地方の町に大パノラマで繰り広げられる。
可憐で、肉感的で、健気で、純粋な青い守護天使が、首から下を数え切れない量の針で突き刺されて、空中に浮んでいる。まるで標本のように。だが、突き刺さった針は一本ではなく、前からも後ろからも刺されていることが、標本とは異なっていた。
針のむしろとは、まさしくこのこと。
全身を襲う激痛は、ショック死を引き起こして妥当なものであろうが、ナナの並外れた体力と、針が糸のように細いことが、聖少女に地獄の苦痛を刻み続ける。
「あぎゅえッッ・・・ふぐあああッッ・・・ぎッ・・・はぎゅあああッッ・・・」
ヴィーン・・・・・・ヴィーン・・・・・・・ヴィーン・・・・・・・
弱々しいエナジー・クリスタルの点滅と、苦悶に震える悲痛な喘ぎが、凄惨な地獄絵図のBGMとして流れていく。
「アーッハッハッハッハッ!! お前のこんな姿を、どれだけ待っていたことか! 痛いか? 苦しいかい、ナナッ?!」
「はぎゅッッ・・・あうううッッ・・・・・・くあああッッッ・・・!!」
瞳が細く垂れ、食い縛った歯の間から悶絶の苦鳴が洩れ出る。憎き美少女の、激痛と絶望に歪んだ顔を愉快そうに眺めながら、怨念鬼となった蜂は、更なる暴虐を指示した。
「やってやりな。サリエル、ビキエル。もっと泣き喚かせるんだ」
それは、正視に耐えない残酷な拷問だった。
前から突き刺した灰色の針玉が、針先から赤い液体を迸らせる。
大地に落ちたその液体は、アスファルトを溶解させ、ジュウジュウと白煙をあげる。粘着質なその赤い液体は、溶岩だった。
さらに背後のビキエルも、針先から攻撃を放つ。こちらが放ったのは、人間なら一瞬にして黒焦げにする高圧電流。
体力が尽き、肉体を破壊され、針で固定されて身動きひとつできない瀕死のファントムガール・ナナの体内に、高温の溶岩と、高圧の電流が直接流し込まれる。全身にブスブスと刺さった、無数の針を通じて。
「ヒギャアアアアアアアアッッッ――――ッッッ!!!! キャアアアアアアッッッ――――ッッッ!!!!」
ジュウウウウウ・・・・・シュウウウウウウ・・・・・・・
ビビビビビビビッッ!! ババババババッッ!!!
少女の肉が焼ける悪魔の調べと、電撃が全身を駆け巡る音。
銀色の皮膚の内部があちこちで泡立ち、稲妻の破片がそこらじゅうから洩れ出る。灼熱と電撃の煉獄が、ナナの心を、身体を蹂躙し尽くしていく。
「ダメエエエエェェェッッッ――――ッッッ!!!! あたしもうダメエエエエェェェッッ~~~~ッッッ!!!! 死ぬうううッッッ―――ッッッ!!! やめてええエエエッッッ―――ッッッ!!!!」
絶叫。
ガクガクと震えるナナの頭。
青い瞳が点滅し、胸の水晶体が、消え入らんばかりに色を失っていく。針で埋め尽くされた小さな肢体が、断末魔の痙攣に揺れている。
もはやナナの死は時間の問題だった。
逆転の可能性はゼロだった。助けにくるべき仲間は、周到な作戦によって排除済みだ。あとは精神が狂死するか、肉体が破滅するか、どちらが先か・・・
不意に溶岩と電流が止む。
それでも事態は変わらない。ナナの究極のボディラインは、針に埋め尽くされて宙に浮んでいる。
ヴィ・・・・・・・ン・・・・・・・・ヴィ・・・・・・ン・・・・・・・
かすかにクリスタルを点灯させ、白煙の中ぐったりと脱力する敗北の天使を、憎悪と愉悦の混ざった複眼でクインビーは見る。
「ミンチにしな」
美貌の女子高生・柴崎香の変身体は、次なる嗜虐を指示した。
ふたつの巨岩が回転する。極細の針を生やしたまま。
棘だらけの巨大ローラーが、細身の少女を削りながら潰していく。
ザクザクザクザクザクッッッ!!! ギュルルルルルッッッ!!!
「うぎゃあああああああああああッッッ――――――ッッッ!!!! アアアッッ!!! アアッッ!! ウアアアアアアッッッ―――ッッッ!!!」
ビチャアッ!! ブシュブシュブシュッ! ビチッ! ビチャッ!!
血煙が、夕闇迫る町に立ち込める。
肉片が、血の塊が、無惨な聖少女の周囲を深紅に染めていく。人が逃げた後の民家に、天使の残骸がこびりついていく。ローラーの中心にあるナナの身体から、細かい物質が撒き散らかされていく。
削られていく。
人類を守ってきた可憐な少女戦士が、凶悪な怪物たちの手によって、成す術なく切り刻まれて、泣き叫んでいる。
ようやく巨岩の回転が止まる。
ズボッという音を残し、前後をサンドイッチしていた大量の針が、豊満な肉体から抜かれる。
ドス黒い、赤色。
土に汚れた己の血で、真っ赤に染まった瀕死の超少女がそこにいた。
グラアアア・・・・・・
スローモーションのように、ゆっくりと前のめりに倒れていくファントムガール・ナナ。
轟音を響かせ、はちきれんばかりの肢体を緋色に染めた天使は、惨敗の大地に倒れ伏した。
「アーッハッハッハッハッ! アハッ、アーッハッハッハハッ! やったわ! ナナは私に負けたのよ! 死ね! 苦しみ抜いて死ね、ナナ! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
ピクッ・・・・・・ピクピク・・・・・・
瞳の青色を完全に消した正義の少女が、左手を前に差し出した格好で大地に沈んでいる。救いを求めるように伸ばしたその手が哀れを誘う。
完全な計画でナナを追い詰め、思いつく限りの残虐行為をその身に刻んだ復讐鬼の罵倒が、無惨な背中に浴びせられる。
「アッハッハッ、どうしたの、ナナ?! 私から逃げようとしているの?!」
かすかに、かすかにだが、ズルズルと這いつくばった少女戦士の身体が、前方に動いている。意識は半濁し、肉体はいうことを聞かなくなった状態で、諦めを知らない真っ直ぐな聖少女は、必死に生を求めてあがいていたのだ。
「アーッハッハッハッ! ナナが私を恐れて逃げてるわ! 情けない女! さ、早く逃げなさいよ?! そんなに遅いと殺されちゃうわよォ」
あまりに不利な状況下にも逃げ出さず、健気に闘い敗れ去った正義の戦士を、卑劣な罠にかけて嬲り尽くした悪魔が嘲笑う。勝者と敗者の残酷な現実が、巨大な戦場に浮き彫りになる。正義は勝つ、空虚な言葉が絶望の陰に飲まれていく人々の胸に去来する。
左手でショートカットを鷲掴み、虫のように這う超少女を捕らえるクインビー。
グイッと頭を起こされ、反り曲がったナナが、打ちのめされて悲しみに歪む容貌を晒す。
「つ~~かまえた♪」
「・・・う・・・・・あ・・・・・・・アア・・・・・」
「ほらァ、お前は泣き叫んでりゃいいんだよッ!」
ひょうたんの形をした蜂女の右手が、動けぬナナの背中に突き刺さる。
蜂の毒針から流れる黄色の液が、発狂しそうな激痛を無惨な天使に送り込んだ。
「ひぎゃあああああああああああッッッ―――ッッッ!!!!」
宿敵の思惑通り、泣き叫ばされたナナの悲鳴がオレンジの空を駆け巡る。
ブルブルと小刻みに震える左手が、嬲り殺される苦痛を知らしめるように、救いのない虚空に高く高く差し伸ばされた―――
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