明日は明日の恋をする

彩里 咲華

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恋の予感?

ストーリー75

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「水沢さん店の場所分かる? 会社の近くなんだけど」

 仕事が終わり貴島さんが聞いてきた。今日は私の歓迎会ということで飲み会が開かれる。

「えっと、分からないです」

 歓迎会が行われる居酒屋の場所は事前に聞いていたけど、いまいち場所にピンとこなくて私は苦笑いをしながら答えた。

「じゃあ一緒に行こうか」

 貴島さんはクスッと笑って言う。私は制服から私服に着替えて、貴島さんと一緒に歓迎会が開かれる店に向かった。

「2人ともこっちこっち~」

 賑やかな居酒屋の店内に入ると、既に何人か集まっていて私達を呼んでいる。そして全員揃ったところで歓迎会が始まった。

 それからしばらく楽しくお酒を飲んでいると、みんなだいぶ酔ってきたみたいで質問タイムが始まった。

「水沢さんって彼氏いるの?」

 女子社員達が興味津々に聞いてきた。

「あっいえ、いないです」

「そうなの? 貴島く~ん、水沢さん彼氏いないって~」

 少し離れたところにいる貴島さんに聞こえるように大きな声で話す。すると、貴島さんは女子達のところへ移動してきた。

「何で俺に言うかな?」

「だって貴島君、水沢さんお気に入りでしょ? 二十六歳、貴島 修也頑張れ!」

 女子達はニヤニヤしながら貴島さんと話す。こういうノリの時って私はどんな風にしてたらいいんだろう。

「また勝手な事言って~。ごめんね水沢さん」

「いえ全然」

 謝る貴島さんに私は笑顔を返す。そして歓迎会は終了して、私は駅へと向かった。

「水沢さん」

「あっ貴島さん、お疲れ様です。」

 一人で歩いていると、後ろから貴島さんが走ってきて私の隣に来た。

「女性が夜道を一人で歩くのは危ないから俺に送らせて?」

 走ってきたせいで乱れた呼吸を整えつつ、貴島さんは笑顔で言ってきた。

「いえ、大丈夫ですよ」

「ダメ。お酒も飲んでるし危ないから送るよ。あっ、送る以外の目的はないから安心して」

 警戒してると思われたかな。私はただ申し訳ないなと思っただけなんだけど。

「じゃあお願いします」

 飲屋街を抜け、私達は駅に向かって歩く。駅に着くと、ちょうど電車が到着したので二人で電車に乗り込んだ。

『送るのは駅までで大丈夫ですよ』って言ったけど、正義感の強い貴島さんは家まで送ってくれた。

「家まで送ってくれてありがとうございます。何かすみません」

「いや、俺は水沢さんと色んな話出来て楽しかったし……ねぇ水沢さん、本当に彼氏いないの?」

「いないですよ」

「そう……俺、頑張っちゃおうかな。じゃあ、また明日仕事頑張ろう。おやすみ水沢さん」

 貴島さんは手を振りながら帰っていった。

 それにしても、頑張るってどういう意味だろう? 取り敢えず家に入ろうとアパートの方を見ると、二階から見覚えのある二人が顔を出している。

「いや~貴島君若いなぁ。お帰り明日香ちゃん」

「高瀬さんにマイさん!? ま、まさか見て……」

「ごめん明日香。見るつもりはなかったんだけど」

 私は慌てて二階へ駆け上がり、息を切らしながら二人の前に立った。

「部屋に入りましょう」

 真彩さんは玄関の鍵を開けて三人で部屋に入る。

「貴島君と良い感じじゃん」

 ローテーブルを挟んで座ると、高瀬さんがニヤッとしながら揶揄からかってきた。

「そんなんじゃないですから。飲み会の後、一人で歩くのは危ないからって送ってくれただけです」

 何か言い訳しているみたいな言い方になってしまった。

「でもさっきの彼、明日香の事…」

「あーダメダメ。明日香ちゃんってそういうの鈍いから」

 マイさんが何か言おうとした時、高瀬さんが首を振りながら会話を中断させた。

「そういえば、何で二人とも玄関の前に?」

「俺達もさっきまで外で食事してて、マイを家まで送ったところだったんだ。部屋に入ろうした時に明日香ちゃんの声がして、アパートの前を見てみたら貴島君と良い感じだったっていうわけ」

 偶然だったんだ。やましい事は何もないけど、何となく恥ずかしさがあった。

「そういえば明日香の会社、旅行先決まったの?」

「旅行?あっ慰安旅行いあんりょこうか。いつ?」

 真彩さんが話題を変えると、その言葉に高瀬さんが食いついた。

「予定では十一月なんですけど、場所選びに苦戦しているみたいです。旅行の幹事が貴島さんで何処かいいところないかなぁって相談されたけど、私もそういうの疎くて」

「貴島君が幹事か。俺いくつかオススメの場所知ってるから、今度仕事で会った時に相談に乗ってあげようかな」

 何か企んでいるように見えるのは気のせいかな。高瀬さんは楽しそうな表情をしている。そして、明日も仕事だからと言って帰っていった。

会社にて ーー

「水沢さん、慰安旅行の日程決まったからこれコピーしてみんなに配ってくれる?」

 歓迎会からしばらくして、無事に慰安旅行の日程が決まったみたい。私は何もしてないが行き先が決まりホッとした。

「良かったですね、行き先が決まって」

「この前、仕事で高瀬さんと会った時に偶然慰安旅行の話になってさ、初めて幹事するって言ったら色々相談に乗ってくれたんだ。良い人だよなぁ、高瀬さんって」

「偶然……ですか」

 高瀬さん、本当に相談に乗ってくれたんだ。

「じゃあコピーよろしくね」

「はい」

貴島さんから日程表を受け取り、全員分コピーする。

「行き先は紅葉こうようが見頃の温泉旅館かぁ。」

 私は日程表を見ながら、初めての慰安旅行を楽しみにしていた。
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