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進藤さんの婚約者
ストーリー24
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「これは社長、偶然ですね」
一瞬でその場の空気を読んだのか、仕事モードの進藤さんを前に高瀬さんも仕事モードのスイッチが入った。久しぶりに社長と秘書の会話を聞いた気がする。
「それに有栖川財閥の美玲様も……ご無沙汰しております。今日は美術館でデートですか?」
高瀬さんは進藤さんの横にいる女性に深々とお辞儀をする。有栖川財閥って、それじゃあ彼女が進藤さんの婚約者……。
私は彼女をチラッと見る。艶のあるふんわりとした黒髪、小顔に大きな瞳……とにかく美人という言葉がぴったりくる。
そして何より、圧倒的なオーラで存在感が半端ない。進藤さんと並んでいてもとてもお似合いだ。
私は思わず彼女から目を逸らした。
「高瀬さんお久しぶりですね。ふふ、様付けはしなくていいですよ。今日はお祖父様の付き添いで進藤さんと美術館に参りました」
なんて品のある微笑み方……彼女が微笑むと背景に花が飛んでるみたい。
「ねぇ進藤さん。そちらの女性はどなたかしら?水沢さんと仰ってましたけど」
彼女が私の方を見て尋ねる。彼女は気づいてないが、私達三人の間にピシッと異様な空気が流れた。
まさか住み込みで仕事しているとは言えないし、ましては私は会社の人間でもない。私の存在をどう説明するか、一瞬の間で考えようとする。
「こちらは水沢 明日香さんと言って……僕の彼女です。社長にも先日彼女を紹介したところですよ」
口を開いたのは高瀬さんだった。にっこりして私を紹介する。
私が高瀬さんの彼女? なるほど、それなら私と進藤さんが顔見知りでも納得がいく。それにしても高瀬さんの頭の回転の速さには尊敬するの一言だ。
「まぁそうでしたの。初めまして、有栖川 美玲と申します」
美玲さんはにこやかに挨拶してきた。
「は、初めまして。水沢 明日香です」
私は少し引きつった笑顔で挨拶を返した。
「高……ナオ君、そろそろ……」
私はとにかくこの場から離れたい一心で、高瀬さんの服の袖をツンと掴み彼女のフリして名前呼びした。
突然の名前呼びに高瀬さんは一瞬驚いた表情をしたが、何故だかクスッと笑い私の頭にポンッと手を乗せた。
「そうだね。ではデート中ですので、これで失礼します」
私と高瀬さんはペコっと頭を下げて美術館を後にした。そして車に戻る。
「高瀬さんもすぐに仕事モードのスイッチが入るんですね」
「スイッチが入るきっかけは名前の呼び方かな。ケイスケは仕事モードの時には『高瀬』って呼ぶから、そう呼ばれたら仕事かと思って俺も『社長』って返すようにしているよ」
「へぇ」
「それより、もうナオ君って呼んでくれないの? 明日香ちゃん」
「えぇ!? あ、あれはお芝居で……つい」
「せっかくだからこのままデートしようか? 今日一日、俺の彼女やってよ」
高瀬さんがにっこりしながら私の返事を待つ。私の頭の中には進藤さんと美玲さんの姿が映し出された。そして胸の奥がキュッと締め付けられてるみたいになった。
「……良いですよ。ホントに今日だけですからね」
「ありがとう。じゃあまず映画でも見に行く?」
「良いですね、行きましょう」
行き先が決まると、高瀬さんは車のエンジンをかけて出発させた。
「あ、そうだ。今日はナオ君、明日香ちゃんって呼び合おう。そして敬語禁止ね。OK?」
「えっと分かりました……じゃなくて、分かった」
私はすっかり高瀬さんのペースに巻き込まれていた。でもデートなんて久しぶりだし、私は今日を楽しむ事にした。
「映画どれ見ようか?明日香ちゃん何か見たいのある?」
「う~ん」
私達は映画館へ着き、見る映画を選んでいた。恋愛映画見たいけど、高瀬さんはアクション系とか好きそうなイメージ……悩むなぁ。
「俺さ、これ見たいんだけど」
私が迷っていると、高瀬さんは少し照れたように指をさした。高瀬さんが選んだのは意外にも恋愛映画だった。
「私に合わせてくれてる?」
「俺好きなんだ、恋愛系」
恥ずかしそうにそう言う高瀬さんが何だか可愛く見えた。もしかして、私が今使わせてもらっている部屋にあった恋愛系のブルーレイって高瀬さんのかも。だとしたら、本当に恋愛系が好きなんだな。
「私も恋愛系が見たかったからこれにしよっか」
見る映画も決まり、二人でラブストーリーを堪能する。薄暗い館内、大きなスクリーンに映し出されるラブストーリー。
ドキドキしながらスクリーンを見ていると、隣に座っている高瀬さんが私の手を握りしめてきた。
私は慌てて高瀬さんの方を向く。
「恋人っぽいでしょ?」
恋人繋ぎをしながら、高瀬さんは私の耳元で囁いた。
私は握られた手にドキドキしてしまい、映画にはあまり集中出来なかった。
一瞬でその場の空気を読んだのか、仕事モードの進藤さんを前に高瀬さんも仕事モードのスイッチが入った。久しぶりに社長と秘書の会話を聞いた気がする。
「それに有栖川財閥の美玲様も……ご無沙汰しております。今日は美術館でデートですか?」
高瀬さんは進藤さんの横にいる女性に深々とお辞儀をする。有栖川財閥って、それじゃあ彼女が進藤さんの婚約者……。
私は彼女をチラッと見る。艶のあるふんわりとした黒髪、小顔に大きな瞳……とにかく美人という言葉がぴったりくる。
そして何より、圧倒的なオーラで存在感が半端ない。進藤さんと並んでいてもとてもお似合いだ。
私は思わず彼女から目を逸らした。
「高瀬さんお久しぶりですね。ふふ、様付けはしなくていいですよ。今日はお祖父様の付き添いで進藤さんと美術館に参りました」
なんて品のある微笑み方……彼女が微笑むと背景に花が飛んでるみたい。
「ねぇ進藤さん。そちらの女性はどなたかしら?水沢さんと仰ってましたけど」
彼女が私の方を見て尋ねる。彼女は気づいてないが、私達三人の間にピシッと異様な空気が流れた。
まさか住み込みで仕事しているとは言えないし、ましては私は会社の人間でもない。私の存在をどう説明するか、一瞬の間で考えようとする。
「こちらは水沢 明日香さんと言って……僕の彼女です。社長にも先日彼女を紹介したところですよ」
口を開いたのは高瀬さんだった。にっこりして私を紹介する。
私が高瀬さんの彼女? なるほど、それなら私と進藤さんが顔見知りでも納得がいく。それにしても高瀬さんの頭の回転の速さには尊敬するの一言だ。
「まぁそうでしたの。初めまして、有栖川 美玲と申します」
美玲さんはにこやかに挨拶してきた。
「は、初めまして。水沢 明日香です」
私は少し引きつった笑顔で挨拶を返した。
「高……ナオ君、そろそろ……」
私はとにかくこの場から離れたい一心で、高瀬さんの服の袖をツンと掴み彼女のフリして名前呼びした。
突然の名前呼びに高瀬さんは一瞬驚いた表情をしたが、何故だかクスッと笑い私の頭にポンッと手を乗せた。
「そうだね。ではデート中ですので、これで失礼します」
私と高瀬さんはペコっと頭を下げて美術館を後にした。そして車に戻る。
「高瀬さんもすぐに仕事モードのスイッチが入るんですね」
「スイッチが入るきっかけは名前の呼び方かな。ケイスケは仕事モードの時には『高瀬』って呼ぶから、そう呼ばれたら仕事かと思って俺も『社長』って返すようにしているよ」
「へぇ」
「それより、もうナオ君って呼んでくれないの? 明日香ちゃん」
「えぇ!? あ、あれはお芝居で……つい」
「せっかくだからこのままデートしようか? 今日一日、俺の彼女やってよ」
高瀬さんがにっこりしながら私の返事を待つ。私の頭の中には進藤さんと美玲さんの姿が映し出された。そして胸の奥がキュッと締め付けられてるみたいになった。
「……良いですよ。ホントに今日だけですからね」
「ありがとう。じゃあまず映画でも見に行く?」
「良いですね、行きましょう」
行き先が決まると、高瀬さんは車のエンジンをかけて出発させた。
「あ、そうだ。今日はナオ君、明日香ちゃんって呼び合おう。そして敬語禁止ね。OK?」
「えっと分かりました……じゃなくて、分かった」
私はすっかり高瀬さんのペースに巻き込まれていた。でもデートなんて久しぶりだし、私は今日を楽しむ事にした。
「映画どれ見ようか?明日香ちゃん何か見たいのある?」
「う~ん」
私達は映画館へ着き、見る映画を選んでいた。恋愛映画見たいけど、高瀬さんはアクション系とか好きそうなイメージ……悩むなぁ。
「俺さ、これ見たいんだけど」
私が迷っていると、高瀬さんは少し照れたように指をさした。高瀬さんが選んだのは意外にも恋愛映画だった。
「私に合わせてくれてる?」
「俺好きなんだ、恋愛系」
恥ずかしそうにそう言う高瀬さんが何だか可愛く見えた。もしかして、私が今使わせてもらっている部屋にあった恋愛系のブルーレイって高瀬さんのかも。だとしたら、本当に恋愛系が好きなんだな。
「私も恋愛系が見たかったからこれにしよっか」
見る映画も決まり、二人でラブストーリーを堪能する。薄暗い館内、大きなスクリーンに映し出されるラブストーリー。
ドキドキしながらスクリーンを見ていると、隣に座っている高瀬さんが私の手を握りしめてきた。
私は慌てて高瀬さんの方を向く。
「恋人っぽいでしょ?」
恋人繋ぎをしながら、高瀬さんは私の耳元で囁いた。
私は握られた手にドキドキしてしまい、映画にはあまり集中出来なかった。
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