明日は明日の恋をする

彩里 咲華

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進藤さんと高瀬さん

ストーリー19

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 昼食の後、進藤さんが椅子から立ち上がった。

「ナオト、続きするぞ」

「はいはい」

 高瀬さんも重い腰を上げて立ち上がった。私も食べ終わった食器をキッチンへ運び、食洗機にかける。

 一時間くらい経った頃、高瀬さんが疲れきった顔でリビングへやってきた。

「水沢さんゴメン。コーヒー2つお願いしていい?」

「はい、分かりました」

 私は暇つぶしに眺めていた携帯をテーブルに置き、コーヒーを入れる。

「部屋までお持ちしますよ」

「いや、俺が持っていくよ。少しの間、ここでサボらせて」

「何だか疲れきってますね」

「せっかくの休日なのに仕事でトラブルがあってさ、今2人でその処理をしてるんだ。疲れるよ」

「休日にお仕事ですか。大変ですね」

「でも、おかげで水沢さんの手料理食べれたから良しとするよ。コーヒーありがとう」

 入れたコーヒーをトレーに乗せ、高瀬さんはまた進藤さんの部屋へと戻った。

 2人とも大変だなと思いつつも私には手伝う事も出来ないので、本日休暇の私は自分の部屋に戻りゆっくりと過ごす。

 そして気がつくと外は茜色に染まり、夕刻の時を迎えていた。

ーー コンコン

「はぁい」

 部屋をノックする音が聞こえドアを開ける。そこには進藤さんと高瀬さんが立っていた。

「水沢さん、夜は外食でいい?」

「え、でも」

「仕事も片付いたし、ガッツリと肉でも食べようよ」

「……という事だ。さっさと準備をして行くぞ」

「は、はい」

 私は着替えるために一旦部屋のドアを閉める。

「私なんかが一緒に行っていいのかな」

 着ていく服を選びながら思わず呟いた。

「お待たせしました」

 リビングで待っていた2人に声をかける。

「じゃ行こうか」

 先に進藤さんと高瀬さんが靴を履き玄関の外に出ようとした。

「あっしまった。スマートフォン忘れた」

 高瀬さんが声を上げる。

「私、取ってきます」

 まだ靴を履いてなかった私は部屋に戻り、高瀬さんのスマートフォンを取りに行く。ソファーの前のテーブルの上にスマートフォンが置いてあった。

「これですよね?」

 玄関に戻り、スマートフォンを高瀬さんに見せる。

「ありがとう」

「あれ、進藤さんは?」

 玄関には高瀬さん一人だった。取り敢えずスマートフォンを高瀬さんに渡す。

 え!?

高瀬さんはスマートフォンではなく腕をグィッと引き、私はバランスを崩し高瀬さんの胸に引き寄せられた。

「た、高瀬さ……ん……?」

 高瀬さんの顔を見上げた瞬間、私と高瀬さんの唇が重なった。そして何が起きたか頭が追いつかず呆然とする。

「昨日のキスはお酒のせいじゃなかったでしょ?」

 高瀬さんの唇が私の唇から離れると、真っ直ぐな瞳で私を見つめ、そう囁いた。

「ケイスケは先に車の所に行ってるよ。俺らも早く行こうか」

 私は腰が抜けそうになりながらも急いで靴を履き、高瀬さんを警戒しながら進藤さんの待つ駐車場へ向かった。

 それから進藤さんの運転で焼肉を食べに行った。正直、昨日も今日も高瀬さんが何でキスしてきたのか分からず、私はモヤモヤしながら肉を食べ続けた。

 食べ終わると、車で高瀬さんをマンションまで送る。

「ご馳走様。おやすみ~」

 マンションに着くと高瀬さんは車から降り、私達に笑顔で手を振った。

 車内では進藤さんと2人きり……。

 少し沈黙が続いた。

「……今日はお仕事お疲れ様でした」

「……あぁ」

 ……。

 会話が終わってしまった。その後も大した話が出来ないまま、結局マンションに到着した。

 部屋に戻り、お風呂に入る。お風呂上がりにリビングへ行くと、先にお風呂を上がった進藤さんがソファーに座りビールを飲んでいた。

「飲むか?」

「はい、頂きます」

 私に気づいた進藤さんが声をかけてくれた。お言葉に甘えてソファー前の床にペタンと座り、一緒にビールを飲む。

「あー、美味しい」

「高……ナオトと何かあったか?」

 美味しくビールを呑んでいると、進藤さんが突然質問してきた。

「な、何かって……どうしてそんな事を聞くんです?」

 思いがけない質問にビールを吹き出しそうになる。

「いや、珍しくナオトが女と楽しそうにしてたからな」

「高瀬さんとは……何もないですよ」

 ビックリした。高瀬さんとキスしたのがバレたのかと思った。

「あまり夜更かしするなよ」

 そう言って進藤さんはそのまま自分の部屋に戻っていった。 私はコップに入ったビールを一口飲む。

「おやすみなさい」

 進藤さんの部屋の方を見つめながら小さな声で呟いた。
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