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気持ちの変化ー智章sideー
ストーリー15
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そっか、恋ちゃんより早く布団に入ってさっさと寝てしまえばいいんだ。
我ながら名案を思いつき、飲み直していたビールを一気に飲み干して、襖を開けた。
暗い部屋に並んだ布団……予想通り。
よし、寝よう。
いや、その前に少し布団を離したほうがいいかな、と布団を前に考え込んでいる時……
「……さん、智章さん」
ふと我にかえると、いつのまにか目の前に恋ちゃんがいる。ボーっとしていた俺に声をかけていたみたいだ。
でもそれに気づかずビックリして思わずうわっと声を上げ、その拍子に体勢を崩してしまい、目の前にいた恋ちゃんにしがみついてしまった。
もちろん、突然の事で俺を支えきれなかった恋ちゃんもバランスを崩して、結局二人して布団に倒れ込んでしまう。
「ごめん。恋ちゃん大丈夫?」
「……はい、大丈夫です」
怪我がなくて良かった、と思うと同時に現状を把握した。
今、俺は恋ちゃんを押し倒しているような体勢だ。腕を伸ばして覆い被さらないようにしているが、俺のすぐ下には恋ちゃんがいる。
ヤバイ、すぐに退かなきゃと頭では分かっているけど、身体が動かない。
倒れた拍子に浴衣がはだけて、白い肌が露わになっている恋ちゃんから目が離せないのだ。
どうするか。
よく見ると、恋ちゃんの口が動いている。口パク? それとも何か喋ってる?
俺は言葉を聞き取ろうと恋ちゃんの口に耳を近づけた。
次の瞬間、まさかの出来事が起きた。
「恋ちゃ……ん……」
顔を近づけた俺の首に両手を回し、そのまま恋ちゃんからキスをしてきた。
夢でも見ているのか……。
しかし、俺の唇には恋ちゃんの柔らかい唇の感触がしっかりとある。
しばらくしてお互いの唇が離れると、俺は驚きのあまり、思わずパッと起き上がる。
恋ちゃんもゆっくり起き上がり、ニコッとして言葉を発した。
「ごめんなさい。我慢……出来ませんでした」
「我慢?」
酒に酔っているのだろうか。目の前の恋ちゃんがいつもと違う雰囲気に見える。
「私にも人並みの性欲はあるんですよ。魅力ないかもしれませんが……私じゃダメですか?」
その瞬間、俺の中の理性の壁は粉々に砕け散った。
恋ちゃんを抱き寄せて激しめのキスをする。酔った勢いでも後から面倒くさい事になってもいい。
今はただ、恋ちゃんを抱きたい……。
「泣かれても、殴られても、もう俺止まらないから」
それだけ言うと、もう一度恋ちゃんを布団に押し倒す。少し間を置き恋ちゃんの様子を見る。恋ちゃんは何も言わず笑みを浮かべていた。
その表情がまた可愛いくて何度もキスをする。時折漏れる声が刺激的で、俺は完全にスイッチが入った。
そしてこの夜、俺たちは結ばれた……。
襖の隙間から僅かに光が差し込んでくる。
「……朝?」
差し込む光で目を覚ました俺は、ボーっとしたまま天井を見る。
いつもと違う天井。そうか、今は旅行中だった。
そうだ。恋ちゃん……。
隣の布団を見る。そこに恋ちゃんの姿はなかった。
ガバッと布団から起き上がり、襖を開けると、窓の外を眺めている恋ちゃんがいる。
「おはようございます。今お茶入れますね」
俺に気づいた恋ちゃんは、急須にお茶っ葉とお湯を入れてお茶の準備をする。
「……おはよう。ありがとう」
入れてくれたお茶を飲みながら、チラッと恋ちゃんを見る。
……いつも通り。昨日の夜の出来事は夢だったのか?
取り敢えず沈黙にならないよう何か喋らないと。必死に話題を探す。
「そういえばさ、俺って極上の旦那様なの?」
「前に詩織が言ってたやつですか? あれは……智章さんは私にとって理想の人って言ったんですけど、詩織が少し誇張しちゃって」
「あはは、めっちゃ誇張されてるし。でも理想って言ってもらえるのも嬉しいけどね」
お茶を飲み終わると、恋ちゃんは立ち上がり髪の毛をアップで結ぶ。
「露天風呂に入ってきます」
「いってらっしゃい」
入口のドアに手をかけたところで恋ちゃんの動きがピタッと止まった。どうしたのだろう。
「あの、昨日は……ありがとうございました」
俺に背を向けたまま言うと、そのまま部屋を出て行った。
「夢じゃ……なかった」
恋ちゃんが部屋を出た後、俺は畳の上に大の字になった。
あまりにも普通過ぎる恋ちゃんの態度に、昨日の夜の事は俺の妄想じゃないかと不安だったが、ちゃんと現実だった。
「それにしても、いちいち可愛いな……恋ちゃん」
寝転がったまま左腕をおでこに当て、天井を眺めながら日に日に恋ちゃんにハマっていく自分を感じた。
我ながら名案を思いつき、飲み直していたビールを一気に飲み干して、襖を開けた。
暗い部屋に並んだ布団……予想通り。
よし、寝よう。
いや、その前に少し布団を離したほうがいいかな、と布団を前に考え込んでいる時……
「……さん、智章さん」
ふと我にかえると、いつのまにか目の前に恋ちゃんがいる。ボーっとしていた俺に声をかけていたみたいだ。
でもそれに気づかずビックリして思わずうわっと声を上げ、その拍子に体勢を崩してしまい、目の前にいた恋ちゃんにしがみついてしまった。
もちろん、突然の事で俺を支えきれなかった恋ちゃんもバランスを崩して、結局二人して布団に倒れ込んでしまう。
「ごめん。恋ちゃん大丈夫?」
「……はい、大丈夫です」
怪我がなくて良かった、と思うと同時に現状を把握した。
今、俺は恋ちゃんを押し倒しているような体勢だ。腕を伸ばして覆い被さらないようにしているが、俺のすぐ下には恋ちゃんがいる。
ヤバイ、すぐに退かなきゃと頭では分かっているけど、身体が動かない。
倒れた拍子に浴衣がはだけて、白い肌が露わになっている恋ちゃんから目が離せないのだ。
どうするか。
よく見ると、恋ちゃんの口が動いている。口パク? それとも何か喋ってる?
俺は言葉を聞き取ろうと恋ちゃんの口に耳を近づけた。
次の瞬間、まさかの出来事が起きた。
「恋ちゃ……ん……」
顔を近づけた俺の首に両手を回し、そのまま恋ちゃんからキスをしてきた。
夢でも見ているのか……。
しかし、俺の唇には恋ちゃんの柔らかい唇の感触がしっかりとある。
しばらくしてお互いの唇が離れると、俺は驚きのあまり、思わずパッと起き上がる。
恋ちゃんもゆっくり起き上がり、ニコッとして言葉を発した。
「ごめんなさい。我慢……出来ませんでした」
「我慢?」
酒に酔っているのだろうか。目の前の恋ちゃんがいつもと違う雰囲気に見える。
「私にも人並みの性欲はあるんですよ。魅力ないかもしれませんが……私じゃダメですか?」
その瞬間、俺の中の理性の壁は粉々に砕け散った。
恋ちゃんを抱き寄せて激しめのキスをする。酔った勢いでも後から面倒くさい事になってもいい。
今はただ、恋ちゃんを抱きたい……。
「泣かれても、殴られても、もう俺止まらないから」
それだけ言うと、もう一度恋ちゃんを布団に押し倒す。少し間を置き恋ちゃんの様子を見る。恋ちゃんは何も言わず笑みを浮かべていた。
その表情がまた可愛いくて何度もキスをする。時折漏れる声が刺激的で、俺は完全にスイッチが入った。
そしてこの夜、俺たちは結ばれた……。
襖の隙間から僅かに光が差し込んでくる。
「……朝?」
差し込む光で目を覚ました俺は、ボーっとしたまま天井を見る。
いつもと違う天井。そうか、今は旅行中だった。
そうだ。恋ちゃん……。
隣の布団を見る。そこに恋ちゃんの姿はなかった。
ガバッと布団から起き上がり、襖を開けると、窓の外を眺めている恋ちゃんがいる。
「おはようございます。今お茶入れますね」
俺に気づいた恋ちゃんは、急須にお茶っ葉とお湯を入れてお茶の準備をする。
「……おはよう。ありがとう」
入れてくれたお茶を飲みながら、チラッと恋ちゃんを見る。
……いつも通り。昨日の夜の出来事は夢だったのか?
取り敢えず沈黙にならないよう何か喋らないと。必死に話題を探す。
「そういえばさ、俺って極上の旦那様なの?」
「前に詩織が言ってたやつですか? あれは……智章さんは私にとって理想の人って言ったんですけど、詩織が少し誇張しちゃって」
「あはは、めっちゃ誇張されてるし。でも理想って言ってもらえるのも嬉しいけどね」
お茶を飲み終わると、恋ちゃんは立ち上がり髪の毛をアップで結ぶ。
「露天風呂に入ってきます」
「いってらっしゃい」
入口のドアに手をかけたところで恋ちゃんの動きがピタッと止まった。どうしたのだろう。
「あの、昨日は……ありがとうございました」
俺に背を向けたまま言うと、そのまま部屋を出て行った。
「夢じゃ……なかった」
恋ちゃんが部屋を出た後、俺は畳の上に大の字になった。
あまりにも普通過ぎる恋ちゃんの態度に、昨日の夜の事は俺の妄想じゃないかと不安だったが、ちゃんと現実だった。
「それにしても、いちいち可愛いな……恋ちゃん」
寝転がったまま左腕をおでこに当て、天井を眺めながら日に日に恋ちゃんにハマっていく自分を感じた。
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