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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7 ①
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[7]
情緒不安定と評すると、さすがにあれな気はするものの、共同生活も四年目となる同室者は、自分の感情をきっちりコントロールすることに、たぶん、あまり向いていない。
まぁ、本人は、最低限コントロールしているつもりでいるのだろうし、不機嫌や不安をまき散らしているつもりは一切ないのだろうけれど。わかってしまうので、なんというか意味を成していないのだ。
皓太自身、ちょっとばかり感情的な人間が苦手で、「感情的な自分とか無理、恥ずかしい」との自負で律しているところがあるものだから、余計に目についているという可能性はあるのだが。
そういったこちら側の事情をさておいても、顔のわりに気が短く、「言わなくてもいいだろ、それ」みたいなことをぱっと口にしては、あとでひっそりと落ち込むというような。とどのつまり、対人関係に難のあるタイプでもあるのだった。
高等部に入ってからは改善スピードが劇的に上がったと認めるし、頼りになると言ったことも、リップサービスばかりでなく本心だ。だが、自分は、結局、カバーしてやらないといけない相手と思っていたかったのかもしれない。
――でも、俺がなにかしてやらなきゃな、なんて上から思ってたつもりはなかったんだけどな。
つもり、つもり、と言っている時点で、本当につもりでしかなかったのだろうけれど。こう、なんというか、四谷の件に関しては解決して「よかったな」という素直な感想もあるものの、「自分でなんとかするんだな」という不満なのかよくわからない感情が渦巻いているのだった。
――それに、なんていうか、「仲直りした」っていうわりに、挙動不審だし。
そわそわと部屋を出て四谷たちと交流してきたかと思えば、机に向かって課題をするていで、妙にちらちらとこちらを気にしていたりもする。そうして、視線に耐えかねて、「なに?」と問えば、今日にいたるまでほぼ百パーセントの確率で「べつに」、「なんでもない」との小学生のような答えが返ってくるのだった。
「ええ、でも、べつにって言ったらなんだけど、それで高藤が困ることってある?」
「……いや、でも、気になるだろ」
連日、もの言いたげな視線を送られたら。体感として「困っている」と評してもおかしくないだろう唯一を上げたというのに、荻原になにをいまさらとばかりの顔をされてしまった。
放課後の生徒会室で、たまにふたりになるタイミングがあると、こういった話をすることは少なくない。そうして、悲しいかな、こういった顔をされることも。
「それ言ったらさぁ、榛名ちゃんにそんな態度取られるのなんて、それこそ本当に昔からなんじゃないの。あの子、ただでさえ、自分の思ってることとか考えてること言葉にするの苦手なんだから」
衝動的にとんでもないこと言うことはあるのにねぇ、と。いつだったか、自分が正に思っていたことを言われ、皓太は閉口した。そのとおりではある。あるのだけれど。
情緒不安定と評すると、さすがにあれな気はするものの、共同生活も四年目となる同室者は、自分の感情をきっちりコントロールすることに、たぶん、あまり向いていない。
まぁ、本人は、最低限コントロールしているつもりでいるのだろうし、不機嫌や不安をまき散らしているつもりは一切ないのだろうけれど。わかってしまうので、なんというか意味を成していないのだ。
皓太自身、ちょっとばかり感情的な人間が苦手で、「感情的な自分とか無理、恥ずかしい」との自負で律しているところがあるものだから、余計に目についているという可能性はあるのだが。
そういったこちら側の事情をさておいても、顔のわりに気が短く、「言わなくてもいいだろ、それ」みたいなことをぱっと口にしては、あとでひっそりと落ち込むというような。とどのつまり、対人関係に難のあるタイプでもあるのだった。
高等部に入ってからは改善スピードが劇的に上がったと認めるし、頼りになると言ったことも、リップサービスばかりでなく本心だ。だが、自分は、結局、カバーしてやらないといけない相手と思っていたかったのかもしれない。
――でも、俺がなにかしてやらなきゃな、なんて上から思ってたつもりはなかったんだけどな。
つもり、つもり、と言っている時点で、本当につもりでしかなかったのだろうけれど。こう、なんというか、四谷の件に関しては解決して「よかったな」という素直な感想もあるものの、「自分でなんとかするんだな」という不満なのかよくわからない感情が渦巻いているのだった。
――それに、なんていうか、「仲直りした」っていうわりに、挙動不審だし。
そわそわと部屋を出て四谷たちと交流してきたかと思えば、机に向かって課題をするていで、妙にちらちらとこちらを気にしていたりもする。そうして、視線に耐えかねて、「なに?」と問えば、今日にいたるまでほぼ百パーセントの確率で「べつに」、「なんでもない」との小学生のような答えが返ってくるのだった。
「ええ、でも、べつにって言ったらなんだけど、それで高藤が困ることってある?」
「……いや、でも、気になるだろ」
連日、もの言いたげな視線を送られたら。体感として「困っている」と評してもおかしくないだろう唯一を上げたというのに、荻原になにをいまさらとばかりの顔をされてしまった。
放課後の生徒会室で、たまにふたりになるタイミングがあると、こういった話をすることは少なくない。そうして、悲しいかな、こういった顔をされることも。
「それ言ったらさぁ、榛名ちゃんにそんな態度取られるのなんて、それこそ本当に昔からなんじゃないの。あの子、ただでさえ、自分の思ってることとか考えてること言葉にするの苦手なんだから」
衝動的にとんでもないこと言うことはあるのにねぇ、と。いつだったか、自分が正に思っていたことを言われ、皓太は閉口した。そのとおりではある。あるのだけれど。
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