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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4 ①
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[4]
「オメガってみんなそうなの? すぐに周りを取り込んで、味方につけて。本当いいご身分だよね。それがオメガのフェロモンってやつ? 結局、榛名も水城と一緒じゃん」
予想していたより何倍もきつい言葉に、行人は言葉を失ってしまった。賑やかだった昼休みの教室が、しんと静まり返る。クラスメイトの視線が自分と四谷に深々と突き刺さる感覚に、視線がどんどんと足元に落ちていく。
そんなことはないと毅然と言い返すことも、なんでそんなことを言うのかと怒ることもできず、一度外してしまうともう一度目を合わせることもできなかった。
なんで、そんなうちに籠もった態度を取ってしまっているのか自分でもわからなくて、でも、なにを言えばいいのかがわからない。
唯一わかっていることは、自分がまたなにかを間違えて、四谷を苛立たせているということだけだった。
「言いたいことがあるなら言えばいいのにいいのに」
「ちょっと、四谷」
呆れ切った四谷の態度を見かねたらしく、やんわりと岡が宥めにかかる。その声さえも、どうにも居た堪れなかった。一段と呆れた調子で溜息を吐かれ、冷たい指先を握りしめる。
「悪者にするのもうまいんだね。べつにいいけど」
言いすぎだろうというようなことを岡が擁護してくれていることはわかったものの、やはり、なにも言うことはできなかった。
中等部にいたころも、似たようなことを言われたことはある。そのときははっきりと言い返していたはずなのに、今は心が完全に縮こまってしまっているみたいだった。
顔を見ることもできないでいるうちに、四谷が教室を出ていく。いつもだったら、あとを追うはずの岡は、今日はその場を動かなかった。
「気にすることないよ」
躊躇いがちにかけられた慰めに、ぎこちなく頷く。そうすることしかできなかったからだ。促されるまま、自分の席に戻って腰をかけた行人は、小さく息を吐いた。
興味本位の視線を遮るようにすぐ近くに立ったまま、岡が続ける。
「って言っても気にしちゃうだろうけど。今のはどう考えても四谷が悪いと思う」
「でも……」
「榛名は歩み寄ろうとしただけだろ。その前になにがあったとしても、少なくとも教室で取る態度じゃないよ。あれは四谷がひどかった」
断言してもらっても、なにも安心することはできなかった。けれど、もう一度、「でも」と反論をすることは憚られて、曖昧に頷く。
ここで「そんなことはない」というと、ますます擁護してもらえそうで、それが怖かったのだ。
……もう一回、ちゃんと話してみたかっただけなんだけどな。
もし、なにかあるのなら相談してもらいたかったし、そうではなく、やはり自分の言動が原因だったというのなら、自覚して謝りたかった。
「オメガってみんなそうなの? すぐに周りを取り込んで、味方につけて。本当いいご身分だよね。それがオメガのフェロモンってやつ? 結局、榛名も水城と一緒じゃん」
予想していたより何倍もきつい言葉に、行人は言葉を失ってしまった。賑やかだった昼休みの教室が、しんと静まり返る。クラスメイトの視線が自分と四谷に深々と突き刺さる感覚に、視線がどんどんと足元に落ちていく。
そんなことはないと毅然と言い返すことも、なんでそんなことを言うのかと怒ることもできず、一度外してしまうともう一度目を合わせることもできなかった。
なんで、そんなうちに籠もった態度を取ってしまっているのか自分でもわからなくて、でも、なにを言えばいいのかがわからない。
唯一わかっていることは、自分がまたなにかを間違えて、四谷を苛立たせているということだけだった。
「言いたいことがあるなら言えばいいのにいいのに」
「ちょっと、四谷」
呆れ切った四谷の態度を見かねたらしく、やんわりと岡が宥めにかかる。その声さえも、どうにも居た堪れなかった。一段と呆れた調子で溜息を吐かれ、冷たい指先を握りしめる。
「悪者にするのもうまいんだね。べつにいいけど」
言いすぎだろうというようなことを岡が擁護してくれていることはわかったものの、やはり、なにも言うことはできなかった。
中等部にいたころも、似たようなことを言われたことはある。そのときははっきりと言い返していたはずなのに、今は心が完全に縮こまってしまっているみたいだった。
顔を見ることもできないでいるうちに、四谷が教室を出ていく。いつもだったら、あとを追うはずの岡は、今日はその場を動かなかった。
「気にすることないよ」
躊躇いがちにかけられた慰めに、ぎこちなく頷く。そうすることしかできなかったからだ。促されるまま、自分の席に戻って腰をかけた行人は、小さく息を吐いた。
興味本位の視線を遮るようにすぐ近くに立ったまま、岡が続ける。
「って言っても気にしちゃうだろうけど。今のはどう考えても四谷が悪いと思う」
「でも……」
「榛名は歩み寄ろうとしただけだろ。その前になにがあったとしても、少なくとも教室で取る態度じゃないよ。あれは四谷がひどかった」
断言してもらっても、なにも安心することはできなかった。けれど、もう一度、「でも」と反論をすることは憚られて、曖昧に頷く。
ここで「そんなことはない」というと、ますます擁護してもらえそうで、それが怖かったのだ。
……もう一回、ちゃんと話してみたかっただけなんだけどな。
もし、なにかあるのなら相談してもらいたかったし、そうではなく、やはり自分の言動が原因だったというのなら、自覚して謝りたかった。
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