パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15 ③

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 榛名みたいな驚き方はしてくれるなよ、と苦笑されて、思わずむっと眉間が寄る。

「このあいだ、様子見に行ってくれたのは助かったけど、必要以上に行人のこと怖がらせただろ」
「あいかわらず人聞きの悪いやつだな。榛名からなにか聞いたのか?」
「根掘り葉掘り聞くつもりはなかったし、聞いてないけど、『茅野さんがちょっと……』って言葉濁してたから」

 想像がつくと言えば、また少し茅野が笑った。その視線が階段のほうに動く。

「最近は、随分と楽しそうにしているだろう。それ自体は俺も歓迎してはいるんだが、そういうときほど危機感が薄くなりやすいからな」
「それは、まぁ、そうだろうけど」
「べつに、おまえに甘やかすなと言ってるわけじゃない。締めるところは俺が締めるというだけだから、そのまま好きにしろ」

 うちの寮生の問題だからな、とあっけらかんと請け負うので、しかたなく成瀬は表情をゆるめた。

「見てきたわけじゃないけど、一年生の談話室から、けっこう声が聞こえてて」
「あぁ、なかなか和気あいあいとやっているだろう。それなりに順調らしいぞ」
「うん。なんか、参加してる子は楽しそうで、ちょっと和んだ」

 そう笑って、続ける。

「ほら、あの子たち入ってきたから、あんまり落ち着いてなかっただろ、ここ」

 櫻寮が、という話ではなく、学園全体が、ではあるのだが。
 多少の申し訳なさは感じているとこぼすと、タイミングというものもあるからな、と淡々と茅野は応じた。

「そういう意味では、高藤がやる気になったことも良いタイミングだったと思うが。最低限、はじめのレールはこちらで引いてやれることも含めて」
「……まぁ、そうだよな」
「そのあとのことは、自分たちでどうとでもするだろうし、するべきだろう」

 そうだよな、と同じ相槌を繰り返すと、茅野が笑った。

「なんだ、寂しいのか」
「……」
「あいかわらず甘やかすところは甘やかしているが、それでも、最近はようやく少し距離を取っているように見えていたんだが」
「しかたないだろ」

 ほかにどうとも言えず、成瀬もそう苦笑を返した。
 ずっと自分の手元に置いて守っておくことはできないのだ。そうであれば、適切なところで離すしかない。
 半年後には、自分はここにはいないのだから。最近は、改めてそう言い聞かせている。
 寂しい思いをさせているようで、行人には悪いことをしたと思っているけれど。

 ――でも、まぁ、それも、ああやって同級生と交流してるうちに、そっちに重きが移っていくだろうし。

「そのくらいは、最後にしておいてやらないと。この半年、いろいろ中途半端だったしな」
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