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第238話 第4ダンジョン 110層ボス戦
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俺達は110層のボス部屋前でレジャーシートを広げ、食事休憩を始めた。
ちなみにボス部屋前は魔物が発生しない安全エリアなので、ここで休憩するのは冒険者あるあるだ。
また、ダンジョン内で仲間がやられたり遭難したときはボス部屋前を目指せと言われている。
何故ならボス戦に挑む冒険者パーティに同行させてもらい、ボス部屋奥の記録の扉から地上に帰るためだ。
冒険者は死と隣り合わせの日常を送っているため、同業者同士助け合う者がほとんどだ。
ヴォルガノフのような例外もいるが、基本的には温かみのある集団である。
「ご馳走様でした。」
「今日も美味かったな!!」
「力がみなぎってくる気がするよ~!!!」
「そうだな。…っ!?」
ボス部屋前に到着するまでに前衛2人は何度もソードスキルを行使していたので、TP残量がボス戦に影響しないか”鑑定”で確認した。
するとTP残量はTP回復薬を飲んだので回復していたが、驚いたのは底ではない。
2人のステータスウィンドウ、特に全ステータス値に(+5)というバフ表記がされていたのだ。
「どうしたのです?」
「…ステータス値にプラス効果が付いてる。」
「どういうことだ?」
「多分ソフィアの弁当を食べて一時的なバフ効果が付与された…んだと思う。」
「そんなことあるんですか!?」
「俺もそんな事例は聞いたことないが…スキル構成の効果だろうな。」
アップデートで条件が緩和されたが、”片手剣”と”両手剣”の両方がLv.10に到達すると”二刀流”スキルが発現するという感じではないかと睨んでいる。
今回の場合は”料理”と何らかのスキルが条件を達成したことで発現したのかもしれない。
帰ったら詳しく調べてみることにしよう。
「…何はともあれ今はボス戦が先だ。準備はいいな?」
「おう!!」
「それじゃあ…開けるぞ。」
ゴゴゴゴゴと黒く塗られた重い扉を開けると、今回は強烈な獣臭が漂うようなことはなかった。
むしろほんの少しだけだがスイーツのような甘い香りがする。
薄暗いボス部屋内に入ると自動で扉が閉まり、100層と同じくパッ!と周囲の松明に灯りがついた。
目の前に現れたのは縦30m、横10mはあるであろう巨大な蜂の巣だった。
「でっか!!蜂蜜取り放題じゃねーか!!」
「蜂蜜持ち帰ってソフィアにスイーツ作ってもらおうよ~!!」
「賛成なのです!!!」
そう、ここ110層のボスは蜜蜂の魔物であるハニービー系だ。
”魔物探知”と”鑑定”を駆使してみると、ハニービーの上位種であるCランク魔物のソルジャービー、Aランク魔物のクイーンビーの群れがボスであるようだ。
俺達が侵入したことに気付いたのか、巣の中でブンブンと鳥肌が立つような無数の羽音が聞こえてくる。
本来なら敵が固まっている今、両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”で巣ごと殲滅するのがセオリーだ。
しかし4人の目的は蜂蜜を手に入れることなので、それは許されない。
『今までで1番大変なボス戦になりそうだな…』
ダンジョンのボスは例え誕生後に住処を作ったとしても、ダンジョンはそれをボスの一部と見なす。
つまり、ボスが絶命すれば住処も同時に消滅してしまうのだ。
そのためボスを倒してからゆっくり採取することはできない。
それなら素材を集められないのでは思うが、実はこれには抜け道がある。
それは、ボスを倒す前に”アイテムボックス”など何らかの異空間に保存することである。
ダンジョン内の空間から隔離することで消滅対象から除外できるのだ。
これは爪や牙などの魔物素材も同様である。
例えば第103ダンジョンの50層ボスであるミスリルゴーレム戦では、全員がピッケルを装備している。
相手のHP管理をしつつミスリルを採掘して”アイテムボックス”に収納し、トドメを刺すのだ。
「蜂蜜採取はイザベルに一任する!!その鎧なら針は通さないだろうが、一応”結界展開の石”を展開し続けておけ。」
「了解なのです!」
俺の”アイテムボックス”から”結界展開の石”6つと採取した蜂蜜を入れる瓶10個を取り出し、イザベルの”アイテムボックス”に収納した。
瓶はこうなることを予想し、今朝の早朝訓練帰りに蜂蜜採取用で買ってきたものである。
「俺達はクイーンビー以外を殲滅するぞ!!特にイザベルに攻撃する奴を優先しろ!!」
「おう!!」
「分かりました!!」
「それじゃあ行動開始!!!!」
イザベルが巣に突っ込むと同時に、巣から無数のソルジャービーが出てきた。
俺達は巣を傷つけないように立ち回りつつソルジャービーを殲滅する。
何匹ものソルジャービーがイザベルを刺して絶命していくが、魔道具による結界は1本も針を通さない。
『…めちゃくちゃ経験値が美味いな!!蜂蜜も手に入るし…ソフィアのレベリングがてらここを周回するのも悪くないかもな!!』
そんなことを考えながら攻撃していると、もはやブンブンという羽音が聞こえなくなってきた。
俺とクレアが”ノヴァディザスター”で範囲攻撃をし、アイリスとスーが斬撃から逃れたソルジャービーを全て仕留めるという最高効率を誇っているからだ。
それから数十分後。
蜂の巣からドォン!!という轟音が響くと同時に穴が空き、そこから何かが出てきた。
”探知”の反応によるとそれはイザベルなのだが、身体を覆う結界に大量の針と蜂蜜が付着しているため全然分からないのだ。
「採取完了したのです!!!」
「よくやった!!そこから離れろ!!」
クレアと目を合わせて共に頷き、イザベルが離れたところで巣目掛けて同時に”ノヴァディザスター”を行使した。
飛翔する無数の斬撃は中にいるクイーンビーごと粉々になるまで切り刻み、靄となって消えた。
地面には闇色の魔石が大量に落ちており、それらはまるで夜空のように美しかった。
「さて…魔石を全部回収して111層に向かうぞ。」
ちなみにボス部屋前は魔物が発生しない安全エリアなので、ここで休憩するのは冒険者あるあるだ。
また、ダンジョン内で仲間がやられたり遭難したときはボス部屋前を目指せと言われている。
何故ならボス戦に挑む冒険者パーティに同行させてもらい、ボス部屋奥の記録の扉から地上に帰るためだ。
冒険者は死と隣り合わせの日常を送っているため、同業者同士助け合う者がほとんどだ。
ヴォルガノフのような例外もいるが、基本的には温かみのある集団である。
「ご馳走様でした。」
「今日も美味かったな!!」
「力がみなぎってくる気がするよ~!!!」
「そうだな。…っ!?」
ボス部屋前に到着するまでに前衛2人は何度もソードスキルを行使していたので、TP残量がボス戦に影響しないか”鑑定”で確認した。
するとTP残量はTP回復薬を飲んだので回復していたが、驚いたのは底ではない。
2人のステータスウィンドウ、特に全ステータス値に(+5)というバフ表記がされていたのだ。
「どうしたのです?」
「…ステータス値にプラス効果が付いてる。」
「どういうことだ?」
「多分ソフィアの弁当を食べて一時的なバフ効果が付与された…んだと思う。」
「そんなことあるんですか!?」
「俺もそんな事例は聞いたことないが…スキル構成の効果だろうな。」
アップデートで条件が緩和されたが、”片手剣”と”両手剣”の両方がLv.10に到達すると”二刀流”スキルが発現するという感じではないかと睨んでいる。
今回の場合は”料理”と何らかのスキルが条件を達成したことで発現したのかもしれない。
帰ったら詳しく調べてみることにしよう。
「…何はともあれ今はボス戦が先だ。準備はいいな?」
「おう!!」
「それじゃあ…開けるぞ。」
ゴゴゴゴゴと黒く塗られた重い扉を開けると、今回は強烈な獣臭が漂うようなことはなかった。
むしろほんの少しだけだがスイーツのような甘い香りがする。
薄暗いボス部屋内に入ると自動で扉が閉まり、100層と同じくパッ!と周囲の松明に灯りがついた。
目の前に現れたのは縦30m、横10mはあるであろう巨大な蜂の巣だった。
「でっか!!蜂蜜取り放題じゃねーか!!」
「蜂蜜持ち帰ってソフィアにスイーツ作ってもらおうよ~!!」
「賛成なのです!!!」
そう、ここ110層のボスは蜜蜂の魔物であるハニービー系だ。
”魔物探知”と”鑑定”を駆使してみると、ハニービーの上位種であるCランク魔物のソルジャービー、Aランク魔物のクイーンビーの群れがボスであるようだ。
俺達が侵入したことに気付いたのか、巣の中でブンブンと鳥肌が立つような無数の羽音が聞こえてくる。
本来なら敵が固まっている今、両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”で巣ごと殲滅するのがセオリーだ。
しかし4人の目的は蜂蜜を手に入れることなので、それは許されない。
『今までで1番大変なボス戦になりそうだな…』
ダンジョンのボスは例え誕生後に住処を作ったとしても、ダンジョンはそれをボスの一部と見なす。
つまり、ボスが絶命すれば住処も同時に消滅してしまうのだ。
そのためボスを倒してからゆっくり採取することはできない。
それなら素材を集められないのでは思うが、実はこれには抜け道がある。
それは、ボスを倒す前に”アイテムボックス”など何らかの異空間に保存することである。
ダンジョン内の空間から隔離することで消滅対象から除外できるのだ。
これは爪や牙などの魔物素材も同様である。
例えば第103ダンジョンの50層ボスであるミスリルゴーレム戦では、全員がピッケルを装備している。
相手のHP管理をしつつミスリルを採掘して”アイテムボックス”に収納し、トドメを刺すのだ。
「蜂蜜採取はイザベルに一任する!!その鎧なら針は通さないだろうが、一応”結界展開の石”を展開し続けておけ。」
「了解なのです!」
俺の”アイテムボックス”から”結界展開の石”6つと採取した蜂蜜を入れる瓶10個を取り出し、イザベルの”アイテムボックス”に収納した。
瓶はこうなることを予想し、今朝の早朝訓練帰りに蜂蜜採取用で買ってきたものである。
「俺達はクイーンビー以外を殲滅するぞ!!特にイザベルに攻撃する奴を優先しろ!!」
「おう!!」
「分かりました!!」
「それじゃあ行動開始!!!!」
イザベルが巣に突っ込むと同時に、巣から無数のソルジャービーが出てきた。
俺達は巣を傷つけないように立ち回りつつソルジャービーを殲滅する。
何匹ものソルジャービーがイザベルを刺して絶命していくが、魔道具による結界は1本も針を通さない。
『…めちゃくちゃ経験値が美味いな!!蜂蜜も手に入るし…ソフィアのレベリングがてらここを周回するのも悪くないかもな!!』
そんなことを考えながら攻撃していると、もはやブンブンという羽音が聞こえなくなってきた。
俺とクレアが”ノヴァディザスター”で範囲攻撃をし、アイリスとスーが斬撃から逃れたソルジャービーを全て仕留めるという最高効率を誇っているからだ。
それから数十分後。
蜂の巣からドォン!!という轟音が響くと同時に穴が空き、そこから何かが出てきた。
”探知”の反応によるとそれはイザベルなのだが、身体を覆う結界に大量の針と蜂蜜が付着しているため全然分からないのだ。
「採取完了したのです!!!」
「よくやった!!そこから離れろ!!」
クレアと目を合わせて共に頷き、イザベルが離れたところで巣目掛けて同時に”ノヴァディザスター”を行使した。
飛翔する無数の斬撃は中にいるクイーンビーごと粉々になるまで切り刻み、靄となって消えた。
地面には闇色の魔石が大量に落ちており、それらはまるで夜空のように美しかった。
「さて…魔石を全部回収して111層に向かうぞ。」
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