234 / 246
第234話 第4ダンジョン 90層ボス戦
しおりを挟む
ゴゴゴゴゴという鈍い音を立てながら装飾が施されたボス部屋の扉を開けた。
そこは今まで同様全方位の壁に松明が掛けられており、それにより眩く照らされた少し広めの空間だった。
しかし、松明の炎が赤色ではなく青色をしていて何とも不気味な感じだ。
『新遺跡のドラゴンを彷彿とさせ…っ!!』
中に入ると、部屋の奥にある1つの物陰から凄まじい闘気のようなものが感じられた。
そこにいたのは体長2mほどのコボルドで、騎士団のティーナような純白の全身鎧と槍を装備していた。
そして鎧の周囲に青白いオーラのようなものを纏っている。
『事前情報と違うな…』
ギルド情報によれば、90層のボスはコボルド種の最高位存在にしてSランク魔物のコボルドデストロイヤーであるはずだ。
コボルドデストロイヤーはその名の通り破壊の限りを尽くす暴虐な存在で、漆黒の鎧を装備し赤黒いオーラを纏っているという。
しかし、今目の前にいるコボルドは情報とは真逆である。
『”鑑定”結果は…っ!!Sランク魔物コボルドヒーローだと!?』
コボルドヒーロー、その名の通りコボルド種における英雄である。
侵略者からコボルド種を守るためにどんな敵でも倒す存在だ。
ちなみに魔物学的にはコボルドデストロイヤーの亜種と分類されている。
「おいアルフレッド、あのオーラはなんだ!?」
「俺達で言うところの”闘気操術”だな…」
そう、何も”闘気操術”を使えるのは人族だけではない。
人族はTPを纏うことで、魔物は生命と力の根源である魔素を纏うことで己を強化しているのだ。
魔素を纏うことで出来る魔物は最低でもAランク冒険者と同等以上のステータス値を誇るという。
この個体のステータス値はスーとほとんど互角である。
唯一異なる点といえば、HPは敵が上回りTPはスーが上回っていることくらいだ。
武器や防具の性能差はあまり無いようなので、槍の技量差で決着が着くだろう。
「スー、1人で大丈夫か?」
「もっちろん~!」
「気を付けてくださいね。」
「うんっ!」
俺達4人は壁際まで下がり、スーはコボルドヒーローが対峙した。
するとコボルドヒーローは右手を差し出し、来いよと言わんばかりに手をくいっとして挑発した。
「いっくよ~!!!!!」
スーは最初から全力で”闘気操術”を行使し、まさに音速を超えんとするほどの速度で距離を詰めた。
そして間合いに入るや否や、槍Lv.8“テンペストスピア“を行使して強力な7撃を放った。
それもシステムアシスト軌道ではなく、自身で判断した箇所目掛けて攻撃している。
対するコボルドヒーローはその場で槍Lv.7”ダンシングスピア”を行使し、攻撃を回避またはいなしつつ反撃を狙っているようだ。
最初の2撃を最小限の動きで回避すると、続く3撃もいなして6撃目が来る前にスーの右横腹目掛けて突きを放った。
まさに驚くべき技量である。
だが、スーはその人並外れた動体視力で予備動作を見て反撃を感知していたようだ。
6撃目を放つ前に”テンペストスピア”を強制停止し、さらに”ダンシングスピア”にスキルチェインして迎撃態勢を取っていた。
スーの方も流石というべきか、コボルドヒーローに負けず劣らずの技量である。
「…っ!!まじかよ!」
コボルドヒーローの攻撃を回避しつつ一突きまたは攻撃をパリィしてできた隙へ一突きで決着すると思っていたのだが、予想は裏切られた。
コボルドヒーローはスーが即座に迎撃態勢を取ったことに気付き、攻撃の手を止めたのだ。
お互いに距離を取ると、スーとコボルドヒーローは口元に笑みを浮かべた。
今の攻防で息が上がったらしく、ボス部屋にはコボルドヒーローの乱れた呼吸だけが響いた。
その静寂を先に破ったのはコボルドヒーローだった。
槍Lv.6“ジェットスピア“を行使し、一瞬で間合いを詰めて強力な1撃を放った。
その攻撃は突風を引き起こすほど早く、常人では目で追えないほど早かった。
だが、スーは何やら残念そうな表情で溜め息をついていた。
いつも模擬戦が終わるときに一瞬だけ垣間見える表情と同じだ。
「…決着か。」
スーはコボルドヒーローの強力な1撃を槍Lv.2”スラッシュスピア”でパリィし、隙が出来たところへ槍Lv.9”フェイタルスピア”を行使した。
その超強力な1撃は純白の鎧を砕き、心臓部を貫いた。
大量にあったHPは1撃で8割以上削り取られ、コボルドヒーローは地面に倒れた。
そして満足げな表情で笑うと、出血による継続ダメージで魔石を残して靄になって消えた。
「終わったよ~」
「手強かったですね。」
「相手の最後の攻撃、オレにはパリィ出来そうもなかったぜ…」
「そうかな~?本気のアイリスくらいの早さだったよ~?」
「そ、それが難しいってことなのです。」
今まで数えきれないほどの魔物を倒してきたが、過去1番の技量の持ち主だったと断言できる。
もう少し体力があり、かつ最後に決着を急がなければもう少し善戦できていただろう。
是非4人と一緒に模擬戦をして鍛えたいと思う相手だった。
『…魔物だけど惜しい人材だったな。』
そこは今まで同様全方位の壁に松明が掛けられており、それにより眩く照らされた少し広めの空間だった。
しかし、松明の炎が赤色ではなく青色をしていて何とも不気味な感じだ。
『新遺跡のドラゴンを彷彿とさせ…っ!!』
中に入ると、部屋の奥にある1つの物陰から凄まじい闘気のようなものが感じられた。
そこにいたのは体長2mほどのコボルドで、騎士団のティーナような純白の全身鎧と槍を装備していた。
そして鎧の周囲に青白いオーラのようなものを纏っている。
『事前情報と違うな…』
ギルド情報によれば、90層のボスはコボルド種の最高位存在にしてSランク魔物のコボルドデストロイヤーであるはずだ。
コボルドデストロイヤーはその名の通り破壊の限りを尽くす暴虐な存在で、漆黒の鎧を装備し赤黒いオーラを纏っているという。
しかし、今目の前にいるコボルドは情報とは真逆である。
『”鑑定”結果は…っ!!Sランク魔物コボルドヒーローだと!?』
コボルドヒーロー、その名の通りコボルド種における英雄である。
侵略者からコボルド種を守るためにどんな敵でも倒す存在だ。
ちなみに魔物学的にはコボルドデストロイヤーの亜種と分類されている。
「おいアルフレッド、あのオーラはなんだ!?」
「俺達で言うところの”闘気操術”だな…」
そう、何も”闘気操術”を使えるのは人族だけではない。
人族はTPを纏うことで、魔物は生命と力の根源である魔素を纏うことで己を強化しているのだ。
魔素を纏うことで出来る魔物は最低でもAランク冒険者と同等以上のステータス値を誇るという。
この個体のステータス値はスーとほとんど互角である。
唯一異なる点といえば、HPは敵が上回りTPはスーが上回っていることくらいだ。
武器や防具の性能差はあまり無いようなので、槍の技量差で決着が着くだろう。
「スー、1人で大丈夫か?」
「もっちろん~!」
「気を付けてくださいね。」
「うんっ!」
俺達4人は壁際まで下がり、スーはコボルドヒーローが対峙した。
するとコボルドヒーローは右手を差し出し、来いよと言わんばかりに手をくいっとして挑発した。
「いっくよ~!!!!!」
スーは最初から全力で”闘気操術”を行使し、まさに音速を超えんとするほどの速度で距離を詰めた。
そして間合いに入るや否や、槍Lv.8“テンペストスピア“を行使して強力な7撃を放った。
それもシステムアシスト軌道ではなく、自身で判断した箇所目掛けて攻撃している。
対するコボルドヒーローはその場で槍Lv.7”ダンシングスピア”を行使し、攻撃を回避またはいなしつつ反撃を狙っているようだ。
最初の2撃を最小限の動きで回避すると、続く3撃もいなして6撃目が来る前にスーの右横腹目掛けて突きを放った。
まさに驚くべき技量である。
だが、スーはその人並外れた動体視力で予備動作を見て反撃を感知していたようだ。
6撃目を放つ前に”テンペストスピア”を強制停止し、さらに”ダンシングスピア”にスキルチェインして迎撃態勢を取っていた。
スーの方も流石というべきか、コボルドヒーローに負けず劣らずの技量である。
「…っ!!まじかよ!」
コボルドヒーローの攻撃を回避しつつ一突きまたは攻撃をパリィしてできた隙へ一突きで決着すると思っていたのだが、予想は裏切られた。
コボルドヒーローはスーが即座に迎撃態勢を取ったことに気付き、攻撃の手を止めたのだ。
お互いに距離を取ると、スーとコボルドヒーローは口元に笑みを浮かべた。
今の攻防で息が上がったらしく、ボス部屋にはコボルドヒーローの乱れた呼吸だけが響いた。
その静寂を先に破ったのはコボルドヒーローだった。
槍Lv.6“ジェットスピア“を行使し、一瞬で間合いを詰めて強力な1撃を放った。
その攻撃は突風を引き起こすほど早く、常人では目で追えないほど早かった。
だが、スーは何やら残念そうな表情で溜め息をついていた。
いつも模擬戦が終わるときに一瞬だけ垣間見える表情と同じだ。
「…決着か。」
スーはコボルドヒーローの強力な1撃を槍Lv.2”スラッシュスピア”でパリィし、隙が出来たところへ槍Lv.9”フェイタルスピア”を行使した。
その超強力な1撃は純白の鎧を砕き、心臓部を貫いた。
大量にあったHPは1撃で8割以上削り取られ、コボルドヒーローは地面に倒れた。
そして満足げな表情で笑うと、出血による継続ダメージで魔石を残して靄になって消えた。
「終わったよ~」
「手強かったですね。」
「相手の最後の攻撃、オレにはパリィ出来そうもなかったぜ…」
「そうかな~?本気のアイリスくらいの早さだったよ~?」
「そ、それが難しいってことなのです。」
今まで数えきれないほどの魔物を倒してきたが、過去1番の技量の持ち主だったと断言できる。
もう少し体力があり、かつ最後に決着を急がなければもう少し善戦できていただろう。
是非4人と一緒に模擬戦をして鍛えたいと思う相手だった。
『…魔物だけど惜しい人材だったな。』
0
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる