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第225話 第18ダンジョン 調査報酬
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調査報告を終えてから数日後。
パーティーハウスに招集の手紙が届き、ソフィアを連れて6人でギルドへ向かった。
ソフィアを連れてきたのは、クレア達に勧められていつの間にか冒険者登録していたからだ。
冒険者ランクはFだが、実力はBランク程度なのでそのうちサポーターとして一緒にダンジョンに潜ることになるだろう。
「久しぶりだな…ギルドカードを受付に出したら俺の部屋に来てくれ…」
「あ、ああ。」
この数週間で筋肉量が減ったのか、ボディービルダー顔負けだった肉体はひと回り小さくなっていた。
その背中はどこか頼りなく、第18ダンジョンの報告で来たときとはまるで別人のようだ。
「パウロ様、体調がすぐれないようですが…」
「今にも倒れそうだよ~?」
「ありがとうお嬢さん達…これが終わったら数日ぶりに寝られるから安心してくれ。」
「数日ぶり…なのです?」
「ギルド職員って大変なんだな。」
「こういうのはたまにだけだ。いつもは楽しい職場だぞ…」
そう言いつつも、パウロの目に全く光が宿っていない。
前世の俺もこんな感じだったのだろうか?
そんなことを考えているうちにギルマス室に着いた。
パウロはテーブルにあった瓶の中身をグイッと飲むと、今まで死んでいた目や表情が回復した。
この世界でエナジードリンクの存在は聞いたことが無い。
瓶を”鑑定”してみると、それは色々な回復薬を混ぜて水で薄めたものだった。
『なるほどな…今度俺も試してみるか。』
「さて…今回は第18ダンジョン階層増加分の報酬についてだ。」
「やっと貰えるのか!?」
「おうよ!冒険者カードは帰りに受付でもらってくれ。」
「やっとAランクか~!!短いようで長かったなぁ~」
「ですがここで足踏みしていられません。私達は最強の冒険者パーティーになるんですから。」
「は、はいなのです!!」
最強の冒険者パーティー、それは個人ランクとパーティーランク共に頂点であるSSSランクに到達することで初めて達成する。
今回の報酬でソフィア以外はどちらもAランクに昇格したが、大変なのはこれからである。
「それでパウロ、他2つの報酬は?」
「もちろん準備できたぞ!」
内ポケットから名刺のようなものを取り出し、テーブルに置いた。
商会や騎士団などと連携して作ったのか、偽造が不可能なほど繊細かつ優雅な装飾が施されている。
「これなに~?」
「大型ダンジョン攻略優先権を証明するカードだ。列に並ばなくても門番にこれを見せれば入れる。」
「おぉ!!!これが!!!」
列に並ぶのは時間と労力の無駄だが、待っている人々を追い越して入場するのは反感を買いそうだ。
仮に不満に思った冒険者が突っかかってきても、これはギルマスが直々に用意したものなのでこちらに理がある。
その時は実力行使で捕らえ、ギルドに提出すれば済む話だ。
「これはアルフレッドが持っておいてください。パーティーリーダーですからね。」
「ああ。大事にしまっておくよ。」
「最後に必要アイテムの無償提供だが…申し訳ない!!流石に全額割引は無理だった!!8割引きで許してくれ…!!」
「ま、まあそうだよな。仕方な…」
「パウロ様、それは契約違反です。」
疲労困憊だったパウロに同情して許そうとしたが、横からソフィアが口を出した。
元々のきっちりとした性格もあるが、パーティー管理者として契約には何十倍も厳しいのだ。
「王国の定めたギルド法に則れば詐欺罪…賠償金の支払い及びギルドマスターの辞任で責任を取るという解釈でよろしいでしょうか?」
「ま、待ってくれソフィアちゃん!!」
「待ちません。これはれっきとした法律違反です。平職員であれば一発で騎士団詰め所行きですよ?」
「お、お詫びと言っては何だがもう1つ報酬を用意したぞ!!」
「なるほど賄賂ですか。王国法に則り賄賂罪も追加ですね。」
「ギルマス、これ以上罪を重ねない方が良いんじゃねーの?」
「クレアちゃんまで!?アルフレッド、お前さんの仲間を何とかしてくれ…」
パウロが今にも泣きだしそうな目でこちらを見てきた。
実際に犯罪であることには変わりないのだが、こういった事例はよくあることだ。
それに必要アイテムの8割引はかなりの好待遇である。
「…もう1つの報酬次第だな。」
「わ、分かった!ギルマスとしての力の見せ所だな!」
今度は腰のポーチに手を入れると、中から双短剣を取り出した。
刀身は一切光がない漆黒で、幾何学模様が刻まれている。
「これは…?」
「この前俺様のところに来た暗殺者が装備していた短剣だ。相当なレア物だと思って個人財産として取っておいたんだ。」
”鑑定”によると名は”共栄の短双剣”。
ランクはG~SSSという曖昧な表記がされており、現在はGランクらしい。
”共成長”という特殊効果を持ち、装備者の成長を速めるとともに武器自らも成長するという。
血を吸って成長する”鬼人剣”と似たような物だろう。
「…悪くないな。これで手を打とう。」
「アルフレッド様がそう仰るのなら。」
「助かったぜ!!報酬受け渡しはこれで終わりだ。やっと寝られるぞー--!!」
「あはは…」
睡眠を邪魔しないようすぐにギルマス室から退出し、受付で冒険者カードを貰ってギルドを出た。
そして”共栄の短双剣”を”アイテムボックス”に収納せず、ソフィアに手渡した。
「よ、よろしいのですか!?」
「ああ。これはソフィアのおかげで手に入ったようなものだしな。それに、ソフィアが装備するのが最適だ。」
「…ありがとうございます。」
この装備はまるで暗殺スキルを鍛えているソフィアのために用意していたかのようだ。
おそらくパウロはこうなることを予期して準備していたと考えられる。
なかなか食えない奴だ。
パーティーハウスに招集の手紙が届き、ソフィアを連れて6人でギルドへ向かった。
ソフィアを連れてきたのは、クレア達に勧められていつの間にか冒険者登録していたからだ。
冒険者ランクはFだが、実力はBランク程度なのでそのうちサポーターとして一緒にダンジョンに潜ることになるだろう。
「久しぶりだな…ギルドカードを受付に出したら俺の部屋に来てくれ…」
「あ、ああ。」
この数週間で筋肉量が減ったのか、ボディービルダー顔負けだった肉体はひと回り小さくなっていた。
その背中はどこか頼りなく、第18ダンジョンの報告で来たときとはまるで別人のようだ。
「パウロ様、体調がすぐれないようですが…」
「今にも倒れそうだよ~?」
「ありがとうお嬢さん達…これが終わったら数日ぶりに寝られるから安心してくれ。」
「数日ぶり…なのです?」
「ギルド職員って大変なんだな。」
「こういうのはたまにだけだ。いつもは楽しい職場だぞ…」
そう言いつつも、パウロの目に全く光が宿っていない。
前世の俺もこんな感じだったのだろうか?
そんなことを考えているうちにギルマス室に着いた。
パウロはテーブルにあった瓶の中身をグイッと飲むと、今まで死んでいた目や表情が回復した。
この世界でエナジードリンクの存在は聞いたことが無い。
瓶を”鑑定”してみると、それは色々な回復薬を混ぜて水で薄めたものだった。
『なるほどな…今度俺も試してみるか。』
「さて…今回は第18ダンジョン階層増加分の報酬についてだ。」
「やっと貰えるのか!?」
「おうよ!冒険者カードは帰りに受付でもらってくれ。」
「やっとAランクか~!!短いようで長かったなぁ~」
「ですがここで足踏みしていられません。私達は最強の冒険者パーティーになるんですから。」
「は、はいなのです!!」
最強の冒険者パーティー、それは個人ランクとパーティーランク共に頂点であるSSSランクに到達することで初めて達成する。
今回の報酬でソフィア以外はどちらもAランクに昇格したが、大変なのはこれからである。
「それでパウロ、他2つの報酬は?」
「もちろん準備できたぞ!」
内ポケットから名刺のようなものを取り出し、テーブルに置いた。
商会や騎士団などと連携して作ったのか、偽造が不可能なほど繊細かつ優雅な装飾が施されている。
「これなに~?」
「大型ダンジョン攻略優先権を証明するカードだ。列に並ばなくても門番にこれを見せれば入れる。」
「おぉ!!!これが!!!」
列に並ぶのは時間と労力の無駄だが、待っている人々を追い越して入場するのは反感を買いそうだ。
仮に不満に思った冒険者が突っかかってきても、これはギルマスが直々に用意したものなのでこちらに理がある。
その時は実力行使で捕らえ、ギルドに提出すれば済む話だ。
「これはアルフレッドが持っておいてください。パーティーリーダーですからね。」
「ああ。大事にしまっておくよ。」
「最後に必要アイテムの無償提供だが…申し訳ない!!流石に全額割引は無理だった!!8割引きで許してくれ…!!」
「ま、まあそうだよな。仕方な…」
「パウロ様、それは契約違反です。」
疲労困憊だったパウロに同情して許そうとしたが、横からソフィアが口を出した。
元々のきっちりとした性格もあるが、パーティー管理者として契約には何十倍も厳しいのだ。
「王国の定めたギルド法に則れば詐欺罪…賠償金の支払い及びギルドマスターの辞任で責任を取るという解釈でよろしいでしょうか?」
「ま、待ってくれソフィアちゃん!!」
「待ちません。これはれっきとした法律違反です。平職員であれば一発で騎士団詰め所行きですよ?」
「お、お詫びと言っては何だがもう1つ報酬を用意したぞ!!」
「なるほど賄賂ですか。王国法に則り賄賂罪も追加ですね。」
「ギルマス、これ以上罪を重ねない方が良いんじゃねーの?」
「クレアちゃんまで!?アルフレッド、お前さんの仲間を何とかしてくれ…」
パウロが今にも泣きだしそうな目でこちらを見てきた。
実際に犯罪であることには変わりないのだが、こういった事例はよくあることだ。
それに必要アイテムの8割引はかなりの好待遇である。
「…もう1つの報酬次第だな。」
「わ、分かった!ギルマスとしての力の見せ所だな!」
今度は腰のポーチに手を入れると、中から双短剣を取り出した。
刀身は一切光がない漆黒で、幾何学模様が刻まれている。
「これは…?」
「この前俺様のところに来た暗殺者が装備していた短剣だ。相当なレア物だと思って個人財産として取っておいたんだ。」
”鑑定”によると名は”共栄の短双剣”。
ランクはG~SSSという曖昧な表記がされており、現在はGランクらしい。
”共成長”という特殊効果を持ち、装備者の成長を速めるとともに武器自らも成長するという。
血を吸って成長する”鬼人剣”と似たような物だろう。
「…悪くないな。これで手を打とう。」
「アルフレッド様がそう仰るのなら。」
「助かったぜ!!報酬受け渡しはこれで終わりだ。やっと寝られるぞー--!!」
「あはは…」
睡眠を邪魔しないようすぐにギルマス室から退出し、受付で冒険者カードを貰ってギルドを出た。
そして”共栄の短双剣”を”アイテムボックス”に収納せず、ソフィアに手渡した。
「よ、よろしいのですか!?」
「ああ。これはソフィアのおかげで手に入ったようなものだしな。それに、ソフィアが装備するのが最適だ。」
「…ありがとうございます。」
この装備はまるで暗殺スキルを鍛えているソフィアのために用意していたかのようだ。
おそらくパウロはこうなることを予期して準備していたと考えられる。
なかなか食えない奴だ。
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