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第169話 新遺跡 歓喜

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「さて…そろそろ向かうぞ。」



「おう!!もう油断はしないぜ!!」



「頼むよ~あたしも巻き込まれそうだったからね~?」



「悪い悪い!!」



気分を落ち着かせ、”魔物探知”と”罠探知”を行使しつつ左の道を進んだ。

罠が異常に多い道を進んだ後なので、それなりに罠はあったが少ないような気がした。



「…しかし妙じゃの。」



「どうしたんですか?」



「大抵の遺跡は魔物に住み着かれているのじゃが…入り口のワイバーン以外何もいないのじゃよ。」



「あのゴーレムが殲滅してるとか?」



「いや、地面に血痕は無かったのじゃ。」



「ほ、本能的にこの遺跡には強い魔物がいると判断して避けていると思うのです。」



「その可能性が高いじゃろうな。」



「でも魔物がいないからあたしは楽でいいかな~」



「オレとしては戦い足りないんだよな…」



「…話してるところ悪い。そこ罠だから気を付けてくれ。」



「分かったわ~」



まるでピクニックに向かうような気軽さで雑談しながら歩いていると、最奥の扉に到着した。

残念ながらこちらの道は途中に隠し部屋がなかった。



『…ん?そういえばどうしてあんな場所に隠し部屋があったんだ?』



建築王があのように中途半端な構造に設計するとは考えにくい。

いや、部屋のクオリティーは同じだったのでおそらく居住者の要望で増設したのだろう。



「アルフレッド?」



「あ、ああ。何でもない。…じゃあ開けるぞ?」



「はい。」



扉の隙間から見える様子はやはり作業場と思しき空間で、中央には鍛冶台とハンマーが置かれていた。

1人先行して”罠探知”と”魔物探知”を行使したが、一切反応はなかった。



「入っていいぞ。」



「あっ!!」



「どうしたクレア?」



「もしかしてここにはオレやアルフレッドが探してた武器防具があるんじゃないか!?」



「そうだな!早速手分けして探索しよう。」



「は~い。」



”構造探知”を行使する前に中央の鍛冶台に置かれているハンマーを見てみると、背面にA・Sと書かれていた。

A・Sの頭文字で思い当たるのはたった1人…



『まさか…エルダードワーフのあのアルベイン・スミスか!?』



鍛冶師泣かせと呼ばれたオリハルコン鉱石の鍛冶に初めて成功した天才鍛冶師の名前だ。

同時に特殊効果を付与する技術を開発及び習得した天才付与師でもある。

だがその技術はあまりに難解で、弟子の誰も習得することができず滅びたという。



『確か150年くらい前に604歳で亡くなったんだよな。…また時期が重なってるな。』



俺の推測が正しければ嫌なオチしか見えないので、考えるのを辞めて”構造探知”を行使した。

予想通り前と左右の絵画の裏に隠し部屋があった。



「こっちは何も見つからなかったわぁ~」



「了解。じゃあまずは右側の隠し部屋に入るぞ。」



中に入ると、そこには右側の通路で見つけたものような装飾品が置かれた棚が並んでいた。

だがこちらの装飾品の方が美しく、先程の10倍くらいの価値はつきそうだ。



『…ん?どうして左部屋の人が右部屋に繋がる通路に隠し部屋を?…まあいいか。』



「どの装飾品の後ろにもB・Gって書いてあります。」



「ビリー・グラムじゃないかしらぁ?」



「…むっ、そういえば彼奴がお礼にこのネックレスを作ってくれたの。」



「えぇ!?」



大きな赤い宝石がついた美しいネックレスを外して背面を見ると、確かにB・Gと刻まれていた。

この人も師範の関係者かと心で溜め息をつきつつ、全て”アイテムボックス”に収納した。



「次は…中央の部屋を最後に取って置いて左の部屋に行こう。」



「む?了解じゃ。」



絵画を収納して中に入ると、そこには研磨された美しい宝石の数々が展示されていた。

ルビーやサファイア、ダイヤモンドのような宝石や魔石と思われるものもあった。

魔石は包含する魔素の純度や生息環境によって色が変化するので、現代でも貴族の間で人気があるのだ。



「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」



「こ、これ全部ボク達のものなのです!?」



「ああ。」



「さ、最高なのです…」



「ちょっ、どうした!?」



興奮が最高潮に達したのか、イザベルは幸せそうな顔で気絶した。

起きてこの宝石の展示を見たら再び気絶しそうな気がするので、さっさと”アイテムボックス”に収納した。

ちなみに収納を終える頃にちょうどイザベルも目を覚まし、探索を続行した。



「さて…最後に中央の隠し部屋だな。」



アルベイン・スミスの作品が並んでいる光景を思い浮かべてゴクリと唾を飲み、深呼吸してから中に入った。

そこには実戦使用するには勿体ないほど美しく輝くものや宝石の付いた剣が商会の展示スペースのようにショーケースに飾られていた。



「おぉぉぉ!!!!!!」



「やったなアルフレッド!!!!」



「ああ!!!」



1つ1つじっくりと、まるで獲物を狩るときの捕食者のように”鑑定”していく。

アダマンタイト製やミスリル製、他には魔物の素材で作られているものも多々あった。

どれも商会や武器屋で売っているものより格段に性能が高いS、SS、SSSランク武器ばかりだった。



俺は当初の期待が裏切られなかったどころか、SSSランクという伝説級の武器に出会えて歓喜した。
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