163 / 246
第163話 新遺跡 進入
しおりを挟む
周囲を警戒しながらじわじわと教会の柱で支えられた場所を進み、扉のない入り口を抜けた。
遺跡の中は天井に吊るされた複数の豪華なシャンデリアに照らされているため、部屋の隅まで見えるほど明るい。
『”魔物探知”も”罠探知”も反応はなしか。…少しこの空間の様子を探ってみるか。』
そこは床も壁も天井も全て真っ白な大理石で作られた荘厳な空間で、あちこちに様々な金細工が施されている。
壁には金の額縁に収まった絵画が何枚も展示されているが、どれも擦れたり破れたりしているため元々のデザインは分からない。
絵画について詳しく知らないが、きっと素晴らしい作品だったのだろう。
「うーむ…」
「師範、どうかしましたか?」
「この絵画に見覚えがあるような気がするのじゃが…消えかけていることもあって思い出せんのじゃよ。」
「えっ…!?」
遺跡は歴史書に記された偉大な人物の墓から無名の技術者が建てた建物など、様々な種類が存在する。
そんな多種多様な遺跡だが、時代背景を把握することで罠を推測できるという共通点がある。
例えば古代文明が滅びた直後の遺跡ならば落とし穴や毒矢が多いらしい。
「そこを何とか頑張ってください!!」
「ふむ…だめじゃな。」
「そうですか…まあそれなら仕方ないですね。」
時代背景が分かるのはアドバンテージだが、俺には“罠探知“のスキルがあるのでそこまで気にしなくてもいいだろう。
部屋の隅から隅まで見て回ったが、この空間の奥に道が続いているということ以外は情報は得られなかった。
金の額縁やシャンデリアは持って帰ることができるようなのだが、光源は取っておきたいので額縁だけ“アイテムボックス“に収納した。
シャンデリアは帰りに収納すればいいだろう。
「さて…次行くぞ。」
再び隊列を組み、周囲を警戒して奥の道へと進んだ。
横5m縦8mほどある半楕円状の通路で、材質は変わらず真っ白な大理石だ。
壁には等間隔で高級感のある黒い縁のランタンがかけられている。
「…全員止まってくれ。罠だ。」
「どこだ?」
「3m先の左壁、7m先の地面右側だな。」
「まさかここまでのものとは思わなかったわ…」
「自慢の弟子なのじゃ!!ほれ、進むのじゃよ!!」
ちなみに壁のはスイッチ式で弓矢が飛んでくる罠、地面のは踏み抜き式で針山に落とされる罠のようだ。
まず右に、次に左に蛇行するように進むことで罠を回避した。
「あと40mで広い空間に出るが…それまでにあと6つあるな。警戒して進むぞ。」
「おう!!」
それからある時は飛び越えて、またある時は魔物の死体で罠を誤作動させて進んだ。
広い空間まであと15mまで迫ったとき、遺跡に入って初めて“魔物探知“に反応があった。
「…全員止まってくれ。」
「ど、どうしたのです?」
「この先の広場に体長10m近くある巨大な魔物がいる。あれは…ゴーレムっぽいな。」
「種類は分かりますか?」
「…すまん。分からない。」
「ふむ…体長が違うから進化個体か特殊個体じゃな。」
ゴーレムは基本的に鉱山や坑道内で鉱石を吸収して誕生する。
鉄鉱山からはアイアンゴーレム、ミスリル鉱山からはミスリルゴーレムといった具合だ。
この遺跡の場合は大理石を吸収した特殊個体、名付けるならマーブルゴーレムといったところだろう。
前世では確か頭に書いてある文字の1つを消せば倒れるといった情報があった気がするが、この世界のゴーレムには文字が書かれていない。
その弱点の代わりと言っては何だが、魔物共通の弱点である核が体表にあるのでそれを破壊すれば倒せる。
だが、そのように倒すと魔石を換金できなくなるのでゴーレム討伐は冒険者に敬遠されている。
他の討伐方法としては、核を残すように削ることでHPを0にすることだ。
だがゴーレムは非常にHPが高いため、この方法もなかなか大変だ。
俺は金に口うるさいので間違いなくこちらの戦法を取るが。
「大理石って壊せるの~?」
「ここの大理石は強化されているみたいじゃから妾と弟子の全力で何とか壊せるといったところじゃろう。」
「じゃあどうすれば…」
「大理石は水と酸に弱い。…ですよね、師範?」
「うむ!!よく覚えておったのじゃ!!」
「水と酸ねぇ…水は今後大事になるかもしれないから取っておいた方がいいわねぇ~」
「酸っぱいやつだよな?ならオレ持ってるぞ!!」
クレアは”アイテムボックス”に手を入れると、次々黄色い楕円形の実を取り出した。
前世のレモンを彷彿とさせる色と形だ。
「おぉ…!!…って、なんで何十個も持ってるんだよ?」
「アルフレッドの食事にこっそり入れていたずらしようと取っておいたんだ!!」
「おいおい…まあ理由はともあれ助かったな!!」
試しにそのレモンらしき果物を1つ切って壁に擦り付けてみると、ジュワジュワと音を立てながら溶けて輝きが無くなり、ただの石のような見た目に変化した。
そこをサリーちゃんが少し強めに殴ってみると、パラパラと大理石の欠片が落ちていった。
何らかの手段で通常の大理石より強度を増したことにより、酸への耐性が下がったというのが師範の見解だ。
「さて…じゃあ作戦を立てるぞ。」
遺跡の中は天井に吊るされた複数の豪華なシャンデリアに照らされているため、部屋の隅まで見えるほど明るい。
『”魔物探知”も”罠探知”も反応はなしか。…少しこの空間の様子を探ってみるか。』
そこは床も壁も天井も全て真っ白な大理石で作られた荘厳な空間で、あちこちに様々な金細工が施されている。
壁には金の額縁に収まった絵画が何枚も展示されているが、どれも擦れたり破れたりしているため元々のデザインは分からない。
絵画について詳しく知らないが、きっと素晴らしい作品だったのだろう。
「うーむ…」
「師範、どうかしましたか?」
「この絵画に見覚えがあるような気がするのじゃが…消えかけていることもあって思い出せんのじゃよ。」
「えっ…!?」
遺跡は歴史書に記された偉大な人物の墓から無名の技術者が建てた建物など、様々な種類が存在する。
そんな多種多様な遺跡だが、時代背景を把握することで罠を推測できるという共通点がある。
例えば古代文明が滅びた直後の遺跡ならば落とし穴や毒矢が多いらしい。
「そこを何とか頑張ってください!!」
「ふむ…だめじゃな。」
「そうですか…まあそれなら仕方ないですね。」
時代背景が分かるのはアドバンテージだが、俺には“罠探知“のスキルがあるのでそこまで気にしなくてもいいだろう。
部屋の隅から隅まで見て回ったが、この空間の奥に道が続いているということ以外は情報は得られなかった。
金の額縁やシャンデリアは持って帰ることができるようなのだが、光源は取っておきたいので額縁だけ“アイテムボックス“に収納した。
シャンデリアは帰りに収納すればいいだろう。
「さて…次行くぞ。」
再び隊列を組み、周囲を警戒して奥の道へと進んだ。
横5m縦8mほどある半楕円状の通路で、材質は変わらず真っ白な大理石だ。
壁には等間隔で高級感のある黒い縁のランタンがかけられている。
「…全員止まってくれ。罠だ。」
「どこだ?」
「3m先の左壁、7m先の地面右側だな。」
「まさかここまでのものとは思わなかったわ…」
「自慢の弟子なのじゃ!!ほれ、進むのじゃよ!!」
ちなみに壁のはスイッチ式で弓矢が飛んでくる罠、地面のは踏み抜き式で針山に落とされる罠のようだ。
まず右に、次に左に蛇行するように進むことで罠を回避した。
「あと40mで広い空間に出るが…それまでにあと6つあるな。警戒して進むぞ。」
「おう!!」
それからある時は飛び越えて、またある時は魔物の死体で罠を誤作動させて進んだ。
広い空間まであと15mまで迫ったとき、遺跡に入って初めて“魔物探知“に反応があった。
「…全員止まってくれ。」
「ど、どうしたのです?」
「この先の広場に体長10m近くある巨大な魔物がいる。あれは…ゴーレムっぽいな。」
「種類は分かりますか?」
「…すまん。分からない。」
「ふむ…体長が違うから進化個体か特殊個体じゃな。」
ゴーレムは基本的に鉱山や坑道内で鉱石を吸収して誕生する。
鉄鉱山からはアイアンゴーレム、ミスリル鉱山からはミスリルゴーレムといった具合だ。
この遺跡の場合は大理石を吸収した特殊個体、名付けるならマーブルゴーレムといったところだろう。
前世では確か頭に書いてある文字の1つを消せば倒れるといった情報があった気がするが、この世界のゴーレムには文字が書かれていない。
その弱点の代わりと言っては何だが、魔物共通の弱点である核が体表にあるのでそれを破壊すれば倒せる。
だが、そのように倒すと魔石を換金できなくなるのでゴーレム討伐は冒険者に敬遠されている。
他の討伐方法としては、核を残すように削ることでHPを0にすることだ。
だがゴーレムは非常にHPが高いため、この方法もなかなか大変だ。
俺は金に口うるさいので間違いなくこちらの戦法を取るが。
「大理石って壊せるの~?」
「ここの大理石は強化されているみたいじゃから妾と弟子の全力で何とか壊せるといったところじゃろう。」
「じゃあどうすれば…」
「大理石は水と酸に弱い。…ですよね、師範?」
「うむ!!よく覚えておったのじゃ!!」
「水と酸ねぇ…水は今後大事になるかもしれないから取っておいた方がいいわねぇ~」
「酸っぱいやつだよな?ならオレ持ってるぞ!!」
クレアは”アイテムボックス”に手を入れると、次々黄色い楕円形の実を取り出した。
前世のレモンを彷彿とさせる色と形だ。
「おぉ…!!…って、なんで何十個も持ってるんだよ?」
「アルフレッドの食事にこっそり入れていたずらしようと取っておいたんだ!!」
「おいおい…まあ理由はともあれ助かったな!!」
試しにそのレモンらしき果物を1つ切って壁に擦り付けてみると、ジュワジュワと音を立てながら溶けて輝きが無くなり、ただの石のような見た目に変化した。
そこをサリーちゃんが少し強めに殴ってみると、パラパラと大理石の欠片が落ちていった。
何らかの手段で通常の大理石より強度を増したことにより、酸への耐性が下がったというのが師範の見解だ。
「さて…じゃあ作戦を立てるぞ。」
0
お気に入りに追加
1,280
あなたにおすすめの小説
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
チート狩り
京谷 榊
ファンタジー
世界、宇宙そのほとんどが解明されていないこの世の中で。魔術、魔法、特殊能力、人外種族、異世界その全てが詰まった広大な宇宙に、ある信念を持った謎だらけの主人公が仲間を連れて行き着く先とは…。
それは、この宇宙にある全ての謎が解き明かされるアドベンチャー物語。
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる