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第159話 新遺跡発見

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それから3日としないうちに梅雨明けした。

今年の梅雨は例年以上に長く続いたため、浸水や土砂災害が多いらしい。

梅雨の間に何か内職を始めようと考えていたのだが、”アイテムボックス”を整理しているだけで終わってしまった。



「今日は…軽く魔物討伐でもするか。」



「よっしゃぁぁ!!!久しぶりだー--!!!」



「でもまだ地面がぬかるんでるよ~?」



「スー、理由を付けて休もうとしていますね?」



「このままだと本当に引きこもりになっちゃうのです。…あの豚領主と同じですよ?」



「そ、それは嫌だな…」



イザベルの言う豚領主とは、スーの故郷の領主のことらしい。

なんでもスーはその豚領主に身体を求められ、殴って故郷を出たとかなんとか。



『…女性は大変だな。』



わいわいがやがやと今日引き受けるクエストの内容を討論しながらギルドへ到着した。

木の扉を開けて中に入ると、何やらサリーちゃんを含むギルド職員が奥で集まって話し込んでいた。



「あら、ちょうどいいところに来たわね~!!」



「どうしたんだ?」



「実はね…迷いの森北部に遺跡が発見されたのよ~!!」



「おぉ…!!」



「遺跡…なのです!!」



「…でも2年半前にエレノア様が地図を作ったはず。」



『…えっ?それは知らないんだが…』



ちょうど俺が迷いの森で1人サバイバルをしていた頃だ。

つまり、師範はその間に迷いの森を飛び回ってマッピングしていたということだ。



「見落としていただけなんじゃない?」



「いや…どうせ土砂崩れで抉れた山の麓とかに見つかったとかだろ?」



「まさにその通りよ~!!」



迷いの森北部は2年半前、師範が俺にはまだ早いと言っていた場所だ。

森林限界を超えるほど標高が高い山が連なっており、その頂上にはドラゴンが住み着くとかなんとか。



「詳しいことはそこでくたばってる黒龍の雷に聞きなさ~い!!」



「ん…?あぁ、いたのか。」



「酷いっすよ兄貴!!」



そこには包帯をぐるぐる巻きにして机に突っ伏している5人組がいた。

漆黒の装備は爪痕のような傷だらけで、一部穴が空いてさえする。



「お前はえーっと…リーダーのダイスだったか?」



「デニスっす!!いい加減覚えてくだせぇ!!」



「…悪い。それで、どんな様子だったんだ?」



「昨日魔物討伐クエストを引き受けて迷いの森北部に行ったんすけど、山の斜面に教会の柱みたいなのが見えたんすよ!!」



「それで私達は調査を始めたんだけどね、遺跡の入り口にワイバーンが居座ってたのよ!!」



「それも何匹もよ!!これはまずいと思って逃げようとしたんだけどね…リーダーが木の枝を踏んだ音でばれて、こうして死にかけたの…」



「何やってんだよデイズ…」



「ほんとすいやせん…それと自分はデニスっす…」



「なるほど…」



ワイバーンはドラゴンの下位互換のような見た目と強さのSランク魔物だ。

ドラゴンに比べて知性が低く、鱗はドラゴンに比べて数十倍にも脆い。

そのため別名はワイバーンが竜、ドラゴンが龍と表記される。

ちなみに彼らのパーティー名にある黒龍とは、古代文明を滅ぼしたとされるSSSランク魔物”エターナルドラゴン”が由来である。



個人的にはαテスターであったフランクリンさんが創造したものを破壊し、ファンタジー世界へと変えるために神様が呼び出した魔物だと踏んでいる。

実際に古代文明を滅ぼした直後からその姿をくらまし、以降誰にも観測されていない。



「ワイバーン…!!オレ達も遺跡行こうぜ!!」



「あたしも賛成~!!」



「待て待て2人とも…もしその遺跡がダンジョンと同様に奥へ行くほど魔物が強くなるとしたら相当高難易度だぞ?」



「入り口の時点でSランク魔物ですからね。奥には災厄と呼ばれるSSSランク魔物もいるかもしれません。」



「りゅ、龍種は財宝を貯め込む性質を持つのです!!」



「おぉ~!!そしたら宝も手に入るな!!」



『イザベルも乗り気なのか!?珍しいな…』



クエストを選ぶ時のように多数決を取ろうにも、3/5が賛成しているので判定は覆らない。

とはいえ、流石に俺達5人での探索は無事に帰れる自信がない。

他の高ランク冒険者パーティーと合同で探索するか、助っ人が欲しいところだ。



「…その話、聞かせてもらったのじゃ!!」



コツコツと音を立ててギルドの2階から階段を下りてくる小さな人影を捕らえた。

聞きなれた声とのじゃ口調…間違いない。



「師範…!!お久しぶりです!!」



「うむ!!遺跡探索、妾が手伝ってやるのじゃ!!」



「おぉ…!!エレノア様がいるなら百人力だぜ!!」



「なのです!!」



「あら~?また休暇かしら~?」



「うっ…わ、妾も探索したいのじゃ!!」



「んもぅ…なら監視役として私も付いていくわ~!!良いわよね?」



「もちろんだよ~!!」



師範を含めて5人とも、こくりと首を縦に振った。



遺跡騒動で処理しなければならない仕事がたくさんあるはずなのだが、俺達はギルドと関係が無いので気にしなくていいだろう。

ただ、残されたギルド職員にご愁傷様ですとだけ伝えておいた。



「ちゃちゃっと終わらせてばばっと帰ってくるのじゃ!!」



「はい!!」



「はいなのです!!」



師範とサリーちゃんの助力を得られたのは非常に心強いのだが、何となく嫌な予感がする。

厄介なことにならなければいいが…
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