上 下
152 / 246

第152話 SSSランク魔道具

しおりを挟む
『それにしても人が多いな。コルセアの殆どの人が集まってるんじゃないか?』



そんなことを思いながら、人混みの頭上を飛翔する。

高さに余裕があるおかげで、地面の人がジャンプしても触れられることはなさそうなのだが…



「…ん?なんか羽音がした気が…」



「誰も飛んでないじゃない。きっと人混みに疲れたのよ。」



「ああ…そうだな…」



『あ、危なかった…』



旅の途中に何度もサバイバルをしたので、音を立てないことがどれほど重要かは身にしみて理解している。

そのため既に“偽装“で音を消すことができるか試したが、派生スキルは習得できなかった。



おそらく俺のイメージ能力が足りないのだろう。

派生スキルは自身のイメージでユニークスキルを行使することで習得する。

姿を変えるくらいは想像できるが、無音にするというのはなかなか難しい。



『理論的には姿を“偽装“できるなら音も“偽装“できるはすなんだけどな…』



これは妄想に過ぎないが、“偽装“を究極まで極めたら世界をも偽装することができるかもしれない。

俺はその可能性を少なからず感じている。



例えばある男が死んだとする。

彼が死んだという事実を“偽装“し、世界に彼はまだ死んでいないと勘違いさせる。

すると、もしかしら男は蘇るのではないだろうか?



『まあ…音すら消せない現状では夢のまた夢か。』



肩を竦めつつ出来るだけ静かに飛翔していると、5階の入り口にたどり着いた。

そして、目の前に広がる光景に唖然とした。



5階の中央広場とでも言うべきスペースに神々しい雰囲気を漂わせる、動物の革でできたと思われる丸盾がショーケースに入れて飾られていたのだ。

そしてそれに群がるように人々が集まっている。



『何というか…ゾンビが人に群がってるみたいだな。』



ちなみに魔道具は道具という言葉がつくので誤解されがちだが、魔法的な特殊効果のついた物全てを指している。

そのため武器や防具も魔道具に含まれている。



階段を抜けて更に少し天井が高くなったので、天井ギリギリで飛翔を続ける。

1人1人の話し声は小さいが、それが何十何百と重なっているのでなかなかの騒音だ。

だが、そのおかげで羽音に気付く様子はない。



俺は空中からひっそりと展示されている魔道具に近づき、“鑑定“を行使した。





名前:アイギスの盾 ランク:SSS



STR 200 VIT 150 DEX 170



特殊効果

1.雷無効

2.石化





『特殊効果付きだ!!…ん?アイギスの盾…?』



アイギスの盾といえば、ギリシア神話に出てきた盾だ。

とはいえ、前世でギリシア神話を少し学んだ程度である上に相当の年月が経っているので詳細は覚えていない。



きっと神様がこの世界を想像する際に、ギリシア神話を参考にしたのだろう。



『ん…?神様とギリシア神話の神様達は同じ神だし、知り合いだったりするのか…?』



今度βテスト調査報告をする際についでに聞いてみよう。

心のメモにそっと書き足しておいた。



『要求ステータスは高いけど…俺なら装備できるな。』



問題は値段だ。

人混みでよく見えないので、目に集中させて“闘気操術“を行使した。



『後日帝都でオークションを行います…か。』



当たり前といえば当たり前だ。

コルセア内で売るより、オークションにかけた方が高く売れるのだから。



Aランクの盾でも金貨50枚を下らない。

となると、SSSランクの盾は一体いくらになるのだろうか。

物好きな王族貴族が欲しがると思われるので、最低でも金貨数百枚まで吊り上がるだろう。



『流石に手出せないな。…まあ盾は滅多に使わないし諦めるか。』



それから商会5階魔道具や戦闘補助アイテムをじっくりと見て回った。

人がほぼ全員アイギスの盾に集まっていたので、周囲の陳列棚は過疎っていた。



半径3mの透明な壁を作る休憩用魔道具や魔物を引き寄せる匂いを発するレベリング用魔道具など、何個か使えそうなものを見つけた。

だが、魔道具は金貨何枚~何十枚と高価なので見るだけで辞めておいた。



『…まあ魔道具は利便性が高くなるだけだからな。無くても影響はないし。』



窓の外を見ると、太陽が沈みかけて綺麗な夕焼け空になっていた。



相変わらずアイギスの盾の周りは人で溢れている。

1人が帰れば1人がやって来て、それが無限に続いているのだ。



『…帰るか。』



行きと同様に人混みの頭上を飛翔し、人がいない場所で“迷彩偽装“を解除して大熊宿に戻った。



「おかえりなさいませ、アルフレッド様。」



「ただいまソフィア。4人は?」



「アルフレッド様の部屋で今日の反省会をひております。」



「またか…分かった。」



何で毎回俺の部屋なんだとため息をつきつつ、部屋に入った。



「おっ、おかえりアルフレッド!!聞いてくれよ!!今日は…」



いつも通りクレアを中心に冒険の活動報告、もとい自慢話を聞き続けた。

最初はやけに長いし少し面倒くさかったのだが、今では習慣となっている。

この話を聞くことで、穏やかな日常に戻る感じがするのだ。



クレアの話が終わり、今度は俺がアイギスの盾について話した。

4人はSSSランク装備が実在したことに驚き、呆然としていた。



無理をしてでも買い落とすべきだという意見が出たが、多数決で買わないことになった。

普段から使うならともかく、このパーティーでは俺とクレアとイザベルが片手剣や片手棍等のサブ武器を装備するときくらいしか盾は使わないというのが大きかった。



「皆様、夕食のお時間です。」



「今行く。」



日々の微かな幸せを噛み締めつつ、眠りについた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...