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第152話 SSSランク魔道具
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『それにしても人が多いな。コルセアの殆どの人が集まってるんじゃないか?』
そんなことを思いながら、人混みの頭上を飛翔する。
高さに余裕があるおかげで、地面の人がジャンプしても触れられることはなさそうなのだが…
「…ん?なんか羽音がした気が…」
「誰も飛んでないじゃない。きっと人混みに疲れたのよ。」
「ああ…そうだな…」
『あ、危なかった…』
旅の途中に何度もサバイバルをしたので、音を立てないことがどれほど重要かは身にしみて理解している。
そのため既に“偽装“で音を消すことができるか試したが、派生スキルは習得できなかった。
おそらく俺のイメージ能力が足りないのだろう。
派生スキルは自身のイメージでユニークスキルを行使することで習得する。
姿を変えるくらいは想像できるが、無音にするというのはなかなか難しい。
『理論的には姿を“偽装“できるなら音も“偽装“できるはすなんだけどな…』
これは妄想に過ぎないが、“偽装“を究極まで極めたら世界をも偽装することができるかもしれない。
俺はその可能性を少なからず感じている。
例えばある男が死んだとする。
彼が死んだという事実を“偽装“し、世界に彼はまだ死んでいないと勘違いさせる。
すると、もしかしら男は蘇るのではないだろうか?
『まあ…音すら消せない現状では夢のまた夢か。』
肩を竦めつつ出来るだけ静かに飛翔していると、5階の入り口にたどり着いた。
そして、目の前に広がる光景に唖然とした。
5階の中央広場とでも言うべきスペースに神々しい雰囲気を漂わせる、動物の革でできたと思われる丸盾がショーケースに入れて飾られていたのだ。
そしてそれに群がるように人々が集まっている。
『何というか…ゾンビが人に群がってるみたいだな。』
ちなみに魔道具は道具という言葉がつくので誤解されがちだが、魔法的な特殊効果のついた物全てを指している。
そのため武器や防具も魔道具に含まれている。
階段を抜けて更に少し天井が高くなったので、天井ギリギリで飛翔を続ける。
1人1人の話し声は小さいが、それが何十何百と重なっているのでなかなかの騒音だ。
だが、そのおかげで羽音に気付く様子はない。
俺は空中からひっそりと展示されている魔道具に近づき、“鑑定“を行使した。
名前:アイギスの盾 ランク:SSS
STR 200 VIT 150 DEX 170
特殊効果
1.雷無効
2.石化
『特殊効果付きだ!!…ん?アイギスの盾…?』
アイギスの盾といえば、ギリシア神話に出てきた盾だ。
とはいえ、前世でギリシア神話を少し学んだ程度である上に相当の年月が経っているので詳細は覚えていない。
きっと神様がこの世界を想像する際に、ギリシア神話を参考にしたのだろう。
『ん…?神様とギリシア神話の神様達は同じ神だし、知り合いだったりするのか…?』
今度βテスト調査報告をする際についでに聞いてみよう。
心のメモにそっと書き足しておいた。
『要求ステータスは高いけど…俺なら装備できるな。』
問題は値段だ。
人混みでよく見えないので、目に集中させて“闘気操術“を行使した。
『後日帝都でオークションを行います…か。』
当たり前といえば当たり前だ。
コルセア内で売るより、オークションにかけた方が高く売れるのだから。
Aランクの盾でも金貨50枚を下らない。
となると、SSSランクの盾は一体いくらになるのだろうか。
物好きな王族貴族が欲しがると思われるので、最低でも金貨数百枚まで吊り上がるだろう。
『流石に手出せないな。…まあ盾は滅多に使わないし諦めるか。』
それから商会5階魔道具や戦闘補助アイテムをじっくりと見て回った。
人がほぼ全員アイギスの盾に集まっていたので、周囲の陳列棚は過疎っていた。
半径3mの透明な壁を作る休憩用魔道具や魔物を引き寄せる匂いを発するレベリング用魔道具など、何個か使えそうなものを見つけた。
だが、魔道具は金貨何枚~何十枚と高価なので見るだけで辞めておいた。
『…まあ魔道具は利便性が高くなるだけだからな。無くても影響はないし。』
窓の外を見ると、太陽が沈みかけて綺麗な夕焼け空になっていた。
相変わらずアイギスの盾の周りは人で溢れている。
1人が帰れば1人がやって来て、それが無限に続いているのだ。
『…帰るか。』
行きと同様に人混みの頭上を飛翔し、人がいない場所で“迷彩偽装“を解除して大熊宿に戻った。
「おかえりなさいませ、アルフレッド様。」
「ただいまソフィア。4人は?」
「アルフレッド様の部屋で今日の反省会をひております。」
「またか…分かった。」
何で毎回俺の部屋なんだとため息をつきつつ、部屋に入った。
「おっ、おかえりアルフレッド!!聞いてくれよ!!今日は…」
いつも通りクレアを中心に冒険の活動報告、もとい自慢話を聞き続けた。
最初はやけに長いし少し面倒くさかったのだが、今では習慣となっている。
この話を聞くことで、穏やかな日常に戻る感じがするのだ。
クレアの話が終わり、今度は俺がアイギスの盾について話した。
4人はSSSランク装備が実在したことに驚き、呆然としていた。
無理をしてでも買い落とすべきだという意見が出たが、多数決で買わないことになった。
普段から使うならともかく、このパーティーでは俺とクレアとイザベルが片手剣や片手棍等のサブ武器を装備するときくらいしか盾は使わないというのが大きかった。
「皆様、夕食のお時間です。」
「今行く。」
日々の微かな幸せを噛み締めつつ、眠りについた。
そんなことを思いながら、人混みの頭上を飛翔する。
高さに余裕があるおかげで、地面の人がジャンプしても触れられることはなさそうなのだが…
「…ん?なんか羽音がした気が…」
「誰も飛んでないじゃない。きっと人混みに疲れたのよ。」
「ああ…そうだな…」
『あ、危なかった…』
旅の途中に何度もサバイバルをしたので、音を立てないことがどれほど重要かは身にしみて理解している。
そのため既に“偽装“で音を消すことができるか試したが、派生スキルは習得できなかった。
おそらく俺のイメージ能力が足りないのだろう。
派生スキルは自身のイメージでユニークスキルを行使することで習得する。
姿を変えるくらいは想像できるが、無音にするというのはなかなか難しい。
『理論的には姿を“偽装“できるなら音も“偽装“できるはすなんだけどな…』
これは妄想に過ぎないが、“偽装“を究極まで極めたら世界をも偽装することができるかもしれない。
俺はその可能性を少なからず感じている。
例えばある男が死んだとする。
彼が死んだという事実を“偽装“し、世界に彼はまだ死んでいないと勘違いさせる。
すると、もしかしら男は蘇るのではないだろうか?
『まあ…音すら消せない現状では夢のまた夢か。』
肩を竦めつつ出来るだけ静かに飛翔していると、5階の入り口にたどり着いた。
そして、目の前に広がる光景に唖然とした。
5階の中央広場とでも言うべきスペースに神々しい雰囲気を漂わせる、動物の革でできたと思われる丸盾がショーケースに入れて飾られていたのだ。
そしてそれに群がるように人々が集まっている。
『何というか…ゾンビが人に群がってるみたいだな。』
ちなみに魔道具は道具という言葉がつくので誤解されがちだが、魔法的な特殊効果のついた物全てを指している。
そのため武器や防具も魔道具に含まれている。
階段を抜けて更に少し天井が高くなったので、天井ギリギリで飛翔を続ける。
1人1人の話し声は小さいが、それが何十何百と重なっているのでなかなかの騒音だ。
だが、そのおかげで羽音に気付く様子はない。
俺は空中からひっそりと展示されている魔道具に近づき、“鑑定“を行使した。
名前:アイギスの盾 ランク:SSS
STR 200 VIT 150 DEX 170
特殊効果
1.雷無効
2.石化
『特殊効果付きだ!!…ん?アイギスの盾…?』
アイギスの盾といえば、ギリシア神話に出てきた盾だ。
とはいえ、前世でギリシア神話を少し学んだ程度である上に相当の年月が経っているので詳細は覚えていない。
きっと神様がこの世界を想像する際に、ギリシア神話を参考にしたのだろう。
『ん…?神様とギリシア神話の神様達は同じ神だし、知り合いだったりするのか…?』
今度βテスト調査報告をする際についでに聞いてみよう。
心のメモにそっと書き足しておいた。
『要求ステータスは高いけど…俺なら装備できるな。』
問題は値段だ。
人混みでよく見えないので、目に集中させて“闘気操術“を行使した。
『後日帝都でオークションを行います…か。』
当たり前といえば当たり前だ。
コルセア内で売るより、オークションにかけた方が高く売れるのだから。
Aランクの盾でも金貨50枚を下らない。
となると、SSSランクの盾は一体いくらになるのだろうか。
物好きな王族貴族が欲しがると思われるので、最低でも金貨数百枚まで吊り上がるだろう。
『流石に手出せないな。…まあ盾は滅多に使わないし諦めるか。』
それから商会5階魔道具や戦闘補助アイテムをじっくりと見て回った。
人がほぼ全員アイギスの盾に集まっていたので、周囲の陳列棚は過疎っていた。
半径3mの透明な壁を作る休憩用魔道具や魔物を引き寄せる匂いを発するレベリング用魔道具など、何個か使えそうなものを見つけた。
だが、魔道具は金貨何枚~何十枚と高価なので見るだけで辞めておいた。
『…まあ魔道具は利便性が高くなるだけだからな。無くても影響はないし。』
窓の外を見ると、太陽が沈みかけて綺麗な夕焼け空になっていた。
相変わらずアイギスの盾の周りは人で溢れている。
1人が帰れば1人がやって来て、それが無限に続いているのだ。
『…帰るか。』
行きと同様に人混みの頭上を飛翔し、人がいない場所で“迷彩偽装“を解除して大熊宿に戻った。
「おかえりなさいませ、アルフレッド様。」
「ただいまソフィア。4人は?」
「アルフレッド様の部屋で今日の反省会をひております。」
「またか…分かった。」
何で毎回俺の部屋なんだとため息をつきつつ、部屋に入った。
「おっ、おかえりアルフレッド!!聞いてくれよ!!今日は…」
いつも通りクレアを中心に冒険の活動報告、もとい自慢話を聞き続けた。
最初はやけに長いし少し面倒くさかったのだが、今では習慣となっている。
この話を聞くことで、穏やかな日常に戻る感じがするのだ。
クレアの話が終わり、今度は俺がアイギスの盾について話した。
4人はSSSランク装備が実在したことに驚き、呆然としていた。
無理をしてでも買い落とすべきだという意見が出たが、多数決で買わないことになった。
普段から使うならともかく、このパーティーでは俺とクレアとイザベルが片手剣や片手棍等のサブ武器を装備するときくらいしか盾は使わないというのが大きかった。
「皆様、夕食のお時間です。」
「今行く。」
日々の微かな幸せを噛み締めつつ、眠りについた。
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