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第67話 剣闘祭 賭博勝負 vsメリッサ②

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「それでは第27試合、1戦目を始めます!!」



この試合も実力が均衡した戦いだったので、オッズが2.8倍と高い方に大銀貨3枚をBETした。



「両者武器を構えて…試合開始!!」



試合の顛末は特に気にならないし、放っておいていいだろう。

確率はほとんど無いが、スキルチェインのようなシステム外スキルを使う選手が現れたら解説が盛り上がるだろう。



その時はメモを放り投げて観戦をしよう。



夏休み中に慣れた“闘気操術“…具体的にはTPの体内循環だが、武器や防具にも回すとなるとなかなか集中しないと難しい。



『何というか…武器を通すときは抵抗があるんだよな。』



体内のTP循環は血液の循環を意識することで、抵抗なく全身に流すことができる。

それに対して、非生物のTP循環は無理矢理流し込んでいる感じで循環に詰まりが生じる。



この詰まりを無くすのが目標だが…



「ボンッ!!」



『…痛っ!!』



このように詰まりがある状態で無理矢理TPを流し込むと、暴発して内側から粉砕してしまうのだ。



「…爆発音聞こえたけど大丈夫カ?」



「あ、ああ。スキルの調整ミスった。」



「そうカそうカ!焦ってるんだナ!!にっしっしっし!!」



『うぜぇ…ここぞとばかりに煽ってくるな…』



おそらくメリッサは、対象の戦闘能力をある程度把握するユニークスキルの行使に失敗したと思っているのだろう。



『まあ…賭博勝負中に技術練習してるとは思わないよな。』



「試合終了ーー!!ホメロス校の勝利ーー!!」



練習をしているとあっという間に試合が終わってしまった。



「メリッサ、今の試合はどっちにいくら賭けたんだ?」



「ホメロス校に大銀貨5枚だヨ!!」



「俺は大銀貨3枚だったから…利益的に俺の負けか。」



「これで7:7…追いついたヨ!!」



「ここからが勝負だ。」



「そうだネ!!うちの力見せつけてやるヨ!!」



『次の試合でまたリードしないと。…ん?』



例の通り“探知“と“鑑定“を行使していると、次の試合はクレアと同じ龍人族の学校の番だった。

龍人族の学校名はイラプト校…希少種族で人数が足りないのか、出場選手はたったの3人だ。



その3人の中に1人、ライオネル=ボルケーノという抜きん出て強い男性の選手がいた。

どうやら彼は1番手らしい。



『この戦いはライオネルの5人抜きで決まりだな!』



早速受付に行き、彼の5人抜きに金貨1枚をBETした。

皆がイラプト校の勝利に賭けていることもあり、オッズは2.4倍と低めだが仕方ない。



「それでは第28試合1戦目…試合開始!!」



それは一瞬の出来事だった。

ライオネルの身体が輝いた次の瞬間、相手選手が魔道具の効果で舞台から退場していた。



『なっ!?!?まじかよ…』



「し、試合終了ーー!!勝者、イラプト校ライオネル=ボルケーノ選手ーー!!」



「この一瞬に一体何があったのでしょうかーー!!」



会場全体が展開に追いつけず、唖然としている。

俺は“闘気操術“で目を強化していたおかげで、なんとか彼の動きを追うことができた。



まず身体と尻尾にマグマのような赤い線が浮かび上がって閃光が発せられた。

それによって相手は視界を遮られた。

その隙に強く踏み込み、右ストレートで相手の顔を殴って頭蓋骨を粉砕したのだ。



その証拠に踏み込んだ場所が彼の足の形に沈み、周囲にヒビが入っていた。

コロッセオの舞台はイザベルが鉄の棍棒で殴っても少し削れるくらい頑丈なはずだが…



舞台の魔道具には”自動修復”の効果も付与されているらしく、戦闘跡じゃすぐに消えた。



『…凄まじい力だな。あの赤い線は“闘気操術“みたいなものか?』



正直に言って、真っ向から戦いたくない相手だ。

出来ればあの赤い線が浮かび上がる前に死角から暗殺するのが1番楽でいい。



『ルーカスとライオネル…決勝まで進んだらこのどちらかと戦うことになるんだろうな。』



「今回はアルフレッドきゅんの勝ちだネ!まさか金貨1枚賭けてるとは思わなかったヨ!!」



「これで8:7だな。」



第29、30、31試合はどれも実力が均衡した戦いで熱戦となり、俺が1試合でメリッサが2試合勝って9:9となった。

第30試合ではスーの故郷と思われる鳥人族のネスト校が4人で出場して接戦を繰り広げたが、相手の虎獣人に敗れて敗退した。



ちなみにアイリス達白狼族は基本的に定住しない種族らしく、学校に通うのはごく稀な例だという。

なので白狼族の出場は無かった。



「次が最後…負けないヨ!!」



「こっちこそ!!」



“探知“と“鑑定“を行使して控室にいる選手達のステータス値を把握した。



『今回も実力差はほとんど無いのか…種族もお互いに人間だし…あとは運次第だな。』



勝ちそうな予感がしたパウロ校に大銀貨5枚をBETした。

メリッサも大銀貨5枚をBETしているようだが…どちらに賭けたのかは見えなかった。



「それでは第1回戦最終試合を始めます!!両者武器を構えて…試合開始!!」



特に大きな動きはなかったので、割愛させてもらう。

数十分後



「白熱した戦いですが、ついに大将同士の一騎打ちとなりました!!!果たして勝つのはどちらかーー!!」



「それでは両者武器を構えて…試合開始!!」



開始の合図と同時に、両者共に前へ飛び出した。

得物はどちらも片手剣…全く勝敗の予想が付かない。



「頑張れーー!!」



「負けるなーー!!」



今大会で最も歓声が飛び交っている。

俺は前世から大声を出すのが好きではないので、心の中で応援した。



『…そこだ!!!右下段から振り上げろ!!あぁ、もう!!』



試合が続くこと20分…



『…まずい!!左横薙ぎが来る!!』



「防げ!!!」



「避けロ!!!」



パウロ校の大将はその横薙ぎに反応できず、胴を両断された。



「試合終了ーーー!!!」



「くそっ!!今のは防げただろ!!…ん?」



「あーーなんでだヨ!!今の攻撃は防げただロ…ん?」



隣でメリッサが、全く同じことを悔やんでいた。



「…メリッサ、どっちに賭けた?」



「パウロ校だヨ。…アルフレッドきゅんも?」



「ああ…ってことは引き分けか。」



「…この決着はまた今度ナ!!」



「ああ!!」



決着が付けられなかったのは悔しいが、将来にメリッサとの賭博勝負という楽しみが1つ増えたので良しとしよう。
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