上 下
65 / 246

第65話 剣闘祭 暴虐

しおりを挟む
「それでは第17試合、1戦目を始めます!!」



『タルロス校の選手は全員獣人の女性か…頑張ってくれ…!!』



俺は”闘気操術”で目を耳を強化し、舞台の方を見た。

ルーカスは何の装備も持たず、舞台に立っていた。



「クハハハッ!!合法的に女を痛めつけられるなんて、最高じゃねーか!!精々いい声で鳴けよ?」



「このクズが…!!」



「両者武器を構えて…試合開始!!」



「はぁぁぁ!!!」



開始と同時にタルロス校の選手が細剣でルーカスの鱗を突いた。

次の瞬間



「なっ…!!」



ガキィッ!!という音と共に細剣が折れた。

ルーカスの鱗は…傷すらついていない。



「クハハハッ!!俺様にそんな攻撃が通るわけねーだろうが!!」



「降さ…」



タルロス校の選手が降参と言いかけた瞬間、距離を詰めて右手で首を掴んだ。



「それ以上は言わせねーぞ?俺様に歯向かった罰を受けてもらわないとなぁ!!」



「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」



そう言うと、ルーカスは相手選手の右腕を握り潰した。

腕の所々から血が吹き出し、潰された箇所は赤紫色に変色してぐちゃぐちゃになっていた。



『酷い…!!なんで反則にならないんだよ…!!』



観客は皆声を失い、目を逸らして耳を塞いでいる。

中にはその残酷さに気絶している者もいた。



「…こ…こうさ…」



「頭の悪い奴にはお仕置きが必要だよなぁ?今度は左腕だ!!」



「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」



声が出せないように気管を締め、左腕を握り潰した。

両腕が潰され、だらんとしている。



「もう辞めて!!!これ以上私の友達を傷つけないで…!!」



舞台の横で待機しているタルロス校の選手が我慢し兼ねて声を上げた。



「あぁ~?お前も生意気だなぁ?後で覚えてろよ?」



「ひぃっ…」



幸いにも首を締められた選手が痛みで気絶し、魔道具の効果で場外に出された。



「し、試合終了…勝者、ルーカス選手…」


残酷な試合だったため、全く歓声が上がらなかった。

それどころか、これ以上痛めつけられないことにほっと胸を撫で下ろしていた。



会場が静まり返ったところに、VIP席からエレノアが飛んで舞台へ上がった。



「お主やりすぎじゃ。ブルーノ帝国ギルドマスターとして…これ以上の暴行は看過できぬわ。」



「だったら何なんだ?俺様の行動を邪魔するってのか?」



「うむ。次やったら…お主を殺して海に沈めるからの?」



エレノアがルーカスを睨みつけると、ピリピリした雰囲気がコロッセオ中に広がった。

殺気を直に受けたルーカスは怯えて後退りし、尻餅をついている。



「…っと、観客の皆すまぬのじゃ。殺気を抑えるのを忘れてたのじゃ。てへぺろ!」



『いやてへぺろって…この世界にもあるのかよ。』



だがおかげで雰囲気が緩和され、優しい空気に包まれた。



「そ、それでは2戦目に移ります。両選手は準備してください。」



「アルフレッドきゅん、あの子大丈夫かナ…?」



「よくて魚人族が、悪くて戦闘がトラウマになるだろうな…冒険者として活動するのは難しくなる可能性も高い…」



「だよネ…」



気絶して場外に出された女生徒は目を覚ますことがなく、処置室へ運ばれた。



「そ、それでは2戦目を始めます。両者武器を構えて…試合開始!!」



タウロス校の選手はルーカスに怯えているようで、武器を震わせながらも立っている。

ルーカスは大変不機嫌そうで、開始と同時に相手選手に殴りかかった。




その鱗に覆われた拳はガードした武器を砕き、その勢いで相手選手を殴り飛ばした。

タウロス校の選手はその重い1撃で気絶し、場外へ出された。



「し、試合終了ー!勝者、ルーカス選手…」



残り3戦も同じように1撃で仕留め、勝利を収めた。




「い、今の勝負はアルフレッドきゅんの勝ちだネ…」



「あ、ああ…」



金貨2枚と大銀貨1枚(210,000円)の利益が出たが、胸糞悪い試合だったため全く嬉しくない。



「…気を取り直して次の試合に移りましょう!!」



「よ、よーし、じゃあ2戦目やるカ!!」



「あ、ああ!!」



“探知“と“鑑定“で両校の選手ともステータス値が似通っていたので、次の試合は一方的ではなく熱烈したものとなるだろう。

とりあえず勝ちそうな方に大銀貨1枚をかけておいた。



『ルーカス…あの場でエレノアが殺してくれれば良かったのに。』



コーデル校はトーナメント表後半の学校なので、もし戦うことになるとしたら決勝戦だ。



4人の戦闘能力でも、武器が決闘用のしょぼい物なので、頑丈な鱗を破るのは不可能だ。

かく言う俺もそうである。



『武器を強化する必要があるが…何か方法はないか…?』



ひとまず賭博勝負と戦力分析をしつつ、何か対策を考えなければ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...