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第1話 転生

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俺はブラック企業勤務歴3年の、冴えない社畜だ。

今回も何とかデスマーチを乗り越え、数週間ぶりの睡眠についた。



そして、目が覚めると俺は真っ白な空間に倒れており、目の前にとても綺麗な女性が立っていた。



「これは…幻覚か?」



『いえ、現実ですよ。』



「そうですか…!?」



女性の口元は全く動いていないのに、声が聞こえた。

脳内に直接響いているような、そんな聞こえ方がした。



「うっ…今の感覚で酔った…」



『す、すみません!!』



「うっ…あの…喋らないで頂けると…」



『そ、そうですよね!!少し黙ってます!!』



数分が経ち、ようやく酔いが収まった。



「ん…ちょっと待てよ…どういう状況だ…?」



目が覚めたら脳内に直接声を送る謎の人物が現れて…



「…って!!結構前に流行った異世界ものの展開まんまじゃないか!!!」



社畜だった俺の唯一の楽しみは、フルダイブ型のVRゲームをプレイすることだった。

フルダイブ型VRの開発によって異世界ものは現実でゲームとして楽しめるようになり、既に廃れた文化だったりする。



『あ、あの…酔いは大丈夫ですか…?』



「え、ええ。もう感覚にも慣れましたので…先程は失礼しました。」



『こ、こちらこそすみませんでした!!』



「それで、今がどういった状況かご存知でしょうか?」



『は、はい!あなたはデスマーチを乗り越えて眠りにつき、そのまま亡くなりました。原因は過労死です。』



「そうですか…ところであなたは?」



『あ、すみません!!信じてもらえないかもしれませんが、私は異世界で創造神をしてます!!』



まじか…

本当に異世界ものかもしれない…



『あ、あなたが予想している通りの現状です!!』



「そうですか…って心を読んだんですか!?」



『す、すみません!!だめだったでしょうか…?』



「い、いえ…神様だと信じますよ。」



『本当ですか!?ありがとうございます!!』



こういっては失礼だと思うのだが、神様的な能力以外はどうも普通の人としか思えない。

おどおどしている様子も…まぁ、面白くてなかなか好意が持てる。



『それは良かったです!!』



おっと、心が読めるんだった。



『それで、実は今神界で異世界創造が流行っていまして…あなたには私が作った世界に転生して改善点を教えて欲しいんです!!』



「なるほど…βテストみたいなものか…」



俺は生粋のゲーマーで、学生時代から人生の全てをゲームに捧げてきた。

…まあそのせいで履歴書が酷くてブラック企業に勤める羽目になったのだが…



『駄目でしょうか…?』



「いえ、まずは色々と情報を聞かせていただきたい。」



『分かりました!!では、私が作った世界をご覧ください!!』



そう言うと、突然目の前にディスプレイのようなものが現れた。

そして、そこに世界の様子が映っている。



「おぉぉぉぉ!!!」



身体よりでかい剣を振り回す巨漢や素早いステップで敵を翻弄して短剣で斬りつける少女、盾で防ぎながら片手剣で交戦しているオーソドックスな剣士など、様々だ。



「ん…?彼らが戦っているのは…?」



『はい!あれは魔物と呼ばれる敵です!!魔物を倒すことで生命力が向上し、LvUPします!!』



「なるほど…」



つまり、魔法が無いことを除いて異世界もののテンプレ通りということか。

ゲーム要素が多くて、なかなか面白そうだ。



『では…!!』



「ええ。その依頼、引き受けましょう。」



『ありがとうございますっ!!では早速…』



「ちょっと待ってください!!」



『どうしたんですか…?』



「いえ、転生するのはいいんですが…何もない状態で転生したら、すぐに死んでしまって改善点をほとんど挙げられなくなってしまう可能性があります!」



『失念していました…!!確かに先輩方はチートとやらを与えていましたね…』



「まずは転生先について決めましょう!」



『そうですね!!では…転生先はこの…』



それからどれほどの時間が経ったのだろうか。



俺は神様と熱心に話し合い、設定を決めた。

…正直社畜時代の会議より集中していた気がする。



『これで全部…でしょうか?』



「おそらく…大丈夫だと思います。後から設定を変えることはできるんですか…?」



『そうですね…転生者には干渉できるので可能です!!その時は私を呼んでください!!』



「分かりました。」



『この記憶は5歳の誕生日に思い出しますので…思い出したらまずは連絡をお願いしますね!』



「ええ。」



『あ、楽しむことも忘れないでくださいね!!』



「ええ、ありがとうございます。」



『では、よろしくお願いします!!』



「お任せください!!」



そして、俺は再び意識を失った。
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