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第114話 救世主

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正直のところ、この魔石の魔力貯蔵量は俺の何倍もあるだろう。

この魔石の直径はだいたい4m弱、そういえばこのくらいの大きさの魔石をどこかで見た気が…



『…あっ!!海龍とカルキノスの魔石か!!』



貯蔵量は海龍の魔石の二倍くらいだろうか。

一体この魔石の持ち主はどれほど強かったのだろうか…



「…この魔石を持ってた魔物は知ってるか?」



「この森の伝承によると、古の時代に海を支配していたクラーケンという魔物らしいです。」



「クラーケンか…」



”奴と出会った者は何人たりとも生きては帰らない。それは例え勇者であっても。”と言い伝えられている魔物だ。

これは勇者パーティが勇者と賢者の二人を失ってようやくクラーケン討伐に成功したことに由来している。



一体どうやって魔力を補充しようか。

とりあえずMP回復ポーションSを何本も用意して、回復中は海龍の魔石から魔力を注入して…



「あの、ダグラス様…?」



「ん?どうかしたか?」



「いえ…何か難しい顔で考え込んでいたので…その、無理はしなくて大丈夫ですよ?」



「いや、大丈夫だ。それより一つお願いがあるんだが、要らない魔石はないか?多ければ多い方がいい。」



「たくさんありますよ。今持ってきますね。」



補充のだいたいの目処は立った。

作戦はこうだ。



俺の魔力をクラーケンの魔石に注ぎ、残りMPが100,000をきったらMPを全回復するMP回復ポーションSを飲む。

この際、魔力供給は中断できないようなので俺から海龍の魔石にシフトし、供給を続ける。

そしてMPが全回復したらまた同じ工程を繰り返す。



「お待たせしました。持ってきましたよ。」



「ああ、ありがとうございm…って多くないですか!?」



「フェンリルは肉食ですからね。ここらの魔物は大体狩りつくして食べてるんですよ。」



「なるほど…」



魔石を用意してもらったのは、海龍とカルキノスの両方ともの魔石の魔力がなくなった場合に備えてのことだ。



「そろそろ始めるから少し離れた方がいい。」



「分かりました…無理はしないでくださいね。」



「ああ。ありがとう。」



”MP回復速度上昇S”やHPをMPに変換する”生命変換”など、MPに関するすべてのバフをかけて準備万端だ。



『よし、始めるか!!!』



俺は一歩、また一歩と巨大な魔石へと近づいていった。

すると、まだ5mほど離れているにも関わらず魔力を吸われ始めた。


『この距離でしかも結構早いペースで奪われるな…』



計算すると、一秒あたりMPが1000奪われていた。

これで近づいたらどんなに危険なことか。



このように直接触れずとも魔力を補充できるようなので、俺は3m地点で止まって魔力を垂れ流し続けた。

3m地点は一秒あたりMP5000が吸収される。



『あとはただMP切れに注意して耐久だな…』



急激に吸収されるのではなくてよかった。

もしそうだとしたら、ポーションでの補給タイミングを見計らうのが大変になっていただろう。



「あ、あのダグラス様!!そんなにお近づきになって大丈夫ですか?」



「問題ない!!時間がかかると思うから、その間この部屋には誰も入れないでくれ!!」



「わかりました。くれぐれも無茶はしないでくださいね!!」



「ああ!」



それから魔力を注ぎ続け、やっと俺のMPが尽きかけたのでMP回復ポーションで回復をした。



『そういえばポーション飲みながらでも補充できたな…わざわざ魔石用意してもらう必要もなかったか…』



そんなことを考えながら補充を続けた。

しかし、やることが無さ過ぎてそろそろ飽きてきた。



『…そうだ。自然に奪われる魔力量以上に自分で放出したらどうなるんだ…?』



試しに一秒にMP10,000を放出してみると、10,000全て魔石に吸収された。

ということは、俺が放出する魔力量は魔石に依存しておらず、自分自身で決められるということだ。



『そういうことなら時短するか!!』



俺は一秒間にMPを30,000放出し続けた。

そうすると大体20秒と少しでMPが枯渇するので、MPを一定量回復する回復ポーションAを常に飲むことにした。



『うっ…ずっと飲み続けるのは胃に来るな…』



しかし、ちんたらやっていたら何日もかかってしまうため、できるだけ急いだ。



それからどれだけの時間が経っただろうか。

俺の周りには空のポーション瓶が何十本も散らばり、魔石が赤い光を発するようになった。



『魔石に魔力がほとんど溜まった時の現象だ…ということはあと少しか!!頑張ろう!!!』



ここまで来たらあとは少しずつ、過多に注がないよう気を付けるだけだ。

もし許容量を超えて魔力を流してしまったら、魔石が割れて魔力爆発が起きてしまうのだ。



『…この大きさの魔石が爆発したら一国が壊滅するな…』



そしてついに、魔石の許容魔力満タンになった。

終わったので外に出てみると既に夜になっており、多くの妖精や精霊が集まっていた。



「ダグラス様…魔石は…?」



「無事補充が終わったぞ!!」



「おおおおおおおおお!!!!!!!」



「これでこの森も安心だ!!!!!」



「もう人に見つかって追いかけられずに済むよ!!!!!」



「この森の救世主だーーーー!!!!」



それから精霊の森で大きな宴が開かれた。
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