『シェルターに逃げ込んだら、中に家出少女が棲みついていたのだが、どうすればいい？』

玖

奪われた拳銃

　この最悪の事態を招いたオバさんは、ミクちゃんが紀里に羽交い絞めにされて、ナイフを突きつけられていく様子を唖然として眺めていた。

「な……何をやっているのよ？　そんな物騒なもの」

　竜二は、ニヤニヤしながら答えた。

「へい！　ババア。人質ありがとうな」
「人質？」
「まさか、俺を知らないのかい？　ネットニュースで、さんざん流れているはすだが」
「誰よ？」
「保安官。その間抜けなババアに、俺が誰だか教えてやれよ」
「保安官さん。誰なのです？」
「韮崎竜二だ」

　声に、怒気を込めて俺は答えた。

「え？　韮崎竜二って……大勢の人を殺して、指名手配されている……」
「どうしてくれるのですか？　やっと追いつめたのに、人質なんか渡して」
「だって……私……知らなくて」
「へい！　ババア。俺を知らなっかったじゃ、済まないぜ。まあ、俺はありがたかったけどな。人質を渡してくれて感謝するよ」
「離してよ！」
「よお、嬢ちゃん。文句があるなら、あのババアに言ってやりな」
「オバさん、どうしてくれるのよ！　あたしは関係ないって言ってるのに、どうして信じないのよ！」
「そ……そんな事言ったって……わ……私は悪くないわよ」
「よお、保安官！　そのババアは、住居侵入の上に公務執行妨害だぜ。殺処分にしなくていいのかい？」

　竜二の奴、馬鹿だと思っていたが法律知識はあるみたいだな。

「この場合は、殺処分に該当しない」
「そいつは残念だったな。本当はぶっ殺したいのだろう。まあ、いい。そのババアを殺さないなら、その鉄砲はこっちに寄こしな」

　俺は拳銃を放り投げた。

「へへへへへ！　ピストルゲットだぜ！」

　竜二は、拳銃を俺に向けた。

　まあ、撃たれたところで俺の戦闘服は貫けないわけだが、ここは死んだふりをして、隙を見てミクちゃんを助けるか。