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玖
血痕
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弾倉を交換したときには、奴の姿はなかった。
逃げられたか。
倒れた男の顔を確認したが、竜二ではない。
「小淵沢君」
声の方を見ると、シェルターからキララ=中野刑事が出てくるところだった。
「刑事さん。すみません。竜二を取り逃がしました」
キララが俺の近くまで来て周囲を見回した。
「見て」
キララが通路の一か所を指差す。
そこに血痕が残っていた。
「これを追えば、奴らのアジトにたどり着けるわ」
「なるほど」
「遺体を片付けたら追うわよ」
そうだった。遺体を片付けないと……アキラがまた嫌な顔するだろうな。
「刑事さん」
遺体収納袋に遺体を押し込みながら、俺は質問した。
「遺体処理を代わりに引き受けてくれる人って雇えませんか?」
「無理。予算も人手もないのだから。口よりも手を動かしなさい」
「はい」
自分は八百キロも離れた場所にいるくせに……
四体の遺体を袋に入れて、地下道の隅に積み上げるのに十分ほどかかった。
「やっぱり雇った方がいいかしらね? この時間ロスはまずいわ」
「でしょう。それに人手なら、シェルター内で食っちゃ寝している人がいっぱいいますよ」
「とりあえず、募集広告は出しておくわ。でも、この遺体の運搬はアキラ君に頼みましょう」
俺がアキラに、恨まれるのだけどなあ。
「あの……」
シェルターから女の子が出てきた。
「もう、出てきていいですか?」
キララ=中野刑事が彼女の前に立つ。
「まだ、安全が確保されたわけではありません。しばらくはシェルターの鍵を閉めて隠れていなさい」
「はあ……でも」
「食料なら、後で届けます。何かあったら」
キララは名刺を差し出した。
「ここへ、連絡しなさい」
「はあ」
そして、俺たちは竜二の血痕を追い暗闇に戻っていった。
逃げられたか。
倒れた男の顔を確認したが、竜二ではない。
「小淵沢君」
声の方を見ると、シェルターからキララ=中野刑事が出てくるところだった。
「刑事さん。すみません。竜二を取り逃がしました」
キララが俺の近くまで来て周囲を見回した。
「見て」
キララが通路の一か所を指差す。
そこに血痕が残っていた。
「これを追えば、奴らのアジトにたどり着けるわ」
「なるほど」
「遺体を片付けたら追うわよ」
そうだった。遺体を片付けないと……アキラがまた嫌な顔するだろうな。
「刑事さん」
遺体収納袋に遺体を押し込みながら、俺は質問した。
「遺体処理を代わりに引き受けてくれる人って雇えませんか?」
「無理。予算も人手もないのだから。口よりも手を動かしなさい」
「はい」
自分は八百キロも離れた場所にいるくせに……
四体の遺体を袋に入れて、地下道の隅に積み上げるのに十分ほどかかった。
「やっぱり雇った方がいいかしらね? この時間ロスはまずいわ」
「でしょう。それに人手なら、シェルター内で食っちゃ寝している人がいっぱいいますよ」
「とりあえず、募集広告は出しておくわ。でも、この遺体の運搬はアキラ君に頼みましょう」
俺がアキラに、恨まれるのだけどなあ。
「あの……」
シェルターから女の子が出てきた。
「もう、出てきていいですか?」
キララ=中野刑事が彼女の前に立つ。
「まだ、安全が確保されたわけではありません。しばらくはシェルターの鍵を閉めて隠れていなさい」
「はあ……でも」
「食料なら、後で届けます。何かあったら」
キララは名刺を差し出した。
「ここへ、連絡しなさい」
「はあ」
そして、俺たちは竜二の血痕を追い暗闇に戻っていった。
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