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第六章

釈放

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 監禁部屋の壁から出てきた俺の人型分体を、幼女のフィリスは邪悪な笑みを湛えて出迎えた。

「馬鹿め! 最後の最後で、詰めの甘い奴だな。お前は」
「フィリス。帰る前に、食事でもしていかないか?」
「いるか! どうせ、食事にお前の分体でも混ぜる気だろ」
「ん? そういう手もあったか」
「ふん! とぼけおって」

 いや……とぼけるも何も、軽口で言っただけで本当に何も考えていないって……もしかして?

「フィリス。お前も元スライムだったそうだが、そういう事をよくやっていたのか?」
「やっていたぞ」
「で……お前の分体を体内に送り込まれた人間は、どうなるのだ?」
「そのまま、分体を脳に送り込んで、私の傀儡にしてやるのだ。楽しかったぞ。ははははは!」

 うわあ! この世界に来てスライムになって、いろんな能力手に入れたけど、その能力だけはいらんわ! 怖すぎる!

「フィリス」

 俺は一方の壁を指差した。

「今からその壁に穴を開く。そこから出ていけ。それとも、お姫様だっこで運んでほしいか?」
「いらんわ! 自分で歩いていく」

 フィリスは穴に入っていった。

 穴の向こうは長いトンネルになっている。

「このトンネルは、どこまで続くのだ?」

 トンネル内で、俺の人型分体の後ろを歩きながら、フィリスは呟いた。

「五十メートルほど。ちなみにお前が今歩いている場所は、俺の触手の中だ」
「触手だと!?」
「おまえも、式神の目を通して見たのじゃないのか? ウドウ邸の中で暴れまわっていた俺のぶっとい触手。あの中はこうなっていたのだよ。こうして、中を人が歩くこともできるんだ」
「ふうん。私がスライムだった時は、こんな事は出来なかった。エリスからもらった能力か?」
「そうらしい」
「こんな事なら、私もスライムでいる間に、エリスの精気を吸っておけばよかった」
「そうそう。言い忘れたけど、触手は本体ほど丈夫じゃないから、今は俺に攻撃するなと部下に言っておけ。俺は触手を切り離しても平気だが、中を歩いているおまえは死ぬかもしれないから」
「そういう事は先に言わんか!」
「という事は、攻撃する気だったんだ」
「そんな気はない! しかし、馬鹿な部下がやるかもしれないだろ」

 そんな事を話している間に、トンネルの出口が見えてきた。
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