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第三章

フィリス

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 じいさんは、さらに話を続けた。

「ただ、その使者は、正規の使者ではないようです」
「というと?」
「私も直接見たわけではありませんが、その使者は、これまで来たことのある木の国の外交官ではありません。二十代半ばの女ですが、大使館に問い合わせても、まったく知らない人物だと言うのです。ただ、この女の特徴を聞いて私はピンと来ました」
「心当たりあるの?」
「フィリスですよ」
「ええ!?」

 あの式神使いのおばさんかよ。

「つまり、この使者は木の国というよりも、ウドウ王子の私的な使者と考えるべきかと」
「そもそも、フィリスって何者?」
「私もよくは知りません。放浪の旅から戻ってきたウドウ王子が連れてきた式神使いという事しか」
「で、じいさんは、なぜこいつに雇われたの?」
「私は落ち目の魔法使いでしたが、エリス殿を探知する能力があるために雇われただけです。まあ、その能力のある者は他にもいますが、寺院関係者は協力を拒否したので、能力者が足りず、私のような老いぼれまで引っ張り出してきたのです」
「フィリスが来たという事は、やはりエリスを取り返しに来たのかな?」

 エリスが不安そうな顔をしていた。
 俺は壁から、人型分体を出してエリスをそっと抱きしめる。

「大丈夫だよ。エリスは俺が必ず守るから」
「ありがとうございます。ランドールさん」
「しかし、なぜここが分かったのだろう? エリスの精気は遮断しているのに」

 エリスはほとんどの時間この家の中にいるし、外出時は俺が変化した服を纏っている。

 精気が多少もれたとしても、じいさんの話ではダウザーでも五キロ以内に近づかないと探知できないそうだ。

「エリス殿というより、ランドール殿が見つかったのではないかと。こんな大きな動く家は目立ちますからな」
「う! そうかも」

 やはり目立ち過ぎだよな。一応対策を立てたが、上手くいくかどうか?

「よし。ちょっと新しい能力の実験をしよう」
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