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第二章
マリカの島3
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俺達が通されたのは、十畳ほどの広さの客間。
さっそくじいさんが、板張りの床に地図を広げた。俺と、エリス、マリカ、そして話に加わったマリカの父が地図を覗き込む。
「これが、木の国の都です」
同心円状に整備された都市のようだ。中心部に大きな広い土地があるが……
「ここが王宮?」
俺は同心円の中心を指差すと、じいさんは首を横に振った。
「ここにあるのは寺院です。王宮はここです」
王宮は、郊外にあった。
「そして、ここがウドウ王子の私邸です」
王宮とは、同心円を挟んで反対側の位置を指差した。
「なぜ、ウドウ王子の私邸と、王宮がこんな離れているの? 王様と仲が悪いの」
じいさんは頷いた。
「まさにその通りでございます。ウドウ王子は元々王太子でありました。ところが、すでにお聞き及びと思いますが、この方は大変、粗暴な性格。町へ繰り出しては、権力をかさに、物は壊す、女は犯すと傍若無人な振舞い行っておりました。ついには国王陛下の怒りを買って、王大使を廃嫡されたのです。その後、ウドウ王子は一度国から出て行きました」
「しかし、王位継承権は今でも二位なのだろ?」
「王様には、お子様が二人しかいらっしゃいませんので。王様の兄弟も尽く早死にされました。ですから、現王太子に何かあった時はウドウ王子に継がせるしかありません。まあ、王様は『ウドウに継がせるくらいなら、王家を畳んで共和制に移行する』と言っておられたので、あの方が王位を継げる可能性はまったくありません」
「それで弟に王太子の地位を取られて、拗ねて出て行っちゃったのか」
兄より優れた弟などいねえ! とか言いながら、国を出て行く姿が頭に浮かんだ。
「いいえ、後継ぎは妹君でございます」
「お姫様だったのか」
「ただ、お姫様は正妻の子ではなく、まだ十二歳」
「そりゃあ、政務は無理じゃないの?」
「ですから、王様に万が一のことがあった時は、摂政を立てねばなりません。摂政を誰にするか話し合っている矢先に『自分がやる』と名乗り出た者がおりました」
「誰?」
「他ならぬ、ウドウ王子です」
「国を出て行ったのでは?」
「半年ほど前に、ふらりと戻ってきました。私兵集団を伴って。そしてこの場所に無断で私邸を構え居座っているのです」
「そんな私兵集団を養う金がどこにあったの?」
「恐らく、王子は国を出た後、どこかの裕福な国を後ろ盾に着けたのでしょう」
「いったい、どこの国だろう?」
俺の呟きに、マリカの父が答えた。
「少なくとも、水の国ではない。うちのような弱小国家に、そんな余力はない」
「弱小国家なのですか? なんか、暮らし向きは良さそうだけど」
「人口が少ないのだよ。せいぜい数千人。河童の方が多いくらいだ」
だとすると、火の国、土の国、金の国のいずれか?
「ところで、じいさんはウドウ王子に反感があるみたいだけど、なんで従っていたの?」
「嫌な奴だが、金と力はありますゆえ、逆らえる道理がありません。まあ、亡命の機会は狙っておりましたがな」
そういう事か……
「そんな時に俺と出会ったものだから、国造りの話を持ちかけたわけか」
「まあ、そうなりますかな。正直、あんなクソ王子の威張り散らしている都に戻るなどまっぴらです」
「でも、一度は戻らなきゃならないだろ。マルティナを取り戻しに……」
「まあ、それは仕方ないですな」
じいさんがそう言った途端にマリカの父が詰め寄る。
「仕方ないじゃない! 妻は無事なのだろうな!?」
「少なくとも、貞操は無事ですな。王子は、変態ロリコンなので……」
「本当ですね? 必ず取り返して下さいよ」
それから、救出のための打ち合わせをした後、俺はエリスとマリカを伴って湖に行った。
さっそくじいさんが、板張りの床に地図を広げた。俺と、エリス、マリカ、そして話に加わったマリカの父が地図を覗き込む。
「これが、木の国の都です」
同心円状に整備された都市のようだ。中心部に大きな広い土地があるが……
「ここが王宮?」
俺は同心円の中心を指差すと、じいさんは首を横に振った。
「ここにあるのは寺院です。王宮はここです」
王宮は、郊外にあった。
「そして、ここがウドウ王子の私邸です」
王宮とは、同心円を挟んで反対側の位置を指差した。
「なぜ、ウドウ王子の私邸と、王宮がこんな離れているの? 王様と仲が悪いの」
じいさんは頷いた。
「まさにその通りでございます。ウドウ王子は元々王太子でありました。ところが、すでにお聞き及びと思いますが、この方は大変、粗暴な性格。町へ繰り出しては、権力をかさに、物は壊す、女は犯すと傍若無人な振舞い行っておりました。ついには国王陛下の怒りを買って、王大使を廃嫡されたのです。その後、ウドウ王子は一度国から出て行きました」
「しかし、王位継承権は今でも二位なのだろ?」
「王様には、お子様が二人しかいらっしゃいませんので。王様の兄弟も尽く早死にされました。ですから、現王太子に何かあった時はウドウ王子に継がせるしかありません。まあ、王様は『ウドウに継がせるくらいなら、王家を畳んで共和制に移行する』と言っておられたので、あの方が王位を継げる可能性はまったくありません」
「それで弟に王太子の地位を取られて、拗ねて出て行っちゃったのか」
兄より優れた弟などいねえ! とか言いながら、国を出て行く姿が頭に浮かんだ。
「いいえ、後継ぎは妹君でございます」
「お姫様だったのか」
「ただ、お姫様は正妻の子ではなく、まだ十二歳」
「そりゃあ、政務は無理じゃないの?」
「ですから、王様に万が一のことがあった時は、摂政を立てねばなりません。摂政を誰にするか話し合っている矢先に『自分がやる』と名乗り出た者がおりました」
「誰?」
「他ならぬ、ウドウ王子です」
「国を出て行ったのでは?」
「半年ほど前に、ふらりと戻ってきました。私兵集団を伴って。そしてこの場所に無断で私邸を構え居座っているのです」
「そんな私兵集団を養う金がどこにあったの?」
「恐らく、王子は国を出た後、どこかの裕福な国を後ろ盾に着けたのでしょう」
「いったい、どこの国だろう?」
俺の呟きに、マリカの父が答えた。
「少なくとも、水の国ではない。うちのような弱小国家に、そんな余力はない」
「弱小国家なのですか? なんか、暮らし向きは良さそうだけど」
「人口が少ないのだよ。せいぜい数千人。河童の方が多いくらいだ」
だとすると、火の国、土の国、金の国のいずれか?
「ところで、じいさんはウドウ王子に反感があるみたいだけど、なんで従っていたの?」
「嫌な奴だが、金と力はありますゆえ、逆らえる道理がありません。まあ、亡命の機会は狙っておりましたがな」
そういう事か……
「そんな時に俺と出会ったものだから、国造りの話を持ちかけたわけか」
「まあ、そうなりますかな。正直、あんなクソ王子の威張り散らしている都に戻るなどまっぴらです」
「でも、一度は戻らなきゃならないだろ。マルティナを取り戻しに……」
「まあ、それは仕方ないですな」
じいさんがそう言った途端にマリカの父が詰め寄る。
「仕方ないじゃない! 妻は無事なのだろうな!?」
「少なくとも、貞操は無事ですな。王子は、変態ロリコンなので……」
「本当ですね? 必ず取り返して下さいよ」
それから、救出のための打ち合わせをした後、俺はエリスとマリカを伴って湖に行った。
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