上 下
23 / 185
第一章

国を作ろう

しおりを挟む
「とりあえず、じいさんの事情は分かったから、この世界の事を教えて」
「何から聞きたいですか?」
「まず、俺たちのいる場所。ここは、島なの? 大陸なの?」
「本州ほどの大きさの島です。島の名前はタンジル」
「タンジル? どんな漢字?」
「島の名に、漢字は使っていません」
「え? だってこの辺りの転生者は、日本人がほとんどで、漢字も使っていると聞いたけど」
「簡単な漢字でしたら使います。しかし、ランドール殿。我々は身一つ……いや魂一つで送り込まれたのです。複雑な漢字を書けますか?」
「え? 何を言ってるの?」
「ではここに」

 じいさんは、紙と筆をリュックから出した。
 
「ランドール殿が前世で死んだ時、何歳だったか書いてみて下さい」

 なんでそんな事を? 俺は筆を手に取り。墨汁を着けて紙に『二十二』と書いたところで筆が止まる。『さい』ってどういう漢字だったっけ? いや、大体の形は分かるのだが、細かいところが思い出せない。

「分かりましたか? 我々は前世でコンピューターに頼り過ぎてしまい、ある程度画数の多い漢字は読めるけど、書くことは出来なくなっていたのです」
「なんてこった。自分の名前とかは?」
「漢字で書く者も稀にいますが、ほとんどカタカナを使っています。それと、苗字を使っている者は、ほとんどいません」
「苗字を使わないで不便じゃないの?」
「それだけ人口が少ないのですよ」
「なるほど」
「ちなみに、私が転生した時点で、この島の人口は千人ほどでした」
「たった千人?」
「増やそうにも、この世界は魂の絶対数が少ないので」

 だから、しいちゃん達死神が、地球人を勧誘していたわけか。

「人口が少なかったので、当初島には国は一つだけだったのですが、人口が増えて今は国が五つあります」
「五つも。人口はどのくらい増えたの?」
「はっきり調べる手段はありませんが、恐らく島全土で三~四万ほどかと」
「少ないな。それで本州ほどもある島を開拓しきれるのかな?」
「できません」
「え?」
「先ほど言った五つの国が領土にしているのは、島のほんの一部です。島の土地の大半は未開地です。どこの国の領土でもありません」
「そうなの?」
「ランドール殿。先ほど、王になって欲しいと言ったのは、決して今ある国を武力で侵略しようと言うのではありません。未開地を開拓して新しい国を作るという意味です」
「ああ! そういう意味だったのか」

 国を手に入れる=侵略 としか思いつかなかったので勘違いしてしまったが、ゼロから国を作るという手もあったんだ。

「しかし、国は三人だけでは作れないよ」

 この場合、しいちゃんは数に入らない。

「ご心配なく。このアルベルト、六十年の間に築き上げた人脈がございます。新しい国造りに参加を希望する者の百人や二百人、すぐに集められるでしょう」

 国を作るに百人や二百人でも足りないような気がするけど……

「いかがです? 国王になる気になりましたか?」
「ちょっと考えさせてくれ」

 俺が前世で引きこもるようになったのは、社会に馴染めなかったからだ。

 では、そんな俺が転生したからと言って、すでにその世界にある社会に馴染めるだろうか?

 いや、無理だ。そのぐらいなら、ゼロから自分に合う社会を作った方がいい。

「アルベルト。その話に乗るよ。国を作る」
「おお! 決意されましたか」
「ただし、当分、給料は払えないよ」
「当然です。当面の間、私は地位さえ頂ければ」
「では、アルベルトは大臣に任命する」
「拝命いたします」

 この場合、何大臣になるのか分からないが…… 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~

鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」  未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。  国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。  追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

根暗男が異世界転生してTS美少女になったら幸せになれますか?

みずがめ
ファンタジー
自身の暗い性格をコンプレックスに思っていた男が死んで異世界転生してしまう。 転生した先では性別が変わってしまい、いわゆるTS転生を果たして生活することとなった。 せっかく異世界ファンタジーで魔法の才能に溢れた美少女になったのだ。元男は前世では掴めなかった幸せのために奮闘するのであった。 これは前世での後悔を引きずりながらもがんばっていく、TS少女の物語である。 ※この作品は他サイトにも掲載しています。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

処理中です...