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第一章
追われる理由
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「まあ、鳥の事はいいとして、しいちゃん、エリス。この洞窟は早く引き払った方がいい」
「どうして?」
俺は戦いの経緯を話した。フィリスという魔女と、兵士たちが式神であった事、捕まえたじいさんだけが本物の人間だった事など。
「つまり、式神使いがどこかにいて、ここにエリスちゃんがいることも、それをランドールというスライムが守っている事も知られてしまったわけね」
「そういう事だ。体勢を整えて再びやってくる前に逃げ出すべきだ」
「待って。闇雲に逃げても、すぐに捕まるわよ」
「なんで?」
「魔法使いのじいさんが、ダウジングで壁の向こうにいるエリスちゃんを探知したと言っていたわね?」
「ああ」
「つまり、探知されてしまう何かが、エリスちゃんから出ているというわけよ」
なるほど。そうでなければ、洞窟の中にいるエリスを見つけられるはずがない。
エリスの方を見ると、炙り肉を食べ終わって地下水の泉で手を洗っていた。
しいちゃんが背後から声をかける。
「エリスちゃん。あんた、マナキャリアーじゃないの?」
またマナ。マナって、なんなのだ?
エリスがしいちゃんの方を振り向く。
「分かりません。ただ、あたしは子供のころから寺院に幽閉されていました。人よりも大きなマナを持っているので、閉じこめておかないと魔力の源が外に溢れてしまうと言われて」
「やはりね」
しいちゃんは一人で分かったように言うが俺にはさっぱり分からない。
「しいちゃん。どういう事? マナってなに?」
「ランドール。あんたは、なぜ他人の精気を吸わなきゃならないか分かる?」
「さあ? 精気が食べ物だからじゃないの?」
「精気というのは、本来は他人のものを奪わなくても、身体の奥から湧いてくるものなのよ。その精気が沸いてくる幽体器官をマナと言うの」
「そうなんだ」
「前世のあなたにもそれがあった。ところが、この世界に転生したばかりのランドールにはマナがない。だから、この世界の精気を集めることができない。だから、他人から精気を奪う必要があるの。時間が経てば、あなたにもマナができてくるけどね」
「じゃあ、この世界に根付くというのは、俺の中にマナができるという事?」
「そう。そして、マナができたら、あんたはスライムじゃなくなり、別の何かになるわ」
「そうなんだ」
「この世界に根付いた人間は、普通にマナを持っている。でも、そのマナから発生する精気は人一人が活動するのに必要な量だけよ。でも、エリスちゃんから発生する精気は通常の一千倍。ランドールがエリスちゃんの精気を吸った途端に、いろんな能力に目覚めたのはそのせいね」
「マジ?」
「とにかく、エリスちゃんが追いかけられる理由はこれだわ。精気は魔力の源。これだけの魔力発生源がいたら、戦争で百人の魔法使いを動員できるわよ」
「さっきはシイちゃんが言ったマナキャリアーって、普通の人よりマナが大きいという意味?」
「ちょっと違うわね。マナにはもちろん個人差があるけど、エリスちゃんの場合は普通じゃない。神クラスよ」
「神!?」
言ってみれば、エリスは生きた弾薬庫あるいは燃料タンクみたいなものか。
可哀そうだな。こんな小さい女の子が、大人の醜い争いに巻き込まれて……
「エリスちゃん。あんた寺院に幽閉されていたと言ったわね。その寺院は、あんたを探知できなくする仕組みでもあったの?」
「分かりません。でも、そこにいる限りあたしから溢れる精気は外に出ないと……それと、あたしの精気が溜まりすぎないように、取り出す事をしていました」
「取り出すって……」
エリスは頬を赤らめた。
「その……気持ちいいことをすると……」
ああ、そういう事ね。さらに聞いてみると、エリスは物心ついたころから、そういう事をされていたそうだ。ただし、やっているのは女官で、男には触れられていない。
「とにかく、ここから逃げる前に、エリスちゃんを探知できないようする必要があるわ。そのために何をすればいいか分かるわね。ランドール」
「分かっているよ。最初の予定通り、報酬をいただけばいいんだね」
「エリスちゃんもいいわね?」
「それは、約束ですから。でも、優しくして下さい。姿もさっきの男の人の姿で……」
「どうして?」
俺は戦いの経緯を話した。フィリスという魔女と、兵士たちが式神であった事、捕まえたじいさんだけが本物の人間だった事など。
「つまり、式神使いがどこかにいて、ここにエリスちゃんがいることも、それをランドールというスライムが守っている事も知られてしまったわけね」
「そういう事だ。体勢を整えて再びやってくる前に逃げ出すべきだ」
「待って。闇雲に逃げても、すぐに捕まるわよ」
「なんで?」
「魔法使いのじいさんが、ダウジングで壁の向こうにいるエリスちゃんを探知したと言っていたわね?」
「ああ」
「つまり、探知されてしまう何かが、エリスちゃんから出ているというわけよ」
なるほど。そうでなければ、洞窟の中にいるエリスを見つけられるはずがない。
エリスの方を見ると、炙り肉を食べ終わって地下水の泉で手を洗っていた。
しいちゃんが背後から声をかける。
「エリスちゃん。あんた、マナキャリアーじゃないの?」
またマナ。マナって、なんなのだ?
エリスがしいちゃんの方を振り向く。
「分かりません。ただ、あたしは子供のころから寺院に幽閉されていました。人よりも大きなマナを持っているので、閉じこめておかないと魔力の源が外に溢れてしまうと言われて」
「やはりね」
しいちゃんは一人で分かったように言うが俺にはさっぱり分からない。
「しいちゃん。どういう事? マナってなに?」
「ランドール。あんたは、なぜ他人の精気を吸わなきゃならないか分かる?」
「さあ? 精気が食べ物だからじゃないの?」
「精気というのは、本来は他人のものを奪わなくても、身体の奥から湧いてくるものなのよ。その精気が沸いてくる幽体器官をマナと言うの」
「そうなんだ」
「前世のあなたにもそれがあった。ところが、この世界に転生したばかりのランドールにはマナがない。だから、この世界の精気を集めることができない。だから、他人から精気を奪う必要があるの。時間が経てば、あなたにもマナができてくるけどね」
「じゃあ、この世界に根付くというのは、俺の中にマナができるという事?」
「そう。そして、マナができたら、あんたはスライムじゃなくなり、別の何かになるわ」
「そうなんだ」
「この世界に根付いた人間は、普通にマナを持っている。でも、そのマナから発生する精気は人一人が活動するのに必要な量だけよ。でも、エリスちゃんから発生する精気は通常の一千倍。ランドールがエリスちゃんの精気を吸った途端に、いろんな能力に目覚めたのはそのせいね」
「マジ?」
「とにかく、エリスちゃんが追いかけられる理由はこれだわ。精気は魔力の源。これだけの魔力発生源がいたら、戦争で百人の魔法使いを動員できるわよ」
「さっきはシイちゃんが言ったマナキャリアーって、普通の人よりマナが大きいという意味?」
「ちょっと違うわね。マナにはもちろん個人差があるけど、エリスちゃんの場合は普通じゃない。神クラスよ」
「神!?」
言ってみれば、エリスは生きた弾薬庫あるいは燃料タンクみたいなものか。
可哀そうだな。こんな小さい女の子が、大人の醜い争いに巻き込まれて……
「エリスちゃん。あんた寺院に幽閉されていたと言ったわね。その寺院は、あんたを探知できなくする仕組みでもあったの?」
「分かりません。でも、そこにいる限りあたしから溢れる精気は外に出ないと……それと、あたしの精気が溜まりすぎないように、取り出す事をしていました」
「取り出すって……」
エリスは頬を赤らめた。
「その……気持ちいいことをすると……」
ああ、そういう事ね。さらに聞いてみると、エリスは物心ついたころから、そういう事をされていたそうだ。ただし、やっているのは女官で、男には触れられていない。
「とにかく、ここから逃げる前に、エリスちゃんを探知できないようする必要があるわ。そのために何をすればいいか分かるわね。ランドール」
「分かっているよ。最初の予定通り、報酬をいただけばいいんだね」
「エリスちゃんもいいわね?」
「それは、約束ですから。でも、優しくして下さい。姿もさっきの男の人の姿で……」
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