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香菜は巫女さん (三人称)
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(本編玖章の直後にあった事です。この話は三人称になります。)
卓也が背筋に悪寒を覚えたのは、休憩所でバイクのバッテリーを充電器にセットしたときの事。
「な……なんだ? 今の寒気は?」
卓也は知らなかった。この時、八百キロ北で中野刑事が卓也の写真にキスをしていたのだ。
「お兄さん、どうしました?」
背後から卓也に声をかけたのは、巫女装束を纏った香菜。
シェルター村で亡くなった人たちを弔うための慰霊祭を行う事になり、そこで香菜は巫女をやる事になったのだ。
そのための衣装を瀬露理がフリマで買い付けてくれたというので、卓也のサイドカーに乗せてもらって如月シェルターへ受け取りに行った帰りの事。途中バッテリーがなくなり、充電のために休憩所に立ち寄ったのだ。
この時、休憩所には誰もいなくて、卓也と香菜の二人きりになっていた。
「寒気がしたのだよ。何かに、憑りつかれたのかな?」
卓也には、死霊に憑りつかれる覚えはあった。というより、覚えがありすぎて誰なのか見当つかないのだ。
「竜二かな? 景虎かな? それとも紀里かな?」
「お兄さん、実は黙っていたのですが……私……」
「ん? どうしたの? 香菜ちゃん」
「私は、実は、視えるのです?」
「視えるって? 何が?」
「この世ならぬモノが」
「それって、霊?」
香菜はコクっと頷く。
「誰が憑りついているの? 竜二? 景虎?」
「いいえ、死霊ではありません。生霊です」
「生霊?」
「はい。色欲に溺れた女の情念が、お兄さんの背後に視えます」
「え? そっちの方は、ちょっとあまり覚えがないのだけど……」
「お兄さん。それ本気で、言っていますか?」
「え?」
卓也は、かなり本気で言っていた。少なくとも、四人の嫁たちは満足させているはずと……
「とにかく。今、払ってあげますね」
「香菜ちゃん。お祓いできるの?」
「今まで黙っていたけど、実は私は巫女の家系なのです。能力は受け継いでいます」
香菜は払い櫛を左右に振った。
「払いたまえ、清めたまえ、色霊退散」
卓也が背筋に悪寒を覚えたのは、休憩所でバイクのバッテリーを充電器にセットしたときの事。
「な……なんだ? 今の寒気は?」
卓也は知らなかった。この時、八百キロ北で中野刑事が卓也の写真にキスをしていたのだ。
「お兄さん、どうしました?」
背後から卓也に声をかけたのは、巫女装束を纏った香菜。
シェルター村で亡くなった人たちを弔うための慰霊祭を行う事になり、そこで香菜は巫女をやる事になったのだ。
そのための衣装を瀬露理がフリマで買い付けてくれたというので、卓也のサイドカーに乗せてもらって如月シェルターへ受け取りに行った帰りの事。途中バッテリーがなくなり、充電のために休憩所に立ち寄ったのだ。
この時、休憩所には誰もいなくて、卓也と香菜の二人きりになっていた。
「寒気がしたのだよ。何かに、憑りつかれたのかな?」
卓也には、死霊に憑りつかれる覚えはあった。というより、覚えがありすぎて誰なのか見当つかないのだ。
「竜二かな? 景虎かな? それとも紀里かな?」
「お兄さん、実は黙っていたのですが……私……」
「ん? どうしたの? 香菜ちゃん」
「私は、実は、視えるのです?」
「視えるって? 何が?」
「この世ならぬモノが」
「それって、霊?」
香菜はコクっと頷く。
「誰が憑りついているの? 竜二? 景虎?」
「いいえ、死霊ではありません。生霊です」
「生霊?」
「はい。色欲に溺れた女の情念が、お兄さんの背後に視えます」
「え? そっちの方は、ちょっとあまり覚えがないのだけど……」
「お兄さん。それ本気で、言っていますか?」
「え?」
卓也は、かなり本気で言っていた。少なくとも、四人の嫁たちは満足させているはずと……
「とにかく。今、払ってあげますね」
「香菜ちゃん。お祓いできるの?」
「今まで黙っていたけど、実は私は巫女の家系なのです。能力は受け継いでいます」
香菜は払い櫛を左右に振った。
「払いたまえ、清めたまえ、色霊退散」
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