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眩しい光を感じ、目が覚めた。
カーテンが少し開いておりそこから漏れていたらしい。
「んぅ…ハルしゃ…」
隣を見る。いない。トイレだろうか。
まだ覚醒できていないけれど、起きることにした俺は床に散乱した服から昨日のスウェットを探り身につけた。
ズボンも履こうと探すも見つからなかったので上だけでいいやと扉に向かう。腰辺りが痛むためゆっくりとした動作で歩きリビングに続くドアを開いた。
トーストのいい匂いが漂ってくる。
もしかして朝食を作ってくれてるのかな?
霞む眼を擦りながらキッチンへ行けば、案の定ハルさんがサラダを盛り付けているところだった。
「起きたか。」
「ん~ハルさんおはよぉ~」
手元に目線を落としたまま声をかけられ、寂しく感じた俺は、しょぼしょぼする目で見えないにも関わらず真っ直ぐ近付くと、後ろからぎゅっと抱きついた。それから広い背中に頬をくっ付けスリスリする。
そこでいくつか違和感を感じた。
パッと顔を上げるとなんとハルさんはスウェットの下だけ履いた格好をしている。つまり上半身裸。なんと目に毒な。
そしてもう一つ、腰に回した自分の手が掴めない。
変だなーと改めて自分の格好を見下ろすと、なんかデカい。
「あれ…これ…俺のじゃない…?」
昨夜、お揃いのスウェットでシた為、どうやら間違えて彼の方を着てしまったようだ。
「どうした……ッ!」
「あのね、俺…ッ!!」
素直に間違えたことを伝えようとハルさんを見あげると、顔を真っ赤にしていた。
どうしよう…!めちゃくちゃ怒ってる!
俺が見ている事に気付くと手の甲を口元に当て顔ごと逸らされた。
恋人でもないのに勝手に人の服を着ている迷惑なセフレと思われただろうか。それとも恋人気取りをする面倒臭いセフレと思われただろうか。
何が地雷で怒らせたのか分からないけれど、とにかくこのスウェットが原因なのは確かだ。今すぐ着替えなければいけない。
「あ…!ごめんなさい!俺ッ、間違えて…!ち、ちょっとまってて!すぐ着替えてくるから!…いっ!」
腰が痛む事を完全に忘れ、勢いよく振り返ったら、その腰を刺激してしまい思わず声が出た。やばい、やらかした。痛くて動けない。
「あ、あのッ…!ホントにごめんね!こんな勝手に…!すぐ、すぐにでも着替えたいんだけどッ、ちょっと待ってもらってもいい?ッ…ほんと、少しでいいから…我慢してくれる…?」
前屈みの状態で金縛りにあったかのように固定されてしまった俺は呻きながら必死に伝える。
効くかなと腰あたりを摩ってみるけれど、痛みが引く気配はない。
その間、ハルさんは全然喋らない。
どうしようどうしようと焦りだけが蓄積する。
「あのっほんと、ごめんなさい…。このままじゃハルさん風邪引いちゃうし…早くしないととは思ってるんだけど…俺…っ、」
なんてグズなんだ俺は。
セフレ解消という言葉が脳裏をよぎり涙が滲む。
「怒っちゃやだ…お願いだから…嫌わないで…?」
意図せず伸びた手はハルさんのズボンを掴んでいた。これもまた迷惑なのだろうと頭では分かっていたのに離せずいる俺は下から覗き込むように彼を見つめる。
「ッ!……はぁ…ホントなんなんだよお前。殺す気?」
「そ、そんなつもりじゃ…!ご、ごめんねっ、そんな死ぬほど嫌だったなんて知らなくて…」
「は?…とりあえず腰痛いんだろ?休んどけ」
「へ?…わっ」
突然屈んだかと思いきや持ち上げられた。
咄嗟に首に手を回す。
ハルさんはそのまま俺がさっき通ってきたルートを辿り、寝室に向かった。
吃驚した俺は思考が停止し抵抗もできずハルさんに運ばれたのだった。
カーテンが少し開いておりそこから漏れていたらしい。
「んぅ…ハルしゃ…」
隣を見る。いない。トイレだろうか。
まだ覚醒できていないけれど、起きることにした俺は床に散乱した服から昨日のスウェットを探り身につけた。
ズボンも履こうと探すも見つからなかったので上だけでいいやと扉に向かう。腰辺りが痛むためゆっくりとした動作で歩きリビングに続くドアを開いた。
トーストのいい匂いが漂ってくる。
もしかして朝食を作ってくれてるのかな?
霞む眼を擦りながらキッチンへ行けば、案の定ハルさんがサラダを盛り付けているところだった。
「起きたか。」
「ん~ハルさんおはよぉ~」
手元に目線を落としたまま声をかけられ、寂しく感じた俺は、しょぼしょぼする目で見えないにも関わらず真っ直ぐ近付くと、後ろからぎゅっと抱きついた。それから広い背中に頬をくっ付けスリスリする。
そこでいくつか違和感を感じた。
パッと顔を上げるとなんとハルさんはスウェットの下だけ履いた格好をしている。つまり上半身裸。なんと目に毒な。
そしてもう一つ、腰に回した自分の手が掴めない。
変だなーと改めて自分の格好を見下ろすと、なんかデカい。
「あれ…これ…俺のじゃない…?」
昨夜、お揃いのスウェットでシた為、どうやら間違えて彼の方を着てしまったようだ。
「どうした……ッ!」
「あのね、俺…ッ!!」
素直に間違えたことを伝えようとハルさんを見あげると、顔を真っ赤にしていた。
どうしよう…!めちゃくちゃ怒ってる!
俺が見ている事に気付くと手の甲を口元に当て顔ごと逸らされた。
恋人でもないのに勝手に人の服を着ている迷惑なセフレと思われただろうか。それとも恋人気取りをする面倒臭いセフレと思われただろうか。
何が地雷で怒らせたのか分からないけれど、とにかくこのスウェットが原因なのは確かだ。今すぐ着替えなければいけない。
「あ…!ごめんなさい!俺ッ、間違えて…!ち、ちょっとまってて!すぐ着替えてくるから!…いっ!」
腰が痛む事を完全に忘れ、勢いよく振り返ったら、その腰を刺激してしまい思わず声が出た。やばい、やらかした。痛くて動けない。
「あ、あのッ…!ホントにごめんね!こんな勝手に…!すぐ、すぐにでも着替えたいんだけどッ、ちょっと待ってもらってもいい?ッ…ほんと、少しでいいから…我慢してくれる…?」
前屈みの状態で金縛りにあったかのように固定されてしまった俺は呻きながら必死に伝える。
効くかなと腰あたりを摩ってみるけれど、痛みが引く気配はない。
その間、ハルさんは全然喋らない。
どうしようどうしようと焦りだけが蓄積する。
「あのっほんと、ごめんなさい…。このままじゃハルさん風邪引いちゃうし…早くしないととは思ってるんだけど…俺…っ、」
なんてグズなんだ俺は。
セフレ解消という言葉が脳裏をよぎり涙が滲む。
「怒っちゃやだ…お願いだから…嫌わないで…?」
意図せず伸びた手はハルさんのズボンを掴んでいた。これもまた迷惑なのだろうと頭では分かっていたのに離せずいる俺は下から覗き込むように彼を見つめる。
「ッ!……はぁ…ホントなんなんだよお前。殺す気?」
「そ、そんなつもりじゃ…!ご、ごめんねっ、そんな死ぬほど嫌だったなんて知らなくて…」
「は?…とりあえず腰痛いんだろ?休んどけ」
「へ?…わっ」
突然屈んだかと思いきや持ち上げられた。
咄嗟に首に手を回す。
ハルさんはそのまま俺がさっき通ってきたルートを辿り、寝室に向かった。
吃驚した俺は思考が停止し抵抗もできずハルさんに運ばれたのだった。
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