旦那様、離婚してくださいませ!

ましろ

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3章 3年目の結婚記念日。そして──

45.

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「先程のローズ嬢の願いですが、まずは意識改革から始めるというのはどうでしょうか?」

「意識改革?」

「はい。私も友人に言われて気付いたのですが、相手を大切にできないということは、その人が側にいてくれることを当たり前だと感じているからだと思うのです。
ですからその考えを変えるために、年に一度、女性に感謝する日を作ってはいかがでしょうか?」

「感謝する日?」

「そうです。その日は一年の感謝の気持ちとして、妻や母に感謝の言葉と花を送るというのはいかがでしょうか?
言葉にするのが苦手な人でも、そういう日だからと思えば花の一輪くらいは渡せるでしょう」

「強制でやらせるのか?それではあまり意味がないのではないか?」

「強制ではありません。そうですね、まずイヴォンヌ様に協力していただけると助かります。パーティーなどで噂を流してもらいたいのです。他国では女性に感謝の気持ちを捧げる日があるらしいですよ、素敵ですよね、等と言って貰えればじゅうぶんです。そして、ある程度噂が広まった所で国王陛下や王子殿下が感謝の気持ちとして花を渡してくだされば効果は大きいかと。実際に王妃殿下が喜ばれる姿を見たら、目新しさと相まって貴族にはすぐに広まることでしょう。
そうだな、女神の祝日などが覚えやすくていいかもしれません。そして、翌日の新聞に載せていただければ平民層にも広められるのではないでしょうか。
毎年の行事にできますし、それに関連付けて花だけでなくお菓子やプレゼントを用意したら経済効果も見込めるのではないかと思われます」

「なるほどな。それは面白いかもしれん。感謝の気持ちを貰って不快になる人間もいない。よろこんだ顔を見れたら嬉しいしな。いきなり大きく変えようとする反発する力も強くなるだろうが、年に一度くらいなら受け入れられるだろうし、続ける事で感謝するべき対象だと刷り込むこともできる。」

「そうですね、私もあなたから感謝の気持ちを貰えたら嬉しいわ。ローズはどう思う?」

「とても素敵だと思います!こんな素敵な提案をしてくださってありがとうございます、キリアン様!」

「あ、いや。……そう言ってくれて、こちらこそありがとう」


離婚してからやっと会話が成り立つなんておかしいわね。でも嬉しいわ。憎み合って別れるよりずっといいもの。


「キリアン様は本当にお母様思いなんですね!」

「……は?」

「だってお母様を思って色々考えられたのでしょう?素晴らしいと思います。親孝行な息子さんで幸せですね、お義母様!」


私のお願い事で、お母様まで幸せにできるなんて嬉しいわ。


「おかしいわね。途中まですごくいい感じだったのに、一気に残念になったわ」


王妃様が残念そうに私を見ている。なぜ?


「……ローズ嬢。私は最近自分の気持ちを素直に伝えていこうと努力しているんだ。だから今の気持ちを伝えてもいいだろうか?」

「まぁ、とてもいいことだと思いますわ!遠慮なさらないでどうぞ、おっしゃって?」

「君は頭の回転がとても早い。理解力もある。なのに一部分とてもにぶい!」

「えっ?!なんでですか!」

「ローズ、さすがにキリアンが可哀想よ。なぜ今の流れでシュバリエ夫人の為だと思うのかしら。どう考えてもあなたとの事を反省して色々考えたのではないの?」

「!!」


そうなの?キリアン様が反省してるなんて考えもしなかった。そうか、だから今日は印象が違うと思ったのかしら。


「こうやって人はすれ違っていくのだな。面白いものを見せてもらったよ。
では、感謝の日は実行しよう。キリアン、他にも考え付いたら教えてほしい。まぁ、がんばれ。
では、先に失礼するよ」

「……お気遣いありがとうございます」

「キリアン殿。その感謝の日をリシャールでも提案していいだろうか?」

「え、はい、もちろんです!」

「ありがとう。きっと喜ばれるよ」


元夫とあたらしく夫になる人が仲良く話してるのって不思議だわ。これでいいのかしら。








「あの、フォーレ侯爵閣下。少しだけローズ嬢と話をさせていただけないでしょうか。もちろん閣下も同席していただいてかまいません」


何を話すというのだろう。でも、リシャールに行ったら彼とはもう会わないかもしれない。
ディミトリ様を見るとやさしく微笑んでくれる。
そうね、最後に話をした方がいいのかも。


「私は構いませんよ。ローズが決めてください」

「はい。ではお話を伺いますわ。
リュカ、少しだけ待っていてくれる?」



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