旦那様、離婚してくださいませ!

ましろ

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3章 3年目の結婚記念日。そして──

37.

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明日、新年を祝う宴が王宮で開かれる。
離婚が成立した私のエスコートはもちろんキリアン様ではない。今回は可愛い弟のリュカがこの大役を引き受けてくれた。

ごめんね、リュカ。たぶん私達に視線が集中するわ。あなたのことは姉様が必ず守るから!

私が怪我をした時は、目に涙を浮かべて不安そうにしていたのにね。「姉様は何も心配しないでオレにエスコートされて。」とにっこり微笑まれた時にはうっかりときめいてしまったわ。私と同じで小柄だと思っていたのに、すっかり身長も伸びて格好良くなってるんですもの。
お付き合いしてる子もいると聞いた時は本当に驚いた。彼女のエミリーさんはまだ14歳で社交会デビューしていないので今回は私に譲ってくれた。「リュカ様、ローズ様をしっかり守ってね!」と言ってくれて、とても可愛らしくていい子なのだ。子爵家は安泰ね。


──やっとフォーレ侯爵に会える


離婚してから会うのは初めて。なんて伝えたらいいのだろう。

……待って。本当に何て伝えたらいいの?
離婚できました!と堂々と言うのって嫌らしいわよね。というか、離婚してたった一週間やそこらで愛の告白をしてもいいものなの?
愛の───きゃ~~~!!
こ、告白なんてした事がないわ!何?なんて言うの?好きです?あ、愛して、なんて言えるわけがない!どうしよう!恥ずかしくて無理な気がする!
明日はリュカもいるのよ、いつ言うの?どこで?離婚後で皆が注目してるのに言うチャンスなんてある?
まさか皆の前で振られたりしたら……死ねるわ。確実に死ぬ。
え、どうしよう、どうする?イヴォンヌ様はよく皆の前でキリアン様を誘惑なんてできたわね。私にもその鋼の心を分けてほしいわ。
そういえばキリアン様は明日来るのかしら。いえ、元夫を気に掛けている場合ではないわ。
もう、どうしよう!!

落ち着くのよ私。これでも一度は結婚してたのよ。今更何をうろたえるの。
できる、私はできる!告白なんて余裕のはず!
よし、寝るのよ。このまま寝不足になったら勝負に負けるわ。頑張れ私!






「ローズ様、寝不足ですか?」


……結局あまり眠れなかった。恋愛を成就させた女性を尊敬するわ。私には政略結婚の方が合っていたのかもしれない。


「大丈夫です!お嬢様を誰よりも美しくしてみせますわ!」


ありがとうございます。告白1つに狼狽えている臆病者の心にしみるわ。





「姉様もう行ける?あ、すごい綺麗だね!そのドレス姉様によく似合ってるよ。」


淡いグリーンのドレスにイエローダイヤと琥珀のアクセサリー。お義母様が今日の為にと一式プレゼントして下さったのだ。少し大人っぽいデザインだけど、色合いが華やかで私も気に入っている。
それにしてもリュカは褒め上手ね。どこかの誰かさんもこれくらい言えたらよかったのに。


「リュカも素敵よ。待たせたわね。」

「大丈夫だよ。今日の主役は絶対に姉様だ。
では、そんな素敵な姉上をエスコートする栄誉をお与えください。」


やだ、ウチの弟が本当にかっこいいわ。これはもう絶対にキリアン様より上ね。自慢できる!
よし、こんなすごい味方がいるのよ。みっともない姿は見せられないわね。


「よろしくね、リュカ。頼りにしているわ。」

「うん、行こう!」








ふふ、分かりやすいくらいにあちこちから視線が突き刺さるわね。


「ご機嫌よう、ローズ夫人──いえ、ルロワ令嬢とお呼びした方がいいのかしら?」

「まぁ、マテュー伯爵夫人。どうなさったの?今までもあなたからローズ夫人と呼ばれたことはなかったかと。」


噂好きなあなたと親しくしたいとは思わないわ。


「……ずいぶん堂々とされているのね。エスコートは弟さん?あなたも大変ね。お姉様がこのようなことになって。お気の毒だわ。」

「初めてお目にかかります。ルロワ子爵家のリュカと申します。このような、とは?あぁ!こんなに美しい姉を持って、ということですか?そうですね、自慢の姉です。おかげさまですっかり目が肥えてしまって、こういう場でも中々姉以上の女性を見つけることができません。困りますよね!」

「な!!」

「ですがご心配は無用です。私にも素敵な出会いがありまして、外見だけではなく心の美しい女性と出会うことができました。
あ、姉上、あちらでシュバリエ公爵夫妻がお待ちのようですよ。行きましょう。」


すごい。リュカがほんとうに強いわ。あのゴシップ夫人に勝つなんて。


「お義父様、お義母様!」

「まぁ、ローズさんやっぱりそのドレスで正解ね。とても似合っているわ。」


あらあら、皆驚いてる。離婚したはずなのに仲がいいとは思わなかったんでしょうね。私も驚きだもの。


「ありがとうございます。弟にも褒められました。」

「あなたったら相変わらずね。確かにリュカさんは素敵ですけど、褒められる相手が違うでしょう?」

「え?相手って」


まさかキリアン様が来てるの?!
慌てて周りを見渡す。いや、いないわよね?
じゃあ、誰のことを……

 

あ、フォーレ侯爵!!


え?その姿は────







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