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7.空回る努力
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「シンディーさん、15歳の令嬢達の集まりで浮かないドレスはありますか!」
週末はもうすぐ。それなのに往生際悪く、こんなことを聞きに来た私は馬鹿だろうか。
「あらあら。また難しい年頃の集まりね」
「ベニーの同級生の誕生日パーティーがあるんです。でも、先日選んで下さったマーメイドタイプだと大人っぽくて浮いてしまう自信があるんですよ」
背がデカイ胸もデカイ3つも年上の私が社交会デビューもまだの少女達の輪の中に。……考えただけで涙が出そうだ。
「気持ちは分かるけど、浮かないのは無理よ?貴方はどうやっても大人っぽい美人だし、これまた美人のベンジャミンがパートナーでしょう?」
「ベニーめ……」
どこまでも私を傷付けるのが得意な男だ。
「はいはい。呪詛を吐かないの。仕方が無いわね。ちょっと待っていなさい。というか、何故保護者同伴なの?カーティス」
「お前が暴走するのを止める為だ」
そうです。本日のお供はカーティス様です。
だってベニーは授業があるし、でも、一人でシンディーさんと対決する勇気は無かったのよ。カーティス様から一緒に行こうと言って下さってホッとしてしまった。
「失礼ね、ちゃんと似合う物を選ぶわよ!」
そう言って着せてくれたのはAラインのドレスだ。胸元がハートカットになっていて、可愛らしい。色味も淡いグリーンで、スカートは軽やかなオーガンジーで清楚さもある。
これなら先日購入したベニーのスーツにも合うわね。
「カーティス様、どうでしょう?」
自分的には似合ってると思う。先日のドレスよりは15歳に混ざれるのではないだろうか。
「綺麗だが……肌が見え過ぎでは?」
「駄目な男ね。胸元を隠すと太って見えるのよ」
「いや、例えば…、あのドレスみたいに少しだけ袖がある方が」
「ああ、オフショルダータイプ?そうね、スカートと同じ生地で透け感のあるオフショルダーにするのも有りね」
「間に合うか?」
「もちろんよ、任せなさい。あ、そういえばいい物があるわ」
そう言って持ってきてくれたのは、小さな黄色の石と小振りなダイヤで出来たネックレスとイヤリングだ。
「これはシトリンですか?」
「そ。華奢で可愛らしいし、あの子の色よ。ピッタリでしょう?」
本当に可愛らしいわ。
「素敵です、シンディーさんありがとうございます」
「テーマとしては春の妖精かしら。髪型も、キッチリ纏め過ぎ無いほうがいいわね」
「分かりました、そう頼んで見ます!」
妖精だなんて面映いけれど、テーマがあった方が髪やメイクも整えやすいだろう。
「カーティス様もお付き合い下さりありがとうございました」
「いや、いつもベンの為に努力してくれて感謝しているんだ。その気持ちとして受け取って欲しい」
「固っ苦しいわね。はいはい、可愛い息子ちゃんにはお揃いのカフスとタイピンがあるわよ」
「……商売上手だな」
「オホホッ、お買上げありがとう♡」
カーティス様も心配なんだろうな。ベニーがあんなふうに言うから、こんなにも私に気遣って下さって。
私は恵まれているわ。こんなにも親身になって下さるお義父様がいるのだもの。
ベニーとだって──いや、期待し過ぎるとまた痛い目を見るわね。
でも、ご友人の誕生日パーティーに誘ってくれたもの。そこまで大嫌いでは無いのよね?キスはした。体に触れようとも……それなら、嫌悪感を持つ程じゃないなら。
政略結婚としては上々だと思おう。
「シェリー?」
「あ、はい!」
「疲れただろう。何か甘い物でも食べるかい?」
甘いもの!
「ん~、誘惑には抗い難いのですが、パーティーがあるのでやめておきます」
「?週末だろう?」
「……太りたくないデス」
だって戦場は15歳ワールド。まだ大人になりきらない華奢な令嬢達の世界なのですっ!
「そうか。女性は大変だな?では、日持ちのするものを買って帰ろう。パーティーが終わってから食べるといい」
「……ありがとうございます」
うわ、素敵な対応だわ。私の気持ちを受け入れつつも、ご自分の気持ちもさり気なく叶えてしまう。
やっぱり大人だなぁ。
それから、ベニーへのお土産も購入して、幸せな気分で帰宅した。
♢♢♢
「お子様の集まりに招待して悪かったな」
「え」
「そんなに無理してまで来てくれなくていい。俺一人で行くから」
「!」
どうして……何がいけなかったの?
「ベニー、私は貴方のご友人に紹介して頂けるのを楽しみにして」
「いいよ、無理しなくて」
「無理なんか!」
少しでもよく見られたいと努力することは、そんなにも駄目なことなの!?
「私はただ、貴方の婚約者として恥ずかしく無いようにと」
「そうか。俺の選んだ物は恥ずかしかったんだな」
どうして?何故そんな揚げ足を取るようなことばかり!
「だって!老けて見えるのですものっ!!」
「は?」
「どうせ私は年増ですわよ!レディにとって3つの年の差がどれ程の脅威か貴方に分かってっ!?」
怒りん坊のベニーには分からないのだわっ!私がどれだけ居た堪れないか!
「貴方の保護者にはなりたくなかったの!だから少しでも若く見えるようシンディーさんにお願いしたの!悪かったわね老け顔でっ!!」
私だってもっと可愛らしく生まれたかったわ!でも、どうしようもないじゃないっ!!
「………俺の為?」
「知らない!もう行かないわっ!一人で行って可愛らしいご令嬢に囲まれてニヤニヤしてればいいのよ!」
もう、全てが嫌でベニーを部屋から追い出そうとしたのに、
「可愛い、ね、俺の為?」
なんなの、さっきまで怒ってたくせにっ!
「……私の為よ」
「もう一度俺の目を見て言って」
何なの?どうしてここで私への羞恥プレイが発生するのよ!
「っ、貴方なんて大嫌いっ!!」
そう叫んで部屋のドアを閉め……
「おい、聞き捨てならないな」
られなかった!
「もう!出てって!」
「大嫌いを撤回しろよ」
「じゃあ、パーティーに連れて行きなさいよっ!」
「連れて行くから好きだと言え」
そんなこと、さっきも言ってないわっ!!
「~~っ、馬鹿っっ!!」
胸倉を掴んで口付ける。驚いたベニーの顔を見て少しだけ溜飲が下がる。
「ばーかっ!」
どんっ!と突き放してドアを閉めた。
ベニーなんてベニーなんてっ!
もう知らないんだからっ!!
週末はもうすぐ。それなのに往生際悪く、こんなことを聞きに来た私は馬鹿だろうか。
「あらあら。また難しい年頃の集まりね」
「ベニーの同級生の誕生日パーティーがあるんです。でも、先日選んで下さったマーメイドタイプだと大人っぽくて浮いてしまう自信があるんですよ」
背がデカイ胸もデカイ3つも年上の私が社交会デビューもまだの少女達の輪の中に。……考えただけで涙が出そうだ。
「気持ちは分かるけど、浮かないのは無理よ?貴方はどうやっても大人っぽい美人だし、これまた美人のベンジャミンがパートナーでしょう?」
「ベニーめ……」
どこまでも私を傷付けるのが得意な男だ。
「はいはい。呪詛を吐かないの。仕方が無いわね。ちょっと待っていなさい。というか、何故保護者同伴なの?カーティス」
「お前が暴走するのを止める為だ」
そうです。本日のお供はカーティス様です。
だってベニーは授業があるし、でも、一人でシンディーさんと対決する勇気は無かったのよ。カーティス様から一緒に行こうと言って下さってホッとしてしまった。
「失礼ね、ちゃんと似合う物を選ぶわよ!」
そう言って着せてくれたのはAラインのドレスだ。胸元がハートカットになっていて、可愛らしい。色味も淡いグリーンで、スカートは軽やかなオーガンジーで清楚さもある。
これなら先日購入したベニーのスーツにも合うわね。
「カーティス様、どうでしょう?」
自分的には似合ってると思う。先日のドレスよりは15歳に混ざれるのではないだろうか。
「綺麗だが……肌が見え過ぎでは?」
「駄目な男ね。胸元を隠すと太って見えるのよ」
「いや、例えば…、あのドレスみたいに少しだけ袖がある方が」
「ああ、オフショルダータイプ?そうね、スカートと同じ生地で透け感のあるオフショルダーにするのも有りね」
「間に合うか?」
「もちろんよ、任せなさい。あ、そういえばいい物があるわ」
そう言って持ってきてくれたのは、小さな黄色の石と小振りなダイヤで出来たネックレスとイヤリングだ。
「これはシトリンですか?」
「そ。華奢で可愛らしいし、あの子の色よ。ピッタリでしょう?」
本当に可愛らしいわ。
「素敵です、シンディーさんありがとうございます」
「テーマとしては春の妖精かしら。髪型も、キッチリ纏め過ぎ無いほうがいいわね」
「分かりました、そう頼んで見ます!」
妖精だなんて面映いけれど、テーマがあった方が髪やメイクも整えやすいだろう。
「カーティス様もお付き合い下さりありがとうございました」
「いや、いつもベンの為に努力してくれて感謝しているんだ。その気持ちとして受け取って欲しい」
「固っ苦しいわね。はいはい、可愛い息子ちゃんにはお揃いのカフスとタイピンがあるわよ」
「……商売上手だな」
「オホホッ、お買上げありがとう♡」
カーティス様も心配なんだろうな。ベニーがあんなふうに言うから、こんなにも私に気遣って下さって。
私は恵まれているわ。こんなにも親身になって下さるお義父様がいるのだもの。
ベニーとだって──いや、期待し過ぎるとまた痛い目を見るわね。
でも、ご友人の誕生日パーティーに誘ってくれたもの。そこまで大嫌いでは無いのよね?キスはした。体に触れようとも……それなら、嫌悪感を持つ程じゃないなら。
政略結婚としては上々だと思おう。
「シェリー?」
「あ、はい!」
「疲れただろう。何か甘い物でも食べるかい?」
甘いもの!
「ん~、誘惑には抗い難いのですが、パーティーがあるのでやめておきます」
「?週末だろう?」
「……太りたくないデス」
だって戦場は15歳ワールド。まだ大人になりきらない華奢な令嬢達の世界なのですっ!
「そうか。女性は大変だな?では、日持ちのするものを買って帰ろう。パーティーが終わってから食べるといい」
「……ありがとうございます」
うわ、素敵な対応だわ。私の気持ちを受け入れつつも、ご自分の気持ちもさり気なく叶えてしまう。
やっぱり大人だなぁ。
それから、ベニーへのお土産も購入して、幸せな気分で帰宅した。
♢♢♢
「お子様の集まりに招待して悪かったな」
「え」
「そんなに無理してまで来てくれなくていい。俺一人で行くから」
「!」
どうして……何がいけなかったの?
「ベニー、私は貴方のご友人に紹介して頂けるのを楽しみにして」
「いいよ、無理しなくて」
「無理なんか!」
少しでもよく見られたいと努力することは、そんなにも駄目なことなの!?
「私はただ、貴方の婚約者として恥ずかしく無いようにと」
「そうか。俺の選んだ物は恥ずかしかったんだな」
どうして?何故そんな揚げ足を取るようなことばかり!
「だって!老けて見えるのですものっ!!」
「は?」
「どうせ私は年増ですわよ!レディにとって3つの年の差がどれ程の脅威か貴方に分かってっ!?」
怒りん坊のベニーには分からないのだわっ!私がどれだけ居た堪れないか!
「貴方の保護者にはなりたくなかったの!だから少しでも若く見えるようシンディーさんにお願いしたの!悪かったわね老け顔でっ!!」
私だってもっと可愛らしく生まれたかったわ!でも、どうしようもないじゃないっ!!
「………俺の為?」
「知らない!もう行かないわっ!一人で行って可愛らしいご令嬢に囲まれてニヤニヤしてればいいのよ!」
もう、全てが嫌でベニーを部屋から追い出そうとしたのに、
「可愛い、ね、俺の為?」
なんなの、さっきまで怒ってたくせにっ!
「……私の為よ」
「もう一度俺の目を見て言って」
何なの?どうしてここで私への羞恥プレイが発生するのよ!
「っ、貴方なんて大嫌いっ!!」
そう叫んで部屋のドアを閉め……
「おい、聞き捨てならないな」
られなかった!
「もう!出てって!」
「大嫌いを撤回しろよ」
「じゃあ、パーティーに連れて行きなさいよっ!」
「連れて行くから好きだと言え」
そんなこと、さっきも言ってないわっ!!
「~~っ、馬鹿っっ!!」
胸倉を掴んで口付ける。驚いたベニーの顔を見て少しだけ溜飲が下がる。
「ばーかっ!」
どんっ!と突き放してドアを閉めた。
ベニーなんてベニーなんてっ!
もう知らないんだからっ!!
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