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「急にすみません、わざわざありがとうございます。」

「いえ、何かあったんですか?」


私は宮野の誘いに悩んだ挙句行くことにした。二人で話せば何か裏を探れるんじゃないかと思った。


「いえ、特段何があったわけではありません。ただ前の話が少し気になりまして・・・」

「前の話ですか?」

「はい、実は・・私学生時代はオカ研に入っていたくらいオカルト系の話題が好きで、前は頑張って抑えていたんですが話を聞きたくてうずうずしていたんです。」


_________全然隠れてなかったけどな・・・

あの日向けられたキラキラの笑顔を思い浮かべながら考える。

「もし川本さんが良ければ、体験したお話を聞かせていただけないですか?」

目の奥をキラキラさせながら聞くその姿は犬そっくりで私は思わず了承した。

それからはほとんど私の話を宮野が聞いているだけで知れた宮野の実態は宮野がオカルト好きだと言うことだけだった。

一通り話を聞いて満足したようで、前より柔らかい表情で美味しそうにグラタンを頬張っている。



このままでは埒が開かない。もちろん祥子の言っていることもわかる。けど今私の前でご飯を頬張るこの人がとても悪人には思えない。私は私がこの目で見たものを信じる。_________


「宮野さん」

「?」

口に頬張ったばかりの彼は目をきょとんとさせてまっすぐこっちを見ている。

「私もやります、その、ボランティア?ってやつ」

「!?」

驚いた彼は飲み込んでからききかえした。

「いいんですか!?」

「はい、断る理由も今のところないですし。あ、ただもしヤバいなと思うことがあったらすぐに逃げます。」

「もちろんそうしてください!いや~めっちゃ嬉しいな~、あ、あれだったら田川も呼びませんか?このまま歓迎会ということで!」


のちに到着した田川さんも一緒に歓迎会をすることになった。

「なるほど、そういうことになってたんですね、宮野さんよかったですね」

「良かった?なんでですか?」

「宮野が川本さんの霊感の話を聞いてからもうずっっっっと川本さんに入ってほしいってうるさかったんです。」

「え、うるs・・?」

「あ~そういうことですか」

「いや、あ~じゃないでしょ」

確かにこの前の態度とわざわざ心霊話を聞くためだけに会えるか聞いてきたのも考えると頷ける。

二人は付き合っているわけではないが田川さんの治療の期間も含め一年以上一緒にいるそうで、関係的には同僚と似ているから最初の自己紹介の時も同僚と紹介したそうだった。

「もしわからないことがあればなんでも聞いてください!」

「ありがとうございます。あの、早速になるんですけど、活動の正式名称とかはないんですか?」

「あ、やっぱりそこ気になりますよね~、実は二人でやってる間はつけなくていいから、次メンバーが増えたらその人と一緒に考えようって話してたんです。」

そうして3人で考え始めるが、なかなかいいものが浮かばない。

考えた挙句口を開いた。

「ARTとかどうですか?ADHDのA、霊感のR、多重人格のTでART」

「おお、それいいですね!田川はどう?俺はいいと思う」

「私もいいと思います、かっこいいですね」

満場一致ARTに決まった。ドリンクバーのジュースで祝杯をあげる。

「それじゃあ、これからのARTの活躍を願って!乾杯!」

これが、ボランティア団体ARTの始まりだった。
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