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第二章
イフリートの秘密
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翌日の13時過ぎ、クリスティアナとカイト、スティーブの3人は城の敷地内を歩いていた。スティーブがひそひそ声でカイトに尋ねる。
「カイト、何で今日は休日の俺がお前に付き合わなきゃいけないんだ?」
「ちゃんと休日手当てが出る。他に特別手当も。」
「え、マジ?やった!」そこでスティーブは、はたと気付いた。
「何か話しがうますぎないか?」
「う~ん、最後に大仕事があるから・・・かな・・・」
「おい!何で俺の顔を見て答えない!!」
二人のとてもひそひそとは思えない声を聞きながら、クリスティアナは自分の緊張が高まるのを感じていた。
『私が理解できる程度の性癖だったら良いのだけど・・・』
カイトに見せられるのは、もはやイフリートの危ない性癖だとしか思っていないクリスティアナなのであった。
カイトに案内されたのは騎士団の団長専用の一戸建てである。団長、副団長になると妻帯者も多く、無料で一戸建てが貸与されるのだ。ちなみに二人共まだ独身である。
「まあ、可愛い家。」
庭はよく手入れされ、家もレンガ造りで洒落ている。
『これが可愛い?』
お屋敷に近い結構な大きさのその家を`可愛い‘と思えるのは、やはりお城に住んでいる姫君だからであろう。とカイトとスティーブは考えた。
カイトが鍵を取り出して扉を開ける。
「何でお前が鍵を持っているんだ?」
「サイラス副団長に訳を話してスペアを貸してもらった。」
「俺には馬小屋の鍵も貸してくれないのに!」
「お前は信用がないからな。」
スティーブの日頃の勤務態度がさりげなく暴露されながらも中に入ると、玄関ホールがあり、幾つかの部屋に通じる扉と、二階への階段があった。三人で階段を上り、とある扉の前でカイトが止まった。
「クリスティアナ様、こちらはイフリート団長の寝室です。これからある物をご覧に入れますが、それを見てどうぞ引かないであげて下さい。」
クリスティアナが唾を飲み込んだ。
「分かったわ、カイト。」
カイトは鍵を開け、ノブに手を掛け、そしてまた振り返る。
「団長を嫌いにならないで頂けますか?」
カイトの必死さが伝わってくる。
「大丈夫よ、カイト。」
クリスティアナは覚悟した。
スティーブが痺れを切らす。
「どうしたんだよカイト、お前らしくもない。早く開けて差し上げろよ。」
カイトは意を決したようにドアを開けた。そこには――
「これは・・・」
寝室はクリスティアナで溢れ返っていた。笑ったもの、泣いたもの、笑顔のものに、お澄まししたもの。ありとあらゆるクリスティアナの絵姿が所狭しと張ってあった。
幼い時から現在のものまで、絵葉書に、銅版画、新聞の切り抜きに、ポスター、建国300年記念に発売された記念切手もある。
スティーブはといえば『わぁ・・・これ見せちゃったの・・・』という顔をしているし、クリスティアナはただただ驚いている。
中でも一番目を引いたのは等身大のクリスティアナの絵姿であった。その絵姿の中のクリスティアナは春先の公務で身に着けていた淡いブルーのドレスを着ていて、優しくこちらを見て微笑んでいる。
「それは宮廷画家に頼み込んで描いてもらった物だそうです。壁に張ってあるのは全て観賞用で、こちらの棚に綺麗に整理されているのがコレクション用です。」
『それ・・・言っちゃっていいの・・・?』
スティーブの顔が固まっている。
最初にカイトが、次にスティーブが何かに感づいた。
「クリスティアナ様、俺達がここにいる事は絶対に内緒でお願いします。」
そう言って二人共クローゼットの中に隠れてしまった。
『なぜ、クローゼットの中?』
クリスティアナが不思議そうにクローゼットを見ていると、ゴトッと背後で何かが落ちる音がした。振り返るとそこには賊が入ったとでも思ったのか、用意したナイフを手から落としたイフリートが立っていた。
「カイト、何で今日は休日の俺がお前に付き合わなきゃいけないんだ?」
「ちゃんと休日手当てが出る。他に特別手当も。」
「え、マジ?やった!」そこでスティーブは、はたと気付いた。
「何か話しがうますぎないか?」
「う~ん、最後に大仕事があるから・・・かな・・・」
「おい!何で俺の顔を見て答えない!!」
二人のとてもひそひそとは思えない声を聞きながら、クリスティアナは自分の緊張が高まるのを感じていた。
『私が理解できる程度の性癖だったら良いのだけど・・・』
カイトに見せられるのは、もはやイフリートの危ない性癖だとしか思っていないクリスティアナなのであった。
カイトに案内されたのは騎士団の団長専用の一戸建てである。団長、副団長になると妻帯者も多く、無料で一戸建てが貸与されるのだ。ちなみに二人共まだ独身である。
「まあ、可愛い家。」
庭はよく手入れされ、家もレンガ造りで洒落ている。
『これが可愛い?』
お屋敷に近い結構な大きさのその家を`可愛い‘と思えるのは、やはりお城に住んでいる姫君だからであろう。とカイトとスティーブは考えた。
カイトが鍵を取り出して扉を開ける。
「何でお前が鍵を持っているんだ?」
「サイラス副団長に訳を話してスペアを貸してもらった。」
「俺には馬小屋の鍵も貸してくれないのに!」
「お前は信用がないからな。」
スティーブの日頃の勤務態度がさりげなく暴露されながらも中に入ると、玄関ホールがあり、幾つかの部屋に通じる扉と、二階への階段があった。三人で階段を上り、とある扉の前でカイトが止まった。
「クリスティアナ様、こちらはイフリート団長の寝室です。これからある物をご覧に入れますが、それを見てどうぞ引かないであげて下さい。」
クリスティアナが唾を飲み込んだ。
「分かったわ、カイト。」
カイトは鍵を開け、ノブに手を掛け、そしてまた振り返る。
「団長を嫌いにならないで頂けますか?」
カイトの必死さが伝わってくる。
「大丈夫よ、カイト。」
クリスティアナは覚悟した。
スティーブが痺れを切らす。
「どうしたんだよカイト、お前らしくもない。早く開けて差し上げろよ。」
カイトは意を決したようにドアを開けた。そこには――
「これは・・・」
寝室はクリスティアナで溢れ返っていた。笑ったもの、泣いたもの、笑顔のものに、お澄まししたもの。ありとあらゆるクリスティアナの絵姿が所狭しと張ってあった。
幼い時から現在のものまで、絵葉書に、銅版画、新聞の切り抜きに、ポスター、建国300年記念に発売された記念切手もある。
スティーブはといえば『わぁ・・・これ見せちゃったの・・・』という顔をしているし、クリスティアナはただただ驚いている。
中でも一番目を引いたのは等身大のクリスティアナの絵姿であった。その絵姿の中のクリスティアナは春先の公務で身に着けていた淡いブルーのドレスを着ていて、優しくこちらを見て微笑んでいる。
「それは宮廷画家に頼み込んで描いてもらった物だそうです。壁に張ってあるのは全て観賞用で、こちらの棚に綺麗に整理されているのがコレクション用です。」
『それ・・・言っちゃっていいの・・・?』
スティーブの顔が固まっている。
最初にカイトが、次にスティーブが何かに感づいた。
「クリスティアナ様、俺達がここにいる事は絶対に内緒でお願いします。」
そう言って二人共クローゼットの中に隠れてしまった。
『なぜ、クローゼットの中?』
クリスティアナが不思議そうにクローゼットを見ていると、ゴトッと背後で何かが落ちる音がした。振り返るとそこには賊が入ったとでも思ったのか、用意したナイフを手から落としたイフリートが立っていた。
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