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第十二章
腕(かいな)の中のリリアーナ 123(後日談) イチャイチャ回は続く……(^◇^)
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クリスティアナがノックをしながら声をかける。
「シンシア様、私です。クリスティアナです」
数秒の後、扉が開いて侍女が顔を出した。
「クリスティアナ王女殿下、どうぞお入りください」
侍女が一歩下がって道を空け、深く頭を垂れる。クリスティアナはその前を通り、ソファに腰掛けているシンシアに歩み寄った。
「シンシア様、お久しぶりですね」
クリスティアナが微笑むと、シンシアは気まずそうに視線を外した。
「話を聞いていたのでしょう?」
「ええ」
「なら、なぜ笑顔でいられるの……?」
注)クリスティアナとシンシアは同い年で仲良しさんなので、友達口調です。
シンシアが咎めるように、クリスティアナを見上げた。
「シンシア、兄様が言っていた事は本当よ?」
「何を言っているの!? サファイア様が愛人がいると仰ったじゃない!」
「あの愛人とは、貴方の事よ」
「………え?」
「兄様がデレデレした顔で、この部屋に足繁く通うものだから、サファイアが勘違いをしたの。私は何となく、雰囲気で分かっていたのだけど……」
「じゃあ、なぜ私の滞在は秘されているの? 部屋からも出してもらえないの!?」
「カーディスの件以外にも、揉め事が重なっていたから、貴方を巻き込みたくなかったのだと思うわ。後は、公表したら、貴方との時間を私達に奪われると考えたんじゃないかしら? 私とサファイアは、貴方の事が大好きだから」
(本当はもう一つ理由があるのだけど、兄様が直接本人に言うべきよね……)
「でも、それは貴方の憶測だわ。アレクセイ様は、”人前に出したくないのは確かだ”って仰ったもの――。きっと、地味で冴えない私を見られたくなくて、外に出さないのよ……!」
クリスティアナは軽くため息を吐いて、困り顔で微笑んだ。
「自己評価が低すぎるわ、シンシア」
「だって、もし私が魅力的だったら……」
「魅力的だったら?」
「アレクセイ様は、……してくれる筈…ですもの」
「………シンシア、悪いけど、もう少し大きい声でお願い」
シンシアは、頬を紅色に染めて、繰り返す。
「……してくれる……筈」
「もう少し、大きい声で」
「……して」
「じゃあ、耳打ちして?」
シンシアに耳打ちされて、クリスティアナは驚きで目を見開いた。
「本当に……?」
「やっぱり、変……よね?」
シンシアは膝に置いた両手をぎゅっと握り締め、今にも泣きだしそうな表情を浮かべる。
「兄様ったら……”名君の器”と誉れ高い王子なのに。実はヘ……」
「ヘ……?」
ぶつぶつと呟くクリスティアナに、言葉を聞き取れなかったシンシアが聞き返す。
「あ、何でもないの。暫く外に出ていないでしょう? 散歩して、テラスで昼食を取りましょうよ。おあつらえ向きに天気も良いし」
「え、ええ……」
クリスティアナがにっこりと微笑み、不思議そうにシンシアが頷いた。
***
「邪魔をされたくない――」
カイトにじっと見つめられ、唇を親指でなぞられて……リリアーナの背筋はぞくりとし、身体を微かに震わせる。恥ずかしそうに頬を赤らめるリリアーナに、ゆったりとした動作で、カイトが顔を近づけてきた。くちづけられる予感を覚え、リリアーナはギュッと目を瞑るが、唇へのキスではなく…耳元でそっと囁かれた。
「いいか…?」
耳朶に、優しくくちづけられる。
「――っ、」
狼狽えて目を見開くと、カイトがリリアーナの首筋に顔を埋めていた。
広い肩幅と、骨ばった首筋を目の当たりにして、リリアーナの顔に血が上る。
カイトが…彼女の感じやすい首の付け根を、軽く噛んだ。
「んっ、……」
背筋にぴりっと快感が走り、リリアーナは思わず手にしていたシャツを、ギュッと握る。
リリアーナの首筋から顔を上げたカイトが、至近距離で返事を促した。
「リリアーナ?」
「え、……?」
リリアーナはぼうっとしてしまい、何を質問されたのか、分からずにいる。
カイトは彼女の両頬に手を添えて、柔らかい唇に自分のそれを押し当ててから、もう一度問うた。
「嫌なのか? フランを部屋に入れたほうがいいなら、鍵を抜くが――」
我に返り、質問を理解したリリアーナがふるふると首を横に振る。
「嫌じゃない。私も、……じゃ、邪魔、……」
この状態で、”邪魔をされたくない”とは、はしたないようで言い難く、リリアーナは言葉を詰まらせてしまう。
カイトは彼女の膝裏と背中に腕を差し入れ、いともたやすく抱き上げた。
「分かった」
こめかみに、そっとキスを落としてから、ソファへと大きな歩幅で運ぶ。
彼女を腕に抱いたまま、ふんわりとソファに腰を掛け、リリアーナは彼の膝の上に、ちょこんと横向きに収まった。
まじろぎもしない目でカイトに見つめられて、リリアーナは頬を桜色に染め、時折ちらっと彼を見返す。
「ところで、これは――?」
リリアーナがしっかりと握っている白いシャツを、カイトが指先で軽く掴んだ。
「これは、……!」
咄嗟の事に、リリアーナは少し慌てる。
「起きたら、腕の中にあったの――」
真実でもあるし、ほっとしながら言うリリアーナに、カイトは面白そうな顔をした。
「そうだったのか」
目の届かないところに隠そうと、リリアーナがシャツを引っ張るも、カイトは離さずに掴んだままでいる。リリアーナが必死に引っ張っているのに対して、指先だけで造作なく、引き戻すカイトが恨めしい。何となく自分が、肉食獣に弄ばれている小動物のような気分になってきた……。
「タンスの中にも、俺のシャツが二枚あった」
突然の呟きに、リリアーナは身体をぴくっとさせて、不自然に視線をさまよわせる。
「カイトが、18才に戻ったら、すぐ着れるように用意していたから…」
「その割にはアイロンがかかっていなかったし、シャツからは、ほのかに君の香りが…」
「×××××――!」
「どうかしたのか?」
「私のタンスだから、匂いがついてしまったんだわ、きっと! アイロンは……」
段々と言い訳が苦しくなってきたリリアーナを、カイトが物憂げに見つめる。
「そうか、残念だな……。俺の代わりに抱き締めてくれているものだとばかり、思っていたのに」
途端にボンッ、と首まで真っ赤になるリリアーナに、カイトが堪えきれずに、クスクスと笑いを零した。それを見て、リリアーナが訝し気な顔をする。
「……知っていて、……からかったのね?」
「ん……」
素直に認めたカイトに、リリアーナは恥ずかしさと腹立たしさから、拳で胸を叩こうとした。
「酷いわ、からかうなんて、凄く恥ずかしかったのに!」
カイトは振り上げたリリアーナの手を難なく掴み、自らの胸に抱き寄せた。
「ごめん。懸命に弁解しているリリアーナが、とても…可愛かったから」
いかにも愛しそうに、カイトがリリアーナを見つめた為、リリアーナの怒りは急激に萎んでしまい、文句も言いづらくなる。
「まだ、許してはいないんだから……」
リリアーナは頬を膨らませて、残った左手でカイトの胸を押し返し、少し身体を離そうとした。彼女の耳元に顔を寄せて、カイトが囁く。
「どうすれば許してくれる?」
掴んだリリアーナの右手を、自分の首の後ろに回させ、彼女の腰に当てた手にグッと力を入れて、リリアーナを更に引き寄せた。
「――っ、」
鋼のように引き締まった身体と密着し、唇は今にも触れそうだ。リリアーナは息を呑んで、ただただ頬を紅潮させる。
「カイ……」
「ん……?」
カイトが首を傾けて、静かにリリアーナの唇を塞いだ。
denntyuu様、以前に頂いたコメントの、シンシア部分の”巻き込まれないように”を使わせて頂きました! 私が考えたのは”煩わされないように”だったのですが、”巻き込む”を使ったほうがピッタリくるのですよ、これが!
またお願いいたします! ヾ(・(●●)・;)ォィ(自主ツッコミ)
「シンシア様、私です。クリスティアナです」
数秒の後、扉が開いて侍女が顔を出した。
「クリスティアナ王女殿下、どうぞお入りください」
侍女が一歩下がって道を空け、深く頭を垂れる。クリスティアナはその前を通り、ソファに腰掛けているシンシアに歩み寄った。
「シンシア様、お久しぶりですね」
クリスティアナが微笑むと、シンシアは気まずそうに視線を外した。
「話を聞いていたのでしょう?」
「ええ」
「なら、なぜ笑顔でいられるの……?」
注)クリスティアナとシンシアは同い年で仲良しさんなので、友達口調です。
シンシアが咎めるように、クリスティアナを見上げた。
「シンシア、兄様が言っていた事は本当よ?」
「何を言っているの!? サファイア様が愛人がいると仰ったじゃない!」
「あの愛人とは、貴方の事よ」
「………え?」
「兄様がデレデレした顔で、この部屋に足繁く通うものだから、サファイアが勘違いをしたの。私は何となく、雰囲気で分かっていたのだけど……」
「じゃあ、なぜ私の滞在は秘されているの? 部屋からも出してもらえないの!?」
「カーディスの件以外にも、揉め事が重なっていたから、貴方を巻き込みたくなかったのだと思うわ。後は、公表したら、貴方との時間を私達に奪われると考えたんじゃないかしら? 私とサファイアは、貴方の事が大好きだから」
(本当はもう一つ理由があるのだけど、兄様が直接本人に言うべきよね……)
「でも、それは貴方の憶測だわ。アレクセイ様は、”人前に出したくないのは確かだ”って仰ったもの――。きっと、地味で冴えない私を見られたくなくて、外に出さないのよ……!」
クリスティアナは軽くため息を吐いて、困り顔で微笑んだ。
「自己評価が低すぎるわ、シンシア」
「だって、もし私が魅力的だったら……」
「魅力的だったら?」
「アレクセイ様は、……してくれる筈…ですもの」
「………シンシア、悪いけど、もう少し大きい声でお願い」
シンシアは、頬を紅色に染めて、繰り返す。
「……してくれる……筈」
「もう少し、大きい声で」
「……して」
「じゃあ、耳打ちして?」
シンシアに耳打ちされて、クリスティアナは驚きで目を見開いた。
「本当に……?」
「やっぱり、変……よね?」
シンシアは膝に置いた両手をぎゅっと握り締め、今にも泣きだしそうな表情を浮かべる。
「兄様ったら……”名君の器”と誉れ高い王子なのに。実はヘ……」
「ヘ……?」
ぶつぶつと呟くクリスティアナに、言葉を聞き取れなかったシンシアが聞き返す。
「あ、何でもないの。暫く外に出ていないでしょう? 散歩して、テラスで昼食を取りましょうよ。おあつらえ向きに天気も良いし」
「え、ええ……」
クリスティアナがにっこりと微笑み、不思議そうにシンシアが頷いた。
***
「邪魔をされたくない――」
カイトにじっと見つめられ、唇を親指でなぞられて……リリアーナの背筋はぞくりとし、身体を微かに震わせる。恥ずかしそうに頬を赤らめるリリアーナに、ゆったりとした動作で、カイトが顔を近づけてきた。くちづけられる予感を覚え、リリアーナはギュッと目を瞑るが、唇へのキスではなく…耳元でそっと囁かれた。
「いいか…?」
耳朶に、優しくくちづけられる。
「――っ、」
狼狽えて目を見開くと、カイトがリリアーナの首筋に顔を埋めていた。
広い肩幅と、骨ばった首筋を目の当たりにして、リリアーナの顔に血が上る。
カイトが…彼女の感じやすい首の付け根を、軽く噛んだ。
「んっ、……」
背筋にぴりっと快感が走り、リリアーナは思わず手にしていたシャツを、ギュッと握る。
リリアーナの首筋から顔を上げたカイトが、至近距離で返事を促した。
「リリアーナ?」
「え、……?」
リリアーナはぼうっとしてしまい、何を質問されたのか、分からずにいる。
カイトは彼女の両頬に手を添えて、柔らかい唇に自分のそれを押し当ててから、もう一度問うた。
「嫌なのか? フランを部屋に入れたほうがいいなら、鍵を抜くが――」
我に返り、質問を理解したリリアーナがふるふると首を横に振る。
「嫌じゃない。私も、……じゃ、邪魔、……」
この状態で、”邪魔をされたくない”とは、はしたないようで言い難く、リリアーナは言葉を詰まらせてしまう。
カイトは彼女の膝裏と背中に腕を差し入れ、いともたやすく抱き上げた。
「分かった」
こめかみに、そっとキスを落としてから、ソファへと大きな歩幅で運ぶ。
彼女を腕に抱いたまま、ふんわりとソファに腰を掛け、リリアーナは彼の膝の上に、ちょこんと横向きに収まった。
まじろぎもしない目でカイトに見つめられて、リリアーナは頬を桜色に染め、時折ちらっと彼を見返す。
「ところで、これは――?」
リリアーナがしっかりと握っている白いシャツを、カイトが指先で軽く掴んだ。
「これは、……!」
咄嗟の事に、リリアーナは少し慌てる。
「起きたら、腕の中にあったの――」
真実でもあるし、ほっとしながら言うリリアーナに、カイトは面白そうな顔をした。
「そうだったのか」
目の届かないところに隠そうと、リリアーナがシャツを引っ張るも、カイトは離さずに掴んだままでいる。リリアーナが必死に引っ張っているのに対して、指先だけで造作なく、引き戻すカイトが恨めしい。何となく自分が、肉食獣に弄ばれている小動物のような気分になってきた……。
「タンスの中にも、俺のシャツが二枚あった」
突然の呟きに、リリアーナは身体をぴくっとさせて、不自然に視線をさまよわせる。
「カイトが、18才に戻ったら、すぐ着れるように用意していたから…」
「その割にはアイロンがかかっていなかったし、シャツからは、ほのかに君の香りが…」
「×××××――!」
「どうかしたのか?」
「私のタンスだから、匂いがついてしまったんだわ、きっと! アイロンは……」
段々と言い訳が苦しくなってきたリリアーナを、カイトが物憂げに見つめる。
「そうか、残念だな……。俺の代わりに抱き締めてくれているものだとばかり、思っていたのに」
途端にボンッ、と首まで真っ赤になるリリアーナに、カイトが堪えきれずに、クスクスと笑いを零した。それを見て、リリアーナが訝し気な顔をする。
「……知っていて、……からかったのね?」
「ん……」
素直に認めたカイトに、リリアーナは恥ずかしさと腹立たしさから、拳で胸を叩こうとした。
「酷いわ、からかうなんて、凄く恥ずかしかったのに!」
カイトは振り上げたリリアーナの手を難なく掴み、自らの胸に抱き寄せた。
「ごめん。懸命に弁解しているリリアーナが、とても…可愛かったから」
いかにも愛しそうに、カイトがリリアーナを見つめた為、リリアーナの怒りは急激に萎んでしまい、文句も言いづらくなる。
「まだ、許してはいないんだから……」
リリアーナは頬を膨らませて、残った左手でカイトの胸を押し返し、少し身体を離そうとした。彼女の耳元に顔を寄せて、カイトが囁く。
「どうすれば許してくれる?」
掴んだリリアーナの右手を、自分の首の後ろに回させ、彼女の腰に当てた手にグッと力を入れて、リリアーナを更に引き寄せた。
「――っ、」
鋼のように引き締まった身体と密着し、唇は今にも触れそうだ。リリアーナは息を呑んで、ただただ頬を紅潮させる。
「カイ……」
「ん……?」
カイトが首を傾けて、静かにリリアーナの唇を塞いだ。
denntyuu様、以前に頂いたコメントの、シンシア部分の”巻き込まれないように”を使わせて頂きました! 私が考えたのは”煩わされないように”だったのですが、”巻き込む”を使ったほうがピッタリくるのですよ、これが!
またお願いいたします! ヾ(・(●●)・;)ォィ(自主ツッコミ)
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