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第十二章
腕(かいな)の中のリリアーナ 122(後日談) イチャイチャ回
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リリアーナは震えながら、ぽっかりと開いた入り口から、居間の様子を窺い見た。
「ぁっ……、」
廊下への扉は開け放たれ、引き締まった体躯で長身の――彼女の黒髪の騎士が、背を向けて立っていた。こちらを向いている女性騎士達と、何事かを熱心に話している。
リリアーナの頬をつーっと涙が伝い落ちた。
(カイト、カイト、カイト!)
気づいた時にはもう、リリアーナは駆け出していた。
***
12才カイトの被害者の件で、カイトと女性騎士達は、思ったよりも長く話し込んでいた。カイトが厳しい表情を浮かべたあと、ふいに女性騎士二人が彼の背後に目を向ける。
「あっ、――」
「え?」
カイトが振り返ろうとした途端、どんっ、と小さくて柔らかいものが背中にぶつかってきた。
身体を捩じって見下ろすと、リリアーナが泣きじゃくりながら、腰にしがみついている。
カイトの険しかった顔が、一瞬で和らいだ。
「リリアーナ――」
「カイ…ト……いない、から……」
リリアーナは片手に濡れたシャツを持ち、目からは新たな涙が溢れ、言葉を詰まらせている。身を震わせながら背中にしがみつくリリアーナに後悔をしつつも、彼の胸には愛しい想いがこみ上げる。
「リリアーナ、手を離して?」
「いや、離さない……!」
しがみついたまま、首を横に振るリリアーナ。
「でも、このままだと君を抱き締められない」
カイトは身を捩じったまま、上体をかがめて瞼を閉じ、リリアーナの頭にそっと……唇で触れる。返事がないので他の場所にも、優しくキスを落としていく。少しの沈黙のあとに、リリアーナがそろそろと、両手を離してカイトを仰ぎ見た。
泣き濡れた頬を微かに赤らめて、抱き締められるのを待っている様子は、あまりにも愛らしく、カイトはさり気なく視線を外して、落ち着こうと呼吸をする。衝動に駆られるまま抱き締めたら、華奢な身体を潰してしまいそうで怖くなったからだ。
小さな身体をすっぽりと腕の中に収めると、リリアーナが胸に頬を寄せてきた。カイトの温もりや香りに包まれたリリアーナは、静かに安堵のため息を吐く。
カイトがリリアーナの顎を掴んで上向かせ、互いに見つめ合った。
「ごめん。傍を離れるべきじゃなかった」
「また、……夢、かと…思ったの……」
リリアーナはその時の哀しみを思い出したのか、再びぽろぽろと涙を零し始めた。
「――もう傍を離れない」
顎を掴んでいた片手を、頬に滑らせて包み込み、親指で涙を拭う。リリアーナが包まれた掌に頬を押し当て、瞳を閉じると、閉じた眦から喜びの涙が一筋流れ落ちた。気づいたカイトがゆっくりと身を屈ませて、その涙の跡にくちづけていく……。
目の前の光景を食い入るように見つめて、必死に息で話すビアンカとジャネット。
『何これ、尊い……! 絵師を! 絵師を連れてきてぇええええ!!』
『時間ないわ! 網膜にしっかりと焼き付けるのよ!!』
リリアーナのこめかみにくちづけていたカイトが、上目遣いに、視線だけを二人に寄こす。壮絶な色気に倒れそうになる二人に向かい、片手を伸ばしてきて……ぱたんと、扉を閉じてしまった。
「ひ、酷い……! 声を落として大人しく観賞していたのに!」
「いや、これって、覗きと一緒だから」
地団駄を踏むビアンカを、ジャネットが窘める。
「えっ、ジャネットは見たくないの!?」
「主のプライベートでしょう?……見たがるサファイア様のお気持ち、分かるなぁ、とは思ったけど」
「そうでしょう! 私も分かったわぁ。ああ――、あんな目で見つめられて、抱きしめられたら、もうだめ……!」
「ビアンカ、声を落として……鼻血が出てるわよ?」
「マジ!? 拭かなきゃ」
「思ったんだけど、……」
ジャネットが、ハンカチで鼻を押さえているビアンカに言う。
「何よ?」
「リリアーナ様が女の子に見えた」
「はぁ? 何言ってるの? そんなの当り前じゃない。国の至宝とまで言われているプリンセスを」
「そうじゃなくて、普段リリアーナ様は少女といえども、王族の威厳を感じさせるじゃない? もう、身体に備わっている感じ」
「ああ、確かにそうね」
「でもカイトの前だと、ただの少女に見えるなぁ、と思って。言い換えれば、カイトの前では、ただの少女でいられる、いさせてくれるんだなぁ――みたいな?」
「ジャネット……深いことを言うじゃない」
「ふふふ……まぁね、」
カイトはリリアーナの頬にくちづけながら、廊下から漏れ聞こえる二人の会話に、ふと笑みを零した。リリアーナの両肩に手を置いて身体を離し、入り口横のサイドテーブルに置いてあったカギを、扉に差し込む。
「何をしているの?」
「鍵をかけて、このまま差し込んでおくんだ」
「そんな事をしたら、フランチェスカが入ってこれなくなってしまうわ」
「ああ、そうだね。フランが鍵を持っていても、あちらから差し込めないから部屋に入れなくなる」
カイトは振り返って、リリアーナに歩み寄る。じっと見つめながら手を伸ばし、彼女の唇に親指で…そっと触れた。
「邪魔をされたくない――」
***
クリスティアナがノックをしながら声をかける。
「シンシア様、私です。クリスティアナです」
chii様! 今回のリリアーナは、龍騎君にインスピレーションを刺激されて書きました。悲しいかな、作者が可愛くないもので、う~可愛く書けない~! と頭を悩ましていた時にコメントの龍騎君を思い浮かべたら、なんてことでしょう! すらすら書けるではありませんか!!!
ありがとうございました!;・^;・:\(o^▽^o)/:・;^・;
「ぁっ……、」
廊下への扉は開け放たれ、引き締まった体躯で長身の――彼女の黒髪の騎士が、背を向けて立っていた。こちらを向いている女性騎士達と、何事かを熱心に話している。
リリアーナの頬をつーっと涙が伝い落ちた。
(カイト、カイト、カイト!)
気づいた時にはもう、リリアーナは駆け出していた。
***
12才カイトの被害者の件で、カイトと女性騎士達は、思ったよりも長く話し込んでいた。カイトが厳しい表情を浮かべたあと、ふいに女性騎士二人が彼の背後に目を向ける。
「あっ、――」
「え?」
カイトが振り返ろうとした途端、どんっ、と小さくて柔らかいものが背中にぶつかってきた。
身体を捩じって見下ろすと、リリアーナが泣きじゃくりながら、腰にしがみついている。
カイトの険しかった顔が、一瞬で和らいだ。
「リリアーナ――」
「カイ…ト……いない、から……」
リリアーナは片手に濡れたシャツを持ち、目からは新たな涙が溢れ、言葉を詰まらせている。身を震わせながら背中にしがみつくリリアーナに後悔をしつつも、彼の胸には愛しい想いがこみ上げる。
「リリアーナ、手を離して?」
「いや、離さない……!」
しがみついたまま、首を横に振るリリアーナ。
「でも、このままだと君を抱き締められない」
カイトは身を捩じったまま、上体をかがめて瞼を閉じ、リリアーナの頭にそっと……唇で触れる。返事がないので他の場所にも、優しくキスを落としていく。少しの沈黙のあとに、リリアーナがそろそろと、両手を離してカイトを仰ぎ見た。
泣き濡れた頬を微かに赤らめて、抱き締められるのを待っている様子は、あまりにも愛らしく、カイトはさり気なく視線を外して、落ち着こうと呼吸をする。衝動に駆られるまま抱き締めたら、華奢な身体を潰してしまいそうで怖くなったからだ。
小さな身体をすっぽりと腕の中に収めると、リリアーナが胸に頬を寄せてきた。カイトの温もりや香りに包まれたリリアーナは、静かに安堵のため息を吐く。
カイトがリリアーナの顎を掴んで上向かせ、互いに見つめ合った。
「ごめん。傍を離れるべきじゃなかった」
「また、……夢、かと…思ったの……」
リリアーナはその時の哀しみを思い出したのか、再びぽろぽろと涙を零し始めた。
「――もう傍を離れない」
顎を掴んでいた片手を、頬に滑らせて包み込み、親指で涙を拭う。リリアーナが包まれた掌に頬を押し当て、瞳を閉じると、閉じた眦から喜びの涙が一筋流れ落ちた。気づいたカイトがゆっくりと身を屈ませて、その涙の跡にくちづけていく……。
目の前の光景を食い入るように見つめて、必死に息で話すビアンカとジャネット。
『何これ、尊い……! 絵師を! 絵師を連れてきてぇええええ!!』
『時間ないわ! 網膜にしっかりと焼き付けるのよ!!』
リリアーナのこめかみにくちづけていたカイトが、上目遣いに、視線だけを二人に寄こす。壮絶な色気に倒れそうになる二人に向かい、片手を伸ばしてきて……ぱたんと、扉を閉じてしまった。
「ひ、酷い……! 声を落として大人しく観賞していたのに!」
「いや、これって、覗きと一緒だから」
地団駄を踏むビアンカを、ジャネットが窘める。
「えっ、ジャネットは見たくないの!?」
「主のプライベートでしょう?……見たがるサファイア様のお気持ち、分かるなぁ、とは思ったけど」
「そうでしょう! 私も分かったわぁ。ああ――、あんな目で見つめられて、抱きしめられたら、もうだめ……!」
「ビアンカ、声を落として……鼻血が出てるわよ?」
「マジ!? 拭かなきゃ」
「思ったんだけど、……」
ジャネットが、ハンカチで鼻を押さえているビアンカに言う。
「何よ?」
「リリアーナ様が女の子に見えた」
「はぁ? 何言ってるの? そんなの当り前じゃない。国の至宝とまで言われているプリンセスを」
「そうじゃなくて、普段リリアーナ様は少女といえども、王族の威厳を感じさせるじゃない? もう、身体に備わっている感じ」
「ああ、確かにそうね」
「でもカイトの前だと、ただの少女に見えるなぁ、と思って。言い換えれば、カイトの前では、ただの少女でいられる、いさせてくれるんだなぁ――みたいな?」
「ジャネット……深いことを言うじゃない」
「ふふふ……まぁね、」
カイトはリリアーナの頬にくちづけながら、廊下から漏れ聞こえる二人の会話に、ふと笑みを零した。リリアーナの両肩に手を置いて身体を離し、入り口横のサイドテーブルに置いてあったカギを、扉に差し込む。
「何をしているの?」
「鍵をかけて、このまま差し込んでおくんだ」
「そんな事をしたら、フランチェスカが入ってこれなくなってしまうわ」
「ああ、そうだね。フランが鍵を持っていても、あちらから差し込めないから部屋に入れなくなる」
カイトは振り返って、リリアーナに歩み寄る。じっと見つめながら手を伸ばし、彼女の唇に親指で…そっと触れた。
「邪魔をされたくない――」
***
クリスティアナがノックをしながら声をかける。
「シンシア様、私です。クリスティアナです」
chii様! 今回のリリアーナは、龍騎君にインスピレーションを刺激されて書きました。悲しいかな、作者が可愛くないもので、う~可愛く書けない~! と頭を悩ましていた時にコメントの龍騎君を思い浮かべたら、なんてことでしょう! すらすら書けるではありませんか!!!
ありがとうございました!;・^;・:\(o^▽^o)/:・;^・;
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