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21 この人攻略相手だ――

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 コンラート城では門番に馬車を停められた。
 
(しまった。先触れをだしていなかったわ。待たされそう……いえ、それどころか通してもらえないかも。出直すべき? お父様の名前を出してみようかしら)

 あれこれ考えている内に、ガタンと馬車が揺れて動き始めた。

「あら?」

 小窓を開けて、御者に尋ねる。

「通してもらえたの?」

「はい、扉に描かれたバートレイ家の紋章を見るなり『通ってよし』と告げられました」

「まぁ、」

 通れたのは良いが、これはこれで嫌な予感がする……。

「門番の一人が馬を駆って城に向かいました。お嬢様がいらっしゃったことを伝えに出たと思われます」

 城門から玄関までの道は木立が続き、馬車で10分ほどかかる。その10分が異常に長く感じられたエリカであった。

 馬車が停まり、扉が開いた。

 スッと差し出された手に、手を添えて馬車を降りる。

「ありがとう」

 礼を伝えた相手は、御者でも使用人でもなかった。

「フォルカー騎士…団長……?」

「はい、エリカ様。執務室までご案内するよう殿下から申しつかっております」

(この人攻略相手だ――)

 蘇った記憶に、エリカは息を詰めてフォルカーを凝視する。

 2mを軽く超える長身に鍛え抜かれた逞しい身体は、騎士服の上からでも分かるほどだ。

 短髪の黒髪に漆黒の瞳の25歳。

 精悍と言うよりは強面のフォルカーが唐突に笑顔になった。しかしその笑顔がなんか怖い。

 エリカはゲームでの彼の悩みを思い出した。

 身体が大きくて強面の彼は、人から恐れられている。

 特に女子供からは、怯えた表情をされることが多い。

 戦場ではそれもいいが、平和な日常生活の中では弊害でしかなく、何よりも本人が傷ついていた。

 根はとても優しい人なのだ。

 だから女性や子供には微笑むようにしているのだが、”怖がられないだろうか?”と緊張のあまり強張る笑顔が、尚更怖いのだ。

「エリカ様……?」

(顔立ちは良いのに……)

 エリカは蘇った記憶に浸り、じーっとそのままフォルカーの顔に見入った。

 フォルカーは顔を隠すように俯いて、後ろに控えていた騎士に命じる。

「ラファエル、エリカ様を執務室にご案内してくれ」

「はい。しかしよろしいのですか? 殿下はフォルカー団長直々にご案内するよう仰っておられましたが」

「殿下には俺からよく伝えておく」

 声を低くしてやり取りしたが、会話はエリカの耳にまで届いた。

(しまった! 恐怖のあまり固まってると思わせてしまった)

 フォルカーはエリカに向き直り、頭を下げる。

「エリカ様申し訳ございません。私は急用を思い出しました。こちらの騎士が執務室までご案内いたします」

(フォルカー様が気を遣っている!)

「待ってください」

 エリカの声に気づかないのか、気づかない振りをしているのか、彼は身を翻してその場を去ろうとした。

「お願い待って!」

 エリカはフォルカーに飛びつき、そのまま腰にしがみ付いた。





大変申し訳ないのですが、四日~一週間ほど投稿をお休みさせて頂きます。父がこのコ〇ナ禍の中で手術をすることになりまして( ;∀;) 詳しくは近況ボードに書かせて頂きました
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