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第二章
10話 ライバルはジェラルド
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「おい、ダリウス見てみろ」
「はい?」
見ると、ジェラルドが抱っこしてもらいながら、クリスにほっぺたを突き出している。彼女はにっこりとして、優しくチュッとジェラルドにキスをした。照れながら幸せそうに、両手でほっぺたを押さえつつ、こちらをちらちらと窺っている。
「あれ、自慢してないか……?」
「しておりますな……」
二人で顔を見合わせた。
「仕方がありません。ジェラルド様はいつもアレクサンダー様に近付こうとする女性達に、利用されてばかりでした。本心から自分に関心を持っている上に、優しくてしかも美人、嬉しくて仕方がないのでしょう。父親に関心がないところも、ポイントが高いと思われます」
「その通りだ――さあ、我らもジェラルドの女神に朝の挨拶をしに行こう」
アレクサンダーとダリウスは、ジェラルドへと足を向けた。ジェラルドが`見てた!? ‘ とばかりに二人を得意満面に迎える。
「おはようございます。クリス」
「おはようございます。アレクサンダー様も甲板に出ていらしたんですか?」
その一言に、ダリウスがぐっと笑いを堪えている。
「はい……実は最初からいたのですが」
アレクサンダーがクリスの手を取り、その甲にくちづけた。
「まあ、ごめんなさい――」
「いいえ、構いません、お気になさらずに。こちらにいるのは我が国の宰相で」
後はダリウスが引き受けた。
「ダリウス・ヨーク・フォン・ヴァイスドルフと申します。どうぞダリウスとお呼び下さい。美しくて勇気のあるお方」
ダリウスもクリスの手の甲にくちづけた。
「クリスです、どうぞよろしく。お褒めの言葉をありがとう」
「クリス、良かったら一緒にマストに登りませんか? 昨日はそのつもりだったのでしょう?」
「ええ――」
話の途中でジェラルドがクリスのほっぺたをつんつんと突っついてきた
「なあに、ジェラルド?」
クリスの関心はすぐジェラルドに向いてしまう。
「ぼく、お魚が見たいんだ。昨日はお魚を見ようとして、船から落ちてしまったの」
「まあ、身を乗り出してしまったのね……。いいわ、一緒に見に行きましょう。でも甲板は随分高くて川面から離れているから、お魚を見るのはむずかしいかもしれないわよ?」
「でも、見てみたいんだ……クリスと一緒に……」
チラッと上目遣いで見上げられてクリスはズギュン、と胸を打ちぬかれた。
「行きましょう! 船長が絶好のビューポイントを教えてくれるかもしれないわ」
クリスはアレクサンダーに誘われた事を忘れて、二人に挨拶をする。
「それではまた後ほどに」
アレクサンダーがポカンとしている中、クリスはジェラルドを抱っこしたまま足早に消えてしまった。
ダリウスが我慢しきれずにまた笑い出す。
「ライバルはジェラルド様ですね! それも強敵だ!」
「勝手に笑ってろ――」
その後も、クリスに近づくも尽くジェラルドに阻止される。船長もクリスファンであるようで、何かというと寄ってくる。
「隙がありませんね」
「まだディナーがあるさ」
「ほう、余裕ですね……?」
ディナー用のドレスに着替えるために、ジェラルドと部屋の前で別れた。いつまでもこちらを見て、手を振っている姿が本当に可愛らしい。幸せそうな顔で部屋に入ってきたクリスをハンナが急かす。
「さあ、急いでお着替えにならないと! 今日は藤色のドレスでよろしいですか?」
「ええ、それでお願い」
シャワーを浴びて、全身に香油を塗ってもらった。鼻歌を口ずさみながら、時々思い出し笑いをするクリスに、ハンナが気掛かりな顔をして尋ねる。
「大丈夫ですか? あの子供の父親に一目で気に入られたと、アーネストから聞きましたよ」
「そう? そんな様子はなかったけど……」
クリスの頭はジェラルドで占められていた為に、アレクサンダーは眼中に入ってなかった。
藤色でスカートの部分がシフォンになっているドレスを着て、髪の毛は上品に結い上げ、アメジストをあしらった髪飾りで留める。首元はキスマークが残っていたので、白いシフォンのストールを巻いた。
「お美しいですよ(ぞ)~~~」
アーネストとハンナの声が不気味に重なる。
「どうしたのよ、二人とも」
アーネストが釘を刺した。
「クリス様! くれぐれもお気をつけて! ほれ、その左手の婚約指輪をこれ見よがしにチラつかせるのですぞ!」
「そうですよ! 何かあったら大きい声で叫んで! ここから特等室までは僅かな距離。叫べば聞こえますから私達が直ぐにでも駆けつけます!」
ハンナもそれに同調をする。
「二人とも、心配しすぎ。大丈夫よ、今まで男性にもてた事なんてなかったんだから。興味を持ってくれたのなんてグリフィス位だし。あ、時間だわ」
クリスが心配するなとばかりに手をひらひらさせて、行ってしまった。
「何故いままでもてなかったのか、説明をする必要がありますな」
二人は顔を見合わせた。
「はい?」
見ると、ジェラルドが抱っこしてもらいながら、クリスにほっぺたを突き出している。彼女はにっこりとして、優しくチュッとジェラルドにキスをした。照れながら幸せそうに、両手でほっぺたを押さえつつ、こちらをちらちらと窺っている。
「あれ、自慢してないか……?」
「しておりますな……」
二人で顔を見合わせた。
「仕方がありません。ジェラルド様はいつもアレクサンダー様に近付こうとする女性達に、利用されてばかりでした。本心から自分に関心を持っている上に、優しくてしかも美人、嬉しくて仕方がないのでしょう。父親に関心がないところも、ポイントが高いと思われます」
「その通りだ――さあ、我らもジェラルドの女神に朝の挨拶をしに行こう」
アレクサンダーとダリウスは、ジェラルドへと足を向けた。ジェラルドが`見てた!? ‘ とばかりに二人を得意満面に迎える。
「おはようございます。クリス」
「おはようございます。アレクサンダー様も甲板に出ていらしたんですか?」
その一言に、ダリウスがぐっと笑いを堪えている。
「はい……実は最初からいたのですが」
アレクサンダーがクリスの手を取り、その甲にくちづけた。
「まあ、ごめんなさい――」
「いいえ、構いません、お気になさらずに。こちらにいるのは我が国の宰相で」
後はダリウスが引き受けた。
「ダリウス・ヨーク・フォン・ヴァイスドルフと申します。どうぞダリウスとお呼び下さい。美しくて勇気のあるお方」
ダリウスもクリスの手の甲にくちづけた。
「クリスです、どうぞよろしく。お褒めの言葉をありがとう」
「クリス、良かったら一緒にマストに登りませんか? 昨日はそのつもりだったのでしょう?」
「ええ――」
話の途中でジェラルドがクリスのほっぺたをつんつんと突っついてきた
「なあに、ジェラルド?」
クリスの関心はすぐジェラルドに向いてしまう。
「ぼく、お魚が見たいんだ。昨日はお魚を見ようとして、船から落ちてしまったの」
「まあ、身を乗り出してしまったのね……。いいわ、一緒に見に行きましょう。でも甲板は随分高くて川面から離れているから、お魚を見るのはむずかしいかもしれないわよ?」
「でも、見てみたいんだ……クリスと一緒に……」
チラッと上目遣いで見上げられてクリスはズギュン、と胸を打ちぬかれた。
「行きましょう! 船長が絶好のビューポイントを教えてくれるかもしれないわ」
クリスはアレクサンダーに誘われた事を忘れて、二人に挨拶をする。
「それではまた後ほどに」
アレクサンダーがポカンとしている中、クリスはジェラルドを抱っこしたまま足早に消えてしまった。
ダリウスが我慢しきれずにまた笑い出す。
「ライバルはジェラルド様ですね! それも強敵だ!」
「勝手に笑ってろ――」
その後も、クリスに近づくも尽くジェラルドに阻止される。船長もクリスファンであるようで、何かというと寄ってくる。
「隙がありませんね」
「まだディナーがあるさ」
「ほう、余裕ですね……?」
ディナー用のドレスに着替えるために、ジェラルドと部屋の前で別れた。いつまでもこちらを見て、手を振っている姿が本当に可愛らしい。幸せそうな顔で部屋に入ってきたクリスをハンナが急かす。
「さあ、急いでお着替えにならないと! 今日は藤色のドレスでよろしいですか?」
「ええ、それでお願い」
シャワーを浴びて、全身に香油を塗ってもらった。鼻歌を口ずさみながら、時々思い出し笑いをするクリスに、ハンナが気掛かりな顔をして尋ねる。
「大丈夫ですか? あの子供の父親に一目で気に入られたと、アーネストから聞きましたよ」
「そう? そんな様子はなかったけど……」
クリスの頭はジェラルドで占められていた為に、アレクサンダーは眼中に入ってなかった。
藤色でスカートの部分がシフォンになっているドレスを着て、髪の毛は上品に結い上げ、アメジストをあしらった髪飾りで留める。首元はキスマークが残っていたので、白いシフォンのストールを巻いた。
「お美しいですよ(ぞ)~~~」
アーネストとハンナの声が不気味に重なる。
「どうしたのよ、二人とも」
アーネストが釘を刺した。
「クリス様! くれぐれもお気をつけて! ほれ、その左手の婚約指輪をこれ見よがしにチラつかせるのですぞ!」
「そうですよ! 何かあったら大きい声で叫んで! ここから特等室までは僅かな距離。叫べば聞こえますから私達が直ぐにでも駆けつけます!」
ハンナもそれに同調をする。
「二人とも、心配しすぎ。大丈夫よ、今まで男性にもてた事なんてなかったんだから。興味を持ってくれたのなんてグリフィス位だし。あ、時間だわ」
クリスが心配するなとばかりに手をひらひらさせて、行ってしまった。
「何故いままでもてなかったのか、説明をする必要がありますな」
二人は顔を見合わせた。
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