解放

かひけつ

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第3章 ~よう

■⑬

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《sideメハ
Ⅱ▽が、いる。

 「…………」

しゃべるわけではない。

 「…………」

近寄らないで、くれたら、まだ平静は保てる。

 「…………」

それが伝わってか、Ⅱ▽が近寄ってくる。

 「…………」

頼るものも、力もなにもない。

 「…………」

もう、分かってしまう。

 「…」

今度こそ……終わる。

 「…………」

目の前まで来た。

 「………」

何か言うと察する。震えることしか……

 「」

バシュン!!

何かいつもと違うようだ。

 「助けに、来た」

 「うぇ……tt」

反射的に吐き出す。人間じゃないのに。何も出ないのに、吐き気が止まらない。

 「メハ…大丈」

 〈ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさぃ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさ〉

息が詰まる。視界が黒ずみ、心などとうに…

ギュッ

小さな体の温もりがゆっくりと伝導する。

 また、私の心を壊しにっ……!

 「……」

Ⅱ▽は静かに離れる…。でも、油断できない。

 [[[信用できない]]]

Ⅱ▽は、私に触れられない距離まで下がった。

 [[[何をされても怖い。何もしなくても怖い]]]

Ⅱ▽は手を胸の前に持っていき、そこから水平に腕を薙ぐ。

 [眼を閉じないと…]

眼を閉じたせいか孤独感はより一層強くなる。

 「メハ…」

 [悪魔の声だ]

 「メハ」

 [ここには、誰もいないんじゃないのか?自分で作り出した悪魔に命を持っていかれそうになっているんだ]

悪魔が怖くて上手く世界を認識できない。

 [ここが夢なら、抜け出す方法を試すべきだ]

 「ⅹП」

 [ボルテージが上がっています][視界に誤りがあります。原因不明][オーバーヒートしました。一部再起動しま]

いつも聞いてるそれらに僅かに耳を傾ける。いや、幻聴だ。

 <うるさぃ…分かってる…。原因なんて悪魔に決まってる>

覚悟を決めて、歩き出す。先刻から動きが見られない悪魔に別れを告げに。

 「…消えてよ…」

それは悪魔への暴言とは別に、私自身を奮い立たせる意図があった。だから、ヒートアップする。

 「好き勝手に精神世界を踏み荒らしてなにが楽しいの!!人の心がないからって、やっていいことと悪いことくらいあるでしょ!!ずっとずっとずっと…虐めてさ………何がしたいの…?」

 「……」

悪魔はなにも言わない。顔を見れないから表情も分からない。

 「私が何かしたかなんて、知らない!!でも、もう止めてよ………もう、止めようよ」

 <どうせ幻覚だ。もう、これで終わりに>

いつの間にか手に握っていた棒状の何かを振りかぶる。

フォーーン

 「あぁああああああ!!」

耳元では風を切る音と私の叫び声がやけにゆっくり聞こえる。叫ばずには、いられなかった。それほどまでに勇気が出なかったのだ。

ゴリッ

明らかに生々しい感触に手が強張る。気持ち悪いと思うのも。束の間、次の瞬間には右の耳元から温かい熱が広がる。

 「見つけた…よ」

顔を愛おし気に触れられている現状を理解し急速に理性が戻る》
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