ダンジョンのボスは。

猫又うさぎ

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ダンジョンのボス。

1 - 「飲みの席。」

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 「だぁぁぁぁ!つっかれたっ!」

勇者一行は国王への謁見の後、街での凱旋、希望者との懇談、その後もなんやかんやとし、ようやく酒場で落ち着いたところである。

 「それにしても、あの国王とかいうジジイは、ほんとイラつくね!」

「ココ?おっきな声で言うのはやめな?」

国において絶対である国王を批判すればたとえ勇者一行だとしても不敬罪として極刑に処される可能性がある。

「それよりハリスはよく耐えられたね?うちらなんか、ねー?ダンロン?」

「俺、地面に穴開けちった」

「何してんの?えぇ⁈穴⁈」

「大丈夫だ焦るなハリス。水が湧く直前で止めた」

ダンロンはニヤッと笑いながら親指を立てた。

「いや、やりすぎでしょ!どーやったの!」

「もちろん。ワンパンだ」

「うちも、おやつに残してたナッツ潰しちゃってさー」

「ナッツ?」

「うん。マカダミアナッツ」

「かっっった!それ世界一固いでしょ?!どーやったんだよ!」

「え?もちろん、素手だよ?」

「こーっわ!こいつら怖っ!分からんわ!まともなのは僕らだけだよ、ウイニー」

「皆さん見てください」

そういうとウイニーは右手の拳を見せた。

「えぇ!どうしたのよ、その血!」

ウイニーの拳には擦り傷とは言えない、ザラザラとした傷口があり、血が今も出ていた。

「私もダンロンのように地面を殴ったのですが、力不足で」

ウイニーは薄い笑みを見せた。

「ダンロンはバカ力なんだからウイニーには無理でしょ!」

「いや、ココもなかなかにバカ力だけどね⁈」

「まあまあ、お二人とも落ち着いてください」

「ウイニー、お前は早く止血しなさい」

一周回ってか、逆に落ち着いてきたハリスの横からスッと何かをダンロンが差し出した。

「ほれ」

ダンロンは少し色のついた布切れをウイニーに渡した。

「ありがとう、ダンロン。この布はどこから持ってきたんですか?」

そうウイニーが聞くとダンロンは、自分の後ろの方を指さした。

しかし、さした方向には一つの席と、そこに酔いつぶれている男だけがいた。

「ダンロン、お前まさか……… 」

「ちょっとだけね?」

そう言うとダンロンは酔いつぶれている男のもとへ行き、男の服をつかんだ。

   ビリビリビリビリビリビリビリ

「ちょっとだけもらった」

「ダンローーーーン!」

「ちょっとハリスぅ、うるひゃいんですけどー?あんたまたそうやってさわいでぇ」

顔を真っ赤にしたココがバタンと机に突っ伏して寝てしまった。

「こっちにも、酔っぱらいがいたみたいですね」

「だな。どうするハリス、宿に戻るか?」

「そうだね、逃げよう」

勇者?一行はココを抱え、酒場を後にした。

「そういやハリス、なんで逃げるように出てきたんだ?」

「ダンロン、お前がそれを言うか?」

「ん?俺が原因なのか?」

ダンロンはそれはそれはキョトンとした。

「彼は目覚めた時どう思うんですかね?」

「僧侶ウイニーは救いの手を指し伸ばさないのか?」

ハリスが聞くと、ウイニーは笑いながら言った。

「宿に戻ったら祈るくらいはしてあげましょうかね」

「ひどい僧侶だね」

「こりゃ神様にも嫌われたな」

「ダンロンは言えないと思うけどなぁ」

酒場から宿屋への道は少し賑やかになっていた。

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