海月のこな

白い靴下の猫

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防腐剤は甘い匂い?

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セグアイの王女が来た当日から、庭園の鳥たちの行動がおかしくなった。
原因は、王宮の客間の窓から裏庭に投げ捨てられた、マドレーヌみたいなお茶菓子でほぼ確定。
そもそも他国の王宮に来て窓からゴミを捨てる、っていう神経を疑うが、お茶菓子自体もひどかった。
お茶会に呼ばれたアルトなんて、側近から『食べるな』の合図が来る前にのけぞった位だ。
自家製の「媚薬」ができるという触れ込みで、忘れたころに市場に出回る粗悪なアルコール入りだった。適当に滋養強壮によさそうな動植物・・・といっても、イノシシの睾丸だのカブトムシの幼虫だのの何が良いのかわからないけれども・・・をつけ込んで作るらしい。カビたバニラ臭がするからすぐわかる。
国の名前を背負ってやってきた王女が『手作りです』と胸を張って、他国の王子・・しかも王同然・・にコレを食べさせようとするのもすごいが、食べてもらえなかったからと何の警戒感もなくヒスって、直接窓から投げ捨てるのもすごい。
逆に言えば、こんなわかりやすい行動をする女性を警戒するのもむつかしくて、案の定、アルトにこの女を追い出す気配はない。
捨てられたお菓子を片づけてやる義理はなかったけれど、バードウォッチングを趣味とする私としては一応人間が他生物へかける迷惑を減らすべく、拾って歩いて。
で、既にお菓子を食べちゃったらしい数匹の鳥たちの異常行動に気づく。
雀が烏の巣に殴り込みをかけに行ったり、インコがヒヨドリに狂ったように交尾をしかけたり、同族の卵を割って回ったりしながらヨレヨレになっていて。
数が少ないから目立たないけど、絶対おかしいって。
仕方がないから、調べる。
抽出液に簡単な発色試薬まぜてペーパークロマトグラフするだけでも、過去にデータとったことがある毒物なら何とかいけるはず。
で、で、だ。その結果が。最悪すぎた。
うっそ。どうしよう。
これ、神の国の人格破壊薬とおなじだ。
脳の一部、特に間質核とか偏桃体とか錐体とかのバランスを崩す。
危険な場所での判断力がおかしくなったり、性行動がめちゃくちゃになったりする。
死なないけど、戦場の司令官に使われたりしたら、ある意味致死毒よりもたちが悪い。
神の船からこれが出てきたときは、迷惑なもの持ってくるんじゃねーわ!って叫んで、データだけ取るやミセルと一緒に即効でがらくた倉庫に封印した。
なぜこれがこんなところに?
パセルの倉が破られた?
違うな、あり得ない。
神の船のドアを開けるよりもむつかしい造りだ。
そうすると、多分、ハンター経由?
偵察中の殺傷件数が一定数を超えるとハンターの資格がはく奪されるからと、致死性の少ない武器を山と装備していたし。ちょっとぬけた奴だったし。
野宿して荷物盗まれるとか、普通にありそう。
いや、盗難あったなそういえば。あれか。
ハンターの荷物から流出したなら、量的には多くても小瓶ひと瓶分だと思う。実験もしただろうし、お茶菓子にも入れたから残量はそれほどないはずだ。

そのままセグアイの王女グループを監視し始めて感心する。
本当に意表突いて来るよな。
迷惑ではあるが希少な薬をカビたバニラ臭がする粗悪なアルコールに混ぜてしまうとか。
二度と手に入らないだろう希少な人格破壊薬を、調べられて当然のお菓子にいれるとか。
まぁ、人格破壊薬調べられるのなんて私とミセルしかいないけど。
何の警戒感もなくそれを投げ捨てる、頭の弱めな王女に持たせて持ち込むとか。
「王女様、こちらのおまじないはいまいちですねぇ。捨てておきます」なんて言いながら、隙も可愛げもない動き方をする侍女のポケットに小瓶が消えるとか。

そう、侍女だ。
女性に人気がない兵部にまで王女を誘導してきたのも、今小瓶を持っているのも。

王女自体に見るべきところがないのに、アルトが彼女を好きにさせるのを見て、失礼にもこう思った。『侍女たちが美人だからかな』。
あの程度の王女にしては侍女の質が良すぎると、そっちに違和感を持つべきだったのに。
セグアイ語が流暢で気づかなかった・・・この娘たち、シヨラ人だ。

シヨラなら、わかる。
喉から手を何本も出すほど、レグラム軍を攪乱したいシヨラなら。
人格破壊薬を、レグラムの兵部に持ち込むことができたら、何をするだろう。
対シヨラの前線にいるレグラム軍に使いたい、よな。封じ込めを解いて脱出できれば捲土重来できると信じている派閥が10はある気がする。
そして兵部には、兵糧用の防腐剤がおいてある。しかも、兵糧そのものに比べてすごくずさんな扱われ方をしている。サクシアのような湿気が少なくて寒めな方面との諍いでは、防腐剤なしで困らなかったから。
ところが、現在。シヨラの周りが炎上しているせいで、レグラムの兵の展開は南向き。兵糧が傷みやすい地方だ。防腐剤が使われ始めるのは時間の問題で。しかも言われてみれば防腐剤もちょっと甘いにおいがする。
防腐剤に混ざって人格破壊剤が戦地にバラまかれれば、レグラム軍も戦線もまとめて瓦解しかねない。
うん、私だったら、防腐剤にいれる。
もともと新鮮じゃないものをごまかして食べるための添加剤だから、少々のカビ臭は無視されるし、レグラムにとっては一番嫌だもの。

防腐剤の甕の中身を抜き取って他の容器に移し、元の甕には似た見かけの色水を入れて近くで待ち伏せをしていると、案の定侍女が忍んで来る。
3人中2人は見張り。シヨラ特有の短い指笛の合図が小気味よい。
侍女が小瓶の中身を甕にあけたのを確認してから立ち上がり、剣を思い切り甕にぶちあてて割ってやった。この時の表情で予備の薬をもっているかがわかるかと。
侍女が驚いた顔をしたのは一瞬で、すぐにピッと口笛を吹いた。
この反応の速さだけでも手練れだろうなと想像がつく。
甕の上半分は木っ端みじん、中身は3分の1ほどに減ったが、ない訳ではない。それでも甕に残る液体には一切執着をしめさずに撤収するらしい。
ということは、まだ予備がある。
取り戻さないと、危ないことこの上ない。
この足でどれくらいもつだろうか。
あー、危ないことしないってアルトと約束したのに。怒られたくないなぁ。
でも、普通に考えてほっといたら攻撃して来るよね。薬の予備もあって、私を殺せば、同じ手をもう一回トライできるわけだし。
追いかけて予備の薬を奪う方がトータルで考えたら危険度低いかも。
しょうがない、よね。うん、そういうことで。

足のケガのせいで、侍女たちの撤収についていくのは無理だったけれど、彼らの脱出経路には心当たりがある。
セグアイの水遊び用の小舟を、人気のない山中の川に移動させていた。
王女は、怪しげな薬でヘロヘロになったアルトを捕獲して、中であんなことやこんなことをむにゃむにゃむにゃするためには、人気がなくなきゃ、とかなんとか言われてその気になったらしい。
理由は隠しているつもりだが行動は大っぴらで、かえって周りが突っ込めないというすごい状況で移動されていった小舟。あれが使われるはずだ。あの小舟が係留された川は、人工湖の手前で、国境近くのスラムに向かう支流に入れる。入り口が小さいから船は乗り捨てになるけれど、距離だけで考えれば出国に最短のルート。

姿を隠す手間も惜しんで馬に乗って駆けたから、小舟が出発する前に追いついた。
運動神経の良さそうな男が2人と、侍女3人組の5人。
あ、目立たないけど足もとにセグアイの王女も転がされていた。
かわいそうに、アルトが捕獲できたと聞かされて自力で登山してきたところを、侍女に当身されてのびた模様。あちこちドレスをひっくり返されて、胸の間と帯の中からふたつ、小瓶を抜き取られていた。
どうやら予備の薬を持っていたのは王女らしい。すごいな、このチーム。
係留の縄がはずされる、出発するのだろう。
仕方がないので、爆竹をいくつか投げてから、川べりに飛び出した。
多分、アルトがつけてくれた護衛が近くまで来ているから、小舟の場所を知らせたい。
侍女たちが船から降りないので、刀を抜いて小舟に飛びうつったが、我ながら足がふらついていて、頼りない。
おまけに侍女たちの目が、何こいつ弱いじゃん、みたいな色になって腹立たしい。
「ルウイ様!」
爆竹音で護衛が駆けてくるのを見て、初めて侍女の顔に動揺が走った。
「護衛を殺すのよ!アルト王子に情報が行ってしまう前に!」
護衛がアルトにチクるのは心配なくせに、甕の前で待ち伏せしていた私が、アルトにチクってないと思うのは何で?
「アルト王子がかぎつけているなら彼女は監禁されているはずよ!アルト王子と彼女に連携はないわ!まだ間に合う!」
あ、そ。ご丁寧に理由解説してくれてどうも。ちくしょー。
むすくれている間に、男二人が船を離れ、船は岸を離れていく。

船の中には、私と侍女A、B、C。
小瓶を内ポケットに持っているのはA。侍女の定番、地味な色のふわっとドレス。
BとCは、いつもと服装が違う。体にぴったりしていて、樹脂が塗られたっぽいすべすべの服。泳ぎやすい恰好なのだろうけど、内ポケットとかなさそう。
そして多分、いちばん強いのはC。
私も弱い訳ではないと思うが、足のハンデはいかんともしがたい。
Cをよけて、AとBに攻撃を集中する。特にAの服は集中攻撃。
Aはかなりあられもない恰好になっていくけれど、まぁ、女性しかいないし我慢してもらおう。破れたポケットからはみ出した小瓶を、AはCに向けて放った。
そうだよね、この3人の中で、片手を小瓶でふさいでも私に勝てるのって、多分Cぐらいじゃない?
待っていましたとも。
がっきん!
Cに向かって投げられた小瓶に向けて、バットよろしく剣を振り抜くと、小瓶が粉々に砕け散る。
やったね。
後ろからCに切られそうになったけど、そこはまぁ熟練の技で避け・・・あ、やばい、かすった。
ちょっとひるんだそのすきに、Aは最後の小瓶をBに渡した。
肩に灼熱感を感じて顔をしかめる。
痛みよりも、アルトになんて言おう、とかが気になるあたり、私ってば小心者だ。

小舟は結構なスピードで流れ続ける。
スラム方面の支流に入るならそろそろ船を支流の入り口に近づけないといけない。このままいくと人工湖の流れに乗ってしまうから、泳いでの脱出はむつかしくなる。
Cが全面的に私の牽制に入り、Aが舵を取ろうとする。
Bはどうやら小瓶をもって先に脱出したいみたいだ。小瓶を布で腕に括り付けて、後ずさりを始めた。
Aが船の方向を強引に変えようとしたせいか、ゴンゴンと変な揺れが船底を突き上げる。
うーん、だまされてくれるかな。
反動を利用して、CをかわすやBに組み付き、2人でごろごろと床を転がりながら、ダミーの小瓶を、ロープや荷物でわちゃわちゃした船尾側に向かって投げる。
王女が初めのお茶菓子で使い切って捨てたやつだ。中身を調べるために拾って、証拠品にしようと持っていた。
Cは一瞬迷ったようだったが、小瓶を優先した。まぁ、最後の一つかもしれないものね。
私はBにしがみつき、小舟のはじまで転がって、そのまま川へとダイブする羽目になる。

あたたたた。
肩が、足が、いたーいっ。それに水が冷たい!
もう、頭使うのも面倒くさくなって、Bにひたすらしがみついていた。
沈んだら手を離すと思ったらしく、Bは私をへばりつかせたまま潜って進んだ。
私はおぼれているわけじゃないので当然離さないけどね。
AやCが小舟でダミーの瓶を探しているか、それとも追ってきているのかはわからないが、追ったとしてもこれだけ潜っていれば探すのは大変ではないかと思う。
Bは結構根性があって、私をへばりつかせたままでもそこそこ進むのだが、腕に小瓶を括り付けるための布を取っ手にして引っ張ると、とれないか気になるのか、バランスを崩す。
出っ張った岩の周りも、水が巻いているからぶつかる直前はわかる。
Bごと岩の周りの水流にわざわざ巻き込まれ、ぶち当たる瞬間に、小瓶付きの取っ手を思い切り引っ張って、体の位置を入れ替えてやった。
ずずんっと低くて重い音がして、その直後に、私の体がクッションと化したBにぶつかる。痛そう。死んだらごめん。
Bの体から力が抜けたと同時に、取っ手扱いしていた布を、腰に差していた小刀で切って小瓶を回収した。
おう、小瓶付きの布と小刀で、両手がふさがってしまったよ。
両手にものをもって進める程、川の流れは甘くない。
剣はダイブの時に手放したから、小刀ぐらいは持っておきたい。でも、この小瓶を野放しにするのも嫌。
流れは速くなってきていて、これ以上進んだら、人工湖に入ってそのまま滝に放り出される気がする。どうしよう。
あ、川の表面が白くしぶいているところを発見。木の根や流木がかたまって流れを遮っているらしい。
あそこまでなら呼吸しなくても行けるかな。小瓶がぶら下がった布を口にくわえ、小刀をしぶきの中で横倒しになっている障害物に刺すべく両手で持つ。
ザクッ。
小刀を刺して足場を確保して、朽ちぎみの丸太に上半身をずり上げる。
残念ながら下半身は水につかったままで、顔にしぶきもかかってくるけど、とりあえず止まっていられるから落ち着こう。
小瓶の中身を川に流してしまおうかと一瞬考える。流石にこの水量で薄まったら影響は出ないと思う。魚が水をがぶ飲みするわけじゃないし、脳の一部に選択的にバランス崩させる毒物って脊椎無いコケとかには効かない気がするし。
侍女たちに奪い返されたり、下手に持ったまま水死体になって身ぐるみはがれた時のどさくさで人手に渡ったりという危険を考えると、中身をざぁっと流してしまった方が安全な気もする。
うーん。しばらく悩んで、小瓶を帯の内側のポケットに入れる。
やっぱりもっとこう。無事に帰れてアルトに言い訳するときを考えると物証は大事。
小刀は思いっきり差しちゃったから、足場にはいいけど、回収は無理そう。
武器なしかぁ。
侍女たちが手ぶらで支流に入ろうとしたことを考えると、仲間が待っているのだと思う。
はちあわせたら逃げようがない。
護衛が知らせてくれたとして、アルトは人工湖に探し来てくれるだろうか。
いずれ来てくれるとは思う。
でも、私との約束を信じて、危険度の低い山から探すだろうなぁ。指切りまでしちゃったしなぁ。
山狩り後に探すとしたら、川を探すときには、滝下から探し始めるのではなかろうか。流されたら当然滝から落ちている時間になるはずだ。そうしたら出口は3方向もある。しらみつぶしに探すとすると、何日もかかっても不思議じゃない。
間に合わないよなぁ。
咥えていた布で縛ってみたけど、肩から流れる血は止まった気がしない。
もう少し気力が戻ったら、岸に向かって泳いでみるつもりではいる。でも正直泳ぎ切る自信がわかない。
いっそ、さっさと流されて中央の滝から落ちちゃうか?
中央は水量が多い分滝つぼが深いから、岩にぶち当たりまくる造りの左右の滝より生存確率が高いかも?下流まで流れてもレグラムのままだから、誰か拾って王宮に届けてくれるかもしれない。ただ、まぁ、その時にまでには死体になっているだろうなぁ。普通に考えて。
結論。何が何でも人工湖に入る前に岸に泳ぎ着いて、山に戻るしかない。
行かなきゃ。
体力は削られていくし、状況は悪くなる一方だ。
行かなきゃ。
体が冷えて、歯の根が合わないし、足が限界。
行かなきゃ。って、ああ、もう!しっかりしろ、私!
目をつむって気合いを入れて、丸太をけろうとした瞬間、信じられない声が聞こえた。
「みつけたぁ!!そこ動くなよ、ルウイ!」
アルトの声、だ。
目を開けて、小舟に結んだ縄を握ってアルトが川に飛び込んでくるのを見る。
セグアイのよりもさらに小さなボートに、筋肉ダルマな兵士が4人、ぎゅうっと縮こまって、ものすごいパワーでオールを操作している。
助けに来てくれたのか。
うわ、ナニコレ、テンション上がる。
「アルトぉ!大好き!こっち、こっち、こっちー!」
さっきまでの自分が嘘のように、元気に手を振ってみたりして。
近づいてきたアルトに、
「私の右足の下あたり、足場用に小刀刺してあるから気を付けてね!」
とかアドバイスしちゃったりして。
このタイミングで来るってことは、アルトは、私の行動を正確に読んで、ほぼ迷わずに来たってことだよね。
やだ、嬉しい、嬉しい、嬉しい。
好きな人に理解されるって、こんなに嬉しいのかぁ。知らなかった。
ロープ巻かれて、抱きかかえられて。もぉ、自分の目がハート型になっている自信がある!
なんならこの場でキスしたいくらいだ!濁流の中でキスとか自殺行為だからしないけど!
ふ、ふ、ふ。どうだ、これが私の好きな人だぞ。すごいだろー。

屈強な漕ぎ手のお力添えで、ボートは無事に岸についた。
しかもそこには乾いたタオルと乾いた服と白湯が準備されているとか。
どんだけ至れり尽くせりなんだ。
お湯、偉大。熱エネルギー万歳。
それから、護衛についてくれていた人の顔を見つけてしてほっとした。
ちょっと遠かったから大きく手を振ってから、口パクしてみる。
「ごめんね、男2人も押し付けて。怪我無い?」
相手も口パクで返してくる。
「男は捕らえました」
ふたりとも?すごいな。
ありがとうの投げキッスをするとこれも返ってくる。
この人、付き合い良い。
あとで聞いたら、アルトの軍の切り込み隊長役の人だった。強い訳だ。
アルトのところに、次々と伝令がやってくる。
『適当に』探された山からは王女が保護されたそうだ。クマの餌にもオオカミのおもちゃにもならなかったけれど、蜂にさされて重体。
それから、侍女2人が中央の滝の前で大型船につかまったらしい。
1人は意識不明っていうから、これは私がクッションにしたBだと思う。ごめんよ。
もう一人はボロボロの侍女服だったというからこれはA確定。
ということは、Cは逃げきったな。まぁ順当か。あいつが一番腕良かったし。
「侍女たちね、国境のスラムに通じる支流沿いに入りたかったみたい。仲間がいると思う。逃げたひとりは一番手練れで、意識不明の侍女とおんなじようなつるつるの服」
どさくさに紛れて伝令を聞いて。
横から口を出すと、アルトがじろりとにらんでくる。
「お前な・・」
「監禁いやー。会えなくなるのさみしい。好き好き好きー」
先手必勝。
「その話じゃなくて・・」
そうだ、監禁される前に、これだけは言っとかないと。
「あ、侍女の仲間って、セグアイ人じゃなくて、シヨラ人だから。それから、兵部に入り込んだ狙いの防腐剤は別の容器にうつしたから、割れた甕に残った液体は絶対使わないこと。猛毒だからね!」
おう。アルトだけでなく、ボート漕いでくれた兵士も、伝令の兵士も、私の世話を焼いてくれていた人々も、一斉に動きが止まってしまった。
「シヨラ?」
「防腐剤?」
「猛毒?」
・・・説明したら、約束破り見逃してくれます?
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